変な本
信号待ちをしていた時、目の前の人のリュックから何かが落ちた。
あわてて拾って声をかけようとしたが、運悪く信号が青になり見失ってしまった。
改めて落としたものを見て見る。
それは花柄のブックカバーが掛けられた文庫本。
どんな本か気になってページをめくってみた。
あれれ、どこをめくっても真っ白なページばかり。
これは、本なのか。ノートなのか。
最初のタイトルのページも真っ白だった。
表紙はどうなっているのだろう。
やはり同じように真っ白なのか。
花柄のブックカバーを外してみた。
何と真っ白ではなく表紙と裏表紙は真っ黒だった。
中身が真っ白で表紙が裏表紙が真っ黒?
なんだこの本。変な本。
さて、この本どうしよう。
持ち主は、今の所現れないし捨てる訳にもいかないし、
もんもんと迷ったあげく、結局家までもって帰って来てしまった。
改めてこの変な本を取り出して見る。
もう一度ページをめくる。
相変わらず中身は真っ白だった。
あ、ちょっと待って最後のページに何か挟まっている。
さっき見た時はなかったのに。
しおり?
そこには金色の猫の形をしたしおりがはさまっていた。
さっきこんなのあったっけ。
不思議に思いながら、もう一度本のブックカバーを外す。
表紙と裏表紙は真っ黒のままだった。
この本は、どうなっているの?
中身は真っ白なのに最後のページにしおりが挟んである。
ということは、やはり何かが書いてあるのか。
ぼくは、ない知恵を振り絞ってかんがえる。
白に黒に、金の猫?
一体何のなぞなぞなのか。
金の猫のしおりをじっと見つめる。
その猫はとても美しくて、目が鋭い。
じっと見ていると今にも動き出しそうだ。
わからない。もうやーめた。
しおりを本の上に放り投げた。
そのとき黒の表紙の上でしおりの猫が吸込まれていった。
まるでそれは、パズルのピースがかちっと嵌る様に、
あるべき場所に収まっていくようでもあった。
え?今しおり吸い込まれた?
さっきまで手にあった猫のしおりが。
そして表紙を見るとそこにはしおりの猫の絵があった。
その表紙は不思議とずっとそこにあるべき絵だったように、
すっとなじんでいた。
パズル?
最初は色だけで、何かを当てはめるとだんだん出来ていく仕組みの本はなのか?
は?意味わかんない。
でももうしおりはないから、どうなるんだろう。
次の日、同じ場所で信号待ちをしていると、昨日と同じリュックの人発見!
きっとこの本を落とした持ち主に違いない。
今度こそ追いついてみせる。
そして本を返すんだ。
ぼくは、慌ててその人に追いつこうと人混みをかき分けて走った。
ようやく追いついた!
「あのう、この本昨日落としましたよね?」
「ああ、ありがとう。ずっと探していたよ」
「よかった。ではぼくはこれで」
「あ、ちょっと待って!変な事聞きますけど、この本の中身見ていないですよね」
「あ、はい。もちろん見てません」ぼくはうそをついた。あんな変な本見た何てとてもじゃないけどいえないや。
「じゃぁ、大丈夫です。あの本呪われているから」
「え、どういう事?」
「見ていないんだったら関係ないです」
「あ、でも一応聞いときたくて」
「あれね、私のコレクションなんです。気に入った獲物を捕まえる為の道具。うっかり中身を見てしまうとね、しおりになって私のコレクションに捕まる仕組みなんです。でも、残念だったよ、君のことすごく狙っていたのにだまされなかったんだね」ニヤリと笑うとぼくの目の前から消えた。
この声を聞いた瞬間、ぼくはぺらぺらのしおりになった。うそがばれたみたいだ。
「次の人が来るまでの辛抱だから」そう言ってリュックの男は次のターゲットを見つけるため今日も信号待ちで、再び本を落とすのであった。
そしてぼくは叫ぶ。誰かが本を落としても中身は絶対に見てはいけないよって。




