遭遇
動かなくなったクマを見て俺は途方に暮れていた。
「どうやって持って帰ろう...?」
そう。元最強の傭兵でも、さすがに超人的パワーはない。流石に600キロ以上あるクマは運べない。うーん...。どうしたものか...。
そんなことを考えて数十分。突然、話しかけられた。
「お困りのようですねぇ?アリアさん。」
声色だけで、身震いした。金髪、血のような紅い目。こいつは...傭兵ランク2位...いや、今は1位の傭兵...。剣1本でそこまで上り詰めた。剣の天才...
「キルリア...。何の用だ?」
俺は既に短剣を構えていた。すると、
「今のあなたで勝てますか?それも、短剣1本で?そこの槍を使いにならないんですかぁ?それに...わざわざこんな所まで一人で来ると思いますか?」
「ッッ!!」
気づけば、5人に囲まれていた。こいつら、まるで気配がない……。しまった。
「冗談ですよ。武器を下ろしなさい。おや、クマですか。いいですねぇ。丁度お腹がすきましてねぇ。召し上がりたいですねぇ。」
良かったこいつに敵対意思はないようだ。食えない野郎だ。俺も冗談を言う。
「お前、こいつを捌けるなら半分持っていってもいいぜ?」
「ほう...。それはいいですねぇ。では、有難く...。」
1秒と足らず、クマはブロックになった。こいつ、また腕を上げたな。
「ありがとよ。でも、じゃあなんでこんな所に?」
「そうですねぇ、まぁ、今日は偵察って所ですかねぇ。すぐに、ここから立ち去りますよ。お前達、クマのブロックを持ちなさい。」
「半分って言ったが、俺は1ブロックだけでいいや。」
「おや、ありがとうございます。」
そういって、1ブロックだけ持つ。それでも、50キロはある。1家族には充分すぎる。処分もめんどくさいし、こいつらに丸投げしよっと。
そんなゲスな考えを持ち、俺は森を立ち去った。