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別れ、そして始まり

 トウキョウ。エリアネームAMJJ。通称セタガヤ。

 我が故郷、チョウフから国営新山野都市線快速で二駅。


学園前駅。


 そこには「エオズ」という文字が隠されており、駅の雰囲気はビルに近い。駅ビル、とでも言うのだろうか。

 エオズ学園以外にも学校があり、駅から徒歩五分以内で七校もある。

 周りは学生だらけ、新品の制服が桜の木と共に揺れており、革の靴や鞄の乾いた匂いが鼻につんと香る。


「……送ってくれてありがとう」

 駅の改札を出たところで、立ち止まり、Uターンして、後ろについて来てる天空兄弟の方へ体を向ける。

「全然いいよ。何かあったらまたメールちょうだい」

「はは、年下に心配された」

 全く、舐められたものだ。

「そうだよ、伊緒ちん。土日暇だったらどっか行こ」

「おう、そん時もメール送ってやる」

 そしてまたくるっと回って歩き始める。

 エオズはそれこそ全寮制で平日は校外へ出ることは禁止されてるが、休日は外出可能である。全寮制の高校にしては校則は緩い。緩さというものは頭の良し悪しに比例するということはこういうことを指すのだろう。


「……お母さんと妹ちゃんは入学式来るの?」

天が少しトーンを落とす。父をこのリストに入れないということは話は聞いているのだろう。

「ああ、母さんも彩花も来ない。仕事と、……実力試験のテスト対策やってるし」

 4月1日月曜日 

 大人は仕事。学生は春休み。言い訳をしようと思えば、きっとそれは無限大にできるだろう。

「そう……」と天は呟くだけで、他には何も言わなかった。俺の口実がサラッとバレたのは言うまでもない。


「じゃあ、ここでお別れだな」


 一五年間、あの地域での生活を締め括る宣言をした。

 辛いことも、悲しいこともあった。

 特に最近は不幸の連続だった。

 けれども。

 けれどもそれを心で受け止めるのが成長だと俺は思っている。

 そして、周りとは少し浮いていた俺と仲良くしてくれたこの兄弟達には特に感謝しなくてはならない。

「伊緒ちん……お別れだね」

「目指せ首席!」

 いや、それは無理だ。


「お前らも受験頑張って乗り切れよ!」

 校門を目の前にし、またくるりと振りかえる。

 二人の笑顔が桜の花を背景にくっきりと浮かぶ。

そう。そうだ。

 彼らに言わなくてはならない言葉があった。


「ありがとう」



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