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隠れ魔女の現代生活  作者: ハクレン
第一章 学生生活編
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第三話 新学期


魔女だって現代に住んでいれば学校に行く。


わたしは今、高校1年生。

今日から冬休みも終わり新学期だ。

わたしの通う高校は男女共学の普通の学校で、うちから電車で40分のところにある。

歩く時間を含めるとちょうど1時間で到着する。

電車に揺られてまどろむことが好きなわたしにはちょうどよい時間。


今年は暖冬だったけれど、最近寒くない?

都内についたらもっと暖かいかな?


紋章を得たからといって「ふ、わたしにとってはこんなもの冬ではないわ」なんて言える体質にはならないみたい。

寒い。制服はなんで冬もスカートなんだろう。

タイツなんて何も役にたたない。

前を歩いてるOLさんの暖かそうなブラウンのベロアパンツと交換してもらいたい。その中にヒートテック履きたい。

あ、でも身長足りなくて引きずっちゃうかも。ああいうオシャレなパンツを着こなせるようになりたい。変身魔法で大きくなったら着れるかな?


そうそう、今日は定期買わなくちゃ。



「スみマセン」


・・・え、わたし? 外国人さんだ。っていってもわたしも傍から見れば外国人かな? 半分だけど。


「はい。」


「Hi!」


あ、しまった。そういうことじゃなく。。

なんか綺麗な人だな〜

おっきなスーツケース。観光かなあ? ひとり旅女子?

モデルさんみたい。28歳位かなあ?

黒で統一したファッションがとても格好いい。

赤い綺麗な髪がとても映えてる。


「わーたしは、ニホンゴがぁ すっこしはなせる。だからー、ニホンゴをー はなしたい」 


「はい。」


「Hi!」


「ハイ!」


からのハイファイブ!!


・・・どうするアデル。あ、とりあえずなにか用か聞かなくちゃ!


「何かご用ですか?」


「なにかようかん?」


「あ、ええと、どうしましたか?」


「oh, チケット!トレイン! わかる?」


「買いたい ですか?」


「そウだー」


「それなら、ここで。あ、ええと どこに 行きたい ですか?」


「しんじゅゥく」


「しんじゅくですね? ならここにお金を入れてください」


「ならここにお?」


「ここ お金 入れて」


「ここおかね?」


「マネー! ここ」


「many?」


・・・く、時間がない!定期買う時間がなくなる!新学期早々遅刻する!


「どうぞ」


「oh,サンキュー!ありがとー、バーイ」


「え、あ、バーイ。。お金は?」


・・・切符を買ってあげてしまった。

まあいっか!朝から人助けしたと思えばいいや。


そういえば今日の運気は風の3番だった。’‘新しい関係" "あやうさ" "心の迷い"

あまり良い運気じゃないんだよねー。

こういう時は流れに任せてがんばらないにかぎる。

うん。そうしよう。


ん? あれ? 定期買うお金足りないのでわぁー?!

いつもスイカで飲み物とか買ってて、しかも何を思ったか用心とか言って今日小銭置いて来たんだった!


つまり定期買うお金の一部をさっきのお姉さんの切符代に使ってしまったということ。


・・・しょうがないしょうがない、今日はスイカにチャージして行こう。

そう、今日は流れに任せたほうがいいのだ。


ーーーーー

「おはようアデル!明けましておめでとう!」

と教室の席に着いているアデルにいつものように元気に話しかけたのはクラスメイトの有里菜ありなだ。


なんかボケてみたくなったアデル

「わたーしは、ニホンゴがはなせませーん よ?」


「はなしてるじゃんー」と笑顔で返す有里菜。



少し茶色がかったさらさらダークブラウンの髪を肩下まで伸ばしてる。前髪がほんの少し短くて可愛らしい。

本人は"切られすぎたー!どうすればいいのー?!"と嘆いていたけど。可愛い系の有里菜にはとてもマッチしている。アイドルみたい。



有里菜はアデルと幼稚園からの付き合いでお互いの家に良く遊びに行ったり、お泊り会をする仲だ。

アデルの家族も有里菜を家族のように思っているし、有里菜の家族もアデルを家族のように思っている。

特にアデルの祖父との相性は抜群でよくふざけあっている。

有里菜と祖父のバドミントン勝負は見ものだ。

80歳の姿の祖父がなぜあんなに運動神経が良いのか、有里菜は疑問に思っていないようだった。


冬休み前と全く変わらない友人になにか安心感を感じでいたアデルだが、有里菜の右胸あたりが不自然に膨らんでいることに気付いた。



これが噂に聞くパッド?

まさか貧乳を気にして? そしてズレたのかな。

涙ぐましい努力を。。そっとしておこう。。



「でさー・・・数学の宿題、見せて?」

いつもながら可愛らしく首をかしげてアデルにおねだりする有里菜。


本当、小動物みたい。リスみたいな? わたしより背高いけど!

でもこの子、周りが見えなくなるとやらかすからなー。なぜかわたしがいつも巻きこまれるし、と過去の苦い出来事の数々を思い出しながら数学のノートを渡そうとしたアデルだったが、


「ん?冬休み前に有里菜さ、 "もし私が数学の宿題終わらすことができなかったら蜜柑するから!今回は絶対宿題やってくるから!いいお年をー!" とかなんとか言ってなかったっけ?・・・ 蜜柑する、とは?」


アデルの質問に固まるリス有里菜。


あ。このリス有里菜の表情は。。聞かなきゃよかった。嫌な予感がする。


「うう、蜜柑とは本当に恐ろしいものなのだよ、蜜柑とは一言でいうとノンストップ!

蜜柑とはすなわち世界で一番な魅惑の果実!宝石!いや、宝石は食べられないから蜜柑はその上をゆく!憧れのノルウェー語でいうとアッペルシィーーン!


ごほん・・・なぜノルウェーに憧れているかを話すと長くなるけど、ノルウェーの世界一美味しいと言われてるケーキが食べたい!! 


とにかく、話がズレたけど今は蜜柑よ!

あれを前にしたら私は食べずにはいられなくなる!何個でも無くなるまで永遠に!コタツがあればなお良し!

そう、そしてこれを見て!!

今朝からずっとブレザーの内ポケットに入れて温めてたこの至高の蜜柑を!私が目利きし選んだ通常より少し小さなこの子を!

人肌で温めることによって絶妙な甘さ加減になるのよ!

私の体温によって温められたこの子を食べたらどんなリンゴ派でも虜になり蜜柑派になること間違いなし!


この子は私んだからあげないけどね!


つまり蜜柑を目の前にしたら冬休み明けに正月太りを解消できなくなるということだよ!

恐ろしい!

むぐむぐむぐ、ああ、美味!やっぱり私の目利きは正しかった!


私は蜜柑なしでは生きていけない!

私は蜜柑を一生愛する!

特に私は少し赤みがかった蜜柑が、、、、

好きっだーーー!!!  おわかり?!」



「わからなくもない。 とりあえず、あそこで顔を真っ赤にしてる蜜柑ちゃんに後で謝れ。そしてホームルーム、ついさっきから始まってるから」


「あ」



「蜜柑さん。じゃなかった、有里菜さん。放課後職員室に来てください。ついでにアデルさんも」




なんのついででわたしも?!





ーーーーー


キンコーンカーンコーン

「蜜柑ちゃん!よくわからないけどさっきはごめんね!? 意図してなかったけど私は蜜柑と同じくらい蜜柑ちゃんも大好きだからあれはある意味二重告白だったの!きゃー恥ずかしい!」


「話をややこしくするなリス有里菜。蜜柑ちゃんが困ってるじゃないの。で、わたしになにか言うことは?」


「放課後、一緒に先生の有り難いお話がきけるね☆」

ダメだ、話が通じない。

こうなったリス有里菜についていけるのはおじいちゃんくらいだよ。もう。


「蜜柑ちゃん おはよう。今年もよろしくね」


「おはようアデルちゃん。こちらこそ、よろしくね。アデルちゃん、有里菜ちゃん、冬休み、私の個展を見に来てくれてありがとう」


まだ顔が赤くなっている蜜柑ちゃん。ちょっと伏し目がちだ。蜜柑ちゃんは清楚な顔立ちの美人さん。前下りのショートボブが良く似合っている。


耳まで赤くしてる。。

新学期早々、みんなの前で名前を連呼されて恥ずかしかったのだろう。

蜜柑ちゃん、人一倍恥ずかしがり屋だもの。

蜜柑ちゃんは造形美術の世界ではちょっとした有名人だ。

蜜柑ちゃんが石膏粘土で作る動物達はただ可愛いだけじゃなく、生きているかのような、動かないのが不思議なくらい。


「また個展の時は教えてね。お母さんも楽しみにしてる。また行きたい」

「私もー! あ、そろそろ体育館に移動じゃない?始業式!」


ああ、今から放課後が憂鬱だ〜





ーーーー

つ、疲れたぁ。今日は始業式ですぐ帰れるはずだったのに、先生の有り難いお話☆で1時間、その後、ちょうどよかったからと、教頭先生と一緒にグラウンドの枯葉掃除。有里菜は部活を理由に枯葉掃除を回避。


有里菜が入っているスイーツ研究部は今日休みなのをわたしは知っている。つまり帰宅。


有里菜の作るモンブランより美味しいモンブランをわたしは知らない。

今日の貸しはきっちりモンブランで返してもらうんだから!



紋章が出て魔力が格段に増えたから、なんかパワーアップした気分でいたけど、日常生活はやっぱり変わらずかなー。


でもこんな生活も今だけ。

ずっと歳をとらないってことはそういうことなのだ。

学校の友達も、今朝のお姉さんだって、みんな歳をとっていく。


わたしの体質は一般人に知られてはならない。

いつまでみんなと友達でいられるのだろう?




ねえ、わたしはいつまでみんなと一緒にいられますか?





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