上弦 1
この世のものとは思えない美しいキンイロのオトコ
この世のものとは思えない美しいギンイロのオンナ
天井から吊るされたランプの薄暗い灯り
古く黒ずんだカーテン
引き裂かれた絵画
手彫りの彫刻が施されたベッドの上
キンイロのオトコがギンイロのオンナを押し倒していた。
どちらも足まで届く絹のような長い髪、どちらも衣服を纏っていない。
ギンイロの瞳の下、オンナの白い頬はオトコの涙で濡れていた。
キンイロのオトコは言った。
「私の魂の片割れ! 私はあなたを愛している!!!!」
ギンイロのオンナは言った。
「手を離さんか。我は貴様を食いに来たのだ」
「私はあなたを昔から知っていたかのように感じる!!」
「我は貴様など知らん」
「きっと生前に会っているに違いない!!!」
「我に生前などない」
「あなたは素晴しく清らかな心の持ち主だ!!」
「我は悪だ」
「あなたの心の暖かさを感じる。」
「我が心に体温はない」
「あなたはなんて優しいんだ!!!」
「我は非情だ」
「あなたの愛を感じる」
「我に情などない」
「あなたの瞳の色がとても好きだ」
「それは良かったな」
「あなたの髪が好きだ」
「我が髪に触れるな」
「いままでいったいどこにいたんだ」
「いいから手を離せ」
「1000年あなたを待っていた」
「何を言っている? 食糧が」
「あなたの手首、暖かい」
「さっさとどけ」
「そうか、私はこの日の為に生きてきたのだ!
私の人生は今始まったのだ!!」
「貴様は今夜死ぬ」
「私はずっと一人だった」
「だからどうした?」
「やっと会えて嬉しいよ」
「手を離せ」
「あなたは世界で一番美しい!!!!!」
「知っている」
「あなたは」
『『『我は手を離せと言っている!!!!!!!!!』』』
銀色
ホワイトアウト
轟音
星空
妖しく輝く銀色の目と悪の笑み
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ねえ、ママ、なんでひいおじいちゃんはーーー
それはね‥‥‥‥