第七話 底無しの黒(前編 2 )
「ごめんなさいねえ、この子なにいってるんだか。ほら、絵本の続き。みーちゃん、これはなーんだ?」
と、みーちゃんママが絵本に書いてある絵を指差した。
「アッペルシーーン、アッペルシーーン」
「「な、なんて?」」
・・・みーちゃんママとハモってしまった。
困った。。これは状況から考えて100%おじいちゃんの飴だ。しかも今度はフランス語でもない。
どこかで聞いたような言葉だな。
問題はこの飴の持続時間だ。わたしが小さい頃間違えて食べたHBの鉛筆に変身する飴の時は3日間だった。
短時間なら子供がふざけてどこかで覚えた言葉を言っているだけということで済むだろう。でももし、わたしの時みたいに長時間だったら?
・・・も、申し訳なさすぎる!
考えろー考えろー、わたしはできる。わたしはできる。とりあえず、あまり話しかけないようにしよう。これ以上ややこしくしてはいけない。
「oh,このまえはー、ありがと。きょうは がっこう?」
こ、この前の切符の外国のお姉さん?!
「はい。がっこ…」
「Hi!」
「ハイ!」
からのハイファイブ!
・・・どうするアデル。
「Hi!」
みーちゃんが参戦してきたー!
「oh, Hi! カワイイネ!」
「ダー!」
ロシア語?!
「omg! にほんのーコドモはースゴイネ。わたしもーロシア語少しわかる」
こ、これは、嫌な予感がする。やめてー!お願い!…
「○▲□○▲□○▲□○▲□?」
「○▲□○▲□○▲□」
「○▲□○▲□○▲□○」
ああああ、流暢だよ、何語だよ、もう隣のみーちゃんママだけじゃなく電車内の人みんなビックリしてるよ。
おじいちゃんの飴は強力だからわたしじゃ解除できないし、、
「みーちゃんはねー、桃が好きー」
ん? 日本語? 飴の効果解けた!良かった!
持続時間短い飴だったんだ!
電車が駅に着き、お姉さんが降りる前に「このまえのお礼ダヨ。ガンバッテ」とわたしの耳元でささやいた。
え? それはどういう……?
「みーちゃん? 英語とか、他の言葉はどこで習ったの?」と、みーちゃんママ。
「? よくわからなーい!」
お姉さんからささやかれた言葉に思考か停止していたわたしの耳に元気なみーちゃんの声が響いた。
お姉さんも、もしかして魔女??