上弦 2
月明かりの下
瓦礫とかした古城の上
銀色の女は食事を済ませ満足げな笑みを浮かべていた。どこから取り出したのか、黒いシンプルなドレスを着ている。
「こんなに美味で大量の闇は初めてかもしれん。我の嫌いな魂の味すら感じさせぬとは。我は満足だ。金色の狂人よ。我が糧となったことを誇りに思うがいい」
金色の狂人の噂を聞き、良い食事ができそうだとやってきた銀色の女こと、ジネヴラは予想以上の食糧に歓喜していた。
いつものように食事を終え、飛び去ろうとした時。
それは起こった。
瓦礫の中から死んだはずの金色の男が飛び出してきたのだ。
金色の男は遥か上空のジネヴラを目がけて弾丸のようにすさまじいスピードで飛んできた。
「貴様、なぜ生きている!」
前代未聞のことが起こり反応が遅れ、金色の男に足首を掴まれるジネヴラ。
「私の魂の片割れ!私はもう離れたくない!」
金色の男が足首をきつく掴んだままジネヴラを見上げ叫んだ。
男の金眼は狂気に満ちている。
「なぜ生きているのかと聞いている!我に闇を喰われた者は魂も一緒に喰われるのだ!例外はない!なのになぜ生きている!」
手を放させようと金色の顔面を蹴りつけながら叫ぶジネヴラ。
「あなたはなんて純粋無垢なんだろう!私の魂の片割れよ!」
蹴りつけられてもびくともしない金色の男。
「愛欲に囚われた狂人め!今度こそくたばるがいい!」
再びジネヴラの体全体から銀色の光が炸裂し、それが金色の男を飲み込んだ。
光が限界まで輝き色を無くした時、金色の男は力なくぼろ切れのように落下していった。
轟音と共に地面に激突した金色の男を見届け、ジネヴラは闇へと消えた。
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古城の瓦礫の中
金色の男は数百年ぶりに自分の名前を思い出し口にした。
「ヨンネ・メテオール」