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訪れない朝 【中編】

――――「道場」。

 この世界の人間は、魔術と体術が産まれながらに存在する。しかし、存在するとはいえど、努力をしない限り、力を発揮する事はできない。


 そして俺が幼少期の頃から通い続けている、ここ「雷鳴堂」。

 道場の名前から大体察しがつくと思うが、雷属性の魔術を専門で扱っている。


 母が水属性、父が雷属性だった事から父のDNAを受け継いだ、という事が分かる。

 そして父がここの門下生だったので、ここに入門した、という流れで自分が何故道場前にいるのか納得できるだろう。


「伊予さん、こんにちは」

「ああ、そこにいるのは、伊緒屋君じゃぁーないか」

 雷鳴伊予。この道場の主だ。

 髪には稲妻の模様をいれ、チャラチャラしたヤンキーみたいな奴だが、我が国の雷属性総合順位はまさかのトップである。


「これ、母からのお土産といいますか……」

 そう言いながら、饅頭の入った袋を伊予さんに渡す。

「おう、ありがとう」


 伊予さんは、玄関に袋を置き、「さあ、入った入った」と言って、俺の背中を押し、道場の中に入る。


「お、伊緒屋やんけ」

「ホントや伊緒ちん!ちすちす」

「うっす、お疲れ〜」

 二人の挨拶にいつもの適当な返事を返した。

「そういや、今日伊緒屋は入学式やったな」

 雷鳴天(らいめいそら)雷鳴空(らいめいくう)。双子。伊予の子供だ。

 俺とこの双子は一歳年下である。

 この双子が通ってる中学では双方トップだ。

「伊緒屋君はレベルどんくらい上がったっけ」

「……魔術はレベル四○三、体術はレベル三八九です」

「大人顔負けだねー。やっぱり凄いわー、伊緒屋」

天空(てんくう)兄弟には実力は劣りますよ」

 この双子の事を皆、天空兄弟という。いわゆるあだ名だ。細かくいけば「兄妹」だが、本人達が名乗る「きょうだい」は「兄弟」なので、こう表記させてもらう。

「伊緒ちんは今日何やんの?」

「魔術基礎練5回と、体術の基本2セットでいいかな、って」

「少なっ!道場最後の朝練だぜ?」

 空がおちょくる様に言う。

「馬鹿。今日入学式だろ。体調壊したらどうすんだ?」

そういいながら、練習台に立つ。

「ほい、兄ちゃん。合図」

「よし!練習初め」

 天の裏返ったような大きな声で、練習の開始合図が出される。

「雷風」

 俺がそう言い放つと、練習場にたちまち雨雲ができ、暴風が発生する。するとその中から、ピカッ、と光ると同時にゴロゴロゴロッ、といった一本の雷が落ちる。これが俺の基本技で、詠唱がいらない『無詠唱技』。

 ちなみにこの道場は防音がしっかりとしており、雷程度じゃ外に音は漏れない。

「雷風!雷風!雷風!」

その光はさらに明るく、音の大きさはさらに増し、次々と雷は落ちていく。

「雷風ゥ!!」

 さらに増した明るさと音でもう一本の雷が落ちた。

言い終えると、たちまち雨雲は消えていき、練習場には俺と雷鳴家3人がポツンと残っているだけだった。

「雷風」

 また雨雲が発生し、またもう一つ稲妻が発生した。

「……っ」

 雨雲に向けて持参の銃を打つ。

 俺は雲の上まで行き、空中浮遊でその場に止まった。

「雷風」

 落ちてくる稲妻の光の明るさや音の大きさがさらに増す、といった威力増加と共に、銃弾が雨雲から降ってきた。その銃弾が地面に落ちると、瞬間地雷となって、すぐに爆発した。

 俺の基本の体術。つまり、体術とは魔術の応用という意味。

「まだまだァ!」

もう1セット。

「……っ!……っ!……っ!」

 銃を上に向けて発射した。

 その銃弾が発射されてから、その綺麗に飛んだ銃弾を足の支点に合わせて、足場にした。

「コントロール、電磁浮遊、チャージ、ストップ」

 その言葉を言った瞬間、地上から約二五メートル付近で銃弾がピタリ、と止まった。

「雷風、オーバーダウン」

 そして俺は暴風という波に乗り、地上に戻った。

 この魔法は空中移動するために電磁浮遊を使った技。実は基本体術の中でもかなり上級向け。理由は一つ。コントロールがとにかく難しい。

 完全にこれは慣れの問題なので、何回も練習するしかない。


「練習終わり!」

今度は空が合図を出した。

俺は練習台から降り、用意されていたスポーツドリンクを半分ぐらい飲んだ。

「お疲れ」

「もう一〇〇メートル位行きたかったけど、怪我したら色々面倒だから」

 電磁浮遊技はどんな人でも失敗する恐れがあるから、というのは暗黙の了解。

 俺や天空兄弟クラスになれば電磁浮遊で八○○○メートル位はいけない事もないが、あまりにも危険なのでもちろん止められている。

「……私見送りいきたい」

「え、あぁ……ありがとう」

 今日は天空兄弟と入学式に行くことになった。


「…………伊緒屋君。ちょっといいかい?」

 俺の名前を呼んだのは伊予さんだった。

 自室で手招きしているのが微かに見える。

「はい?」

「ちょっと来て」

 俺は首をかしげながらゆっくり立ち上がり、天空兄弟のところを離れ、伊予さんの部屋へと向かった。




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