表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

女神はぶちギレる

作者: こうじ

 とある異世界のとあるお城の地下室で『勇者召喚』の儀式が行われていた。


 魔方陣が光り輝き室内を包み込む。


 そして、現れたのは少年少女の集団だった。


「姫、召喚の儀式は成功しましたぞっ!」


 召喚をした老魔導師が告げる。


「ありがとうございます。皆様、いきなりの事態で驚かれたと思いますが、此所は皆様がいた世界とは違う世界なんです。実は・・・・・・」


 姫が説明をしようとしたその時


『ちょっと待ったああああぁぁぁぁっっっっ!!!!』


 突然、怒鳴り声と爆風と共に壁の一部が吹き飛ばされた。


 唖然とする姫と老魔導師と兵士達。


 土煙が徐々に晴れて現れたのは白い翼を背中に背負った神々しい女性だ。


 本来なら気品正しい感じがするがハァハァと息を荒くし、長い金髪もボサボサ、顔も怒りの表情を隠していなかった。


 突然現れた乱入者に騒然となる室内だったが女性は姫に近づいたと同時に胸ぐらを掴み、


『何勝手に召喚の儀式なんてやってるのよぉっ!!』


「ひいいぃぃぃぃっっっっ!?!?」


「ひ、姫から手を離せっ!!」


「な、何者だっ!!」


『私はこの世界を管理している女神よっ!! あんた達が勝手に召喚の儀式をしたからこの集団がいた世界の神からクレームが来たから来たのよっ!!』


 女神と名乗る女性は怒鳴った。


『大体、召喚する時は私の許可が必要なのよっ! それで私が他の世界の神に交渉して一人を選んで召喚させてスキルをつけさせるのよっ!! あんた達はそんな手続きをすっ飛ばして召喚させたのよっ!! そんなのは拉致誘拐と一緒なのよっ!! 自分達が犯罪行為をした、っていう自覚あんのかぁごらあぁぁぁぁっっっっ!!』


「そ、そんなの知らない・・・・・・。」


 姫は涙目で老魔導師に助けを求める。


「し、しかし魔王の勢いが止まぬ情勢、その様な手続きをとっていたのでは事態がどんどん深刻化してきております・・・・・・。」


 老魔導師が反論すると女神は姫を離して今度は老魔導師の胸ぐらを掴んだ。


『私はお前に夢の中で告げたはずよっ!! 無用な召喚はするな、って!! ボケたのかっ!? 大体、勇者のスキルを与えた人物は既にこの世界にいるわよっ!!』


「えぇっ!?」


 姫が驚きの声をあげた。


 そんな報告は耳に入って来なかったからだ。


『それも私はこの国、いや世界の神官に神託として告げたわよっ!! それなのにあんた達は異世界からの召喚に頼って・・・・・・。スキルをあげるのは私なのよっ! 一人でも大変なのにこんな集団にあげるのがどんなに大変な事かわかってんのかぁっ!?』


「す、すいませんすいません。私が悪ぅございましたぁ・・・・・・。」


「女神様、申し訳ありませんでした。私達が浅はかでした。勇者の件に関してはすぐに確認致します。」


 姫と老魔導師は過ちに気づいて謝罪した。


「あの、僕達はどうなるんでしょうか?」


『貴方達は私が責任を持って元の世界に戻します。この世界を管理する女神としてご迷惑をかけた事を謝ります。』


 今までの怒鳴り声とは違って丁寧に謝罪する女神。


 姫達にもニッコリと笑い、


『次はありませんよ?』


 最終宣告をした。


 こうして『勇者召還未遂事件』は幕を閉じた。

 

 姫は直ちに神官に確認すると、確かに神託はあり国王に報告した。

 しかし国王は『探すのめんどくさいから他の世界から連れてくれば良いんじゃね? 許可? いらないでしょ。』と軽く考えて勇者召還に踏み切ったという。


 姫はそれを知った瞬間、ぶちギレて国王をボッコボコに殴り強制退位させて、一時的に国の主導権を取り、勇者探しを兵士に命じた。


 勇者は無事に見つかり姫は勇者を説得して、魔王討伐の旅へと旅出させた。


 数年後に勇者は無事に魔王を討伐に成功し無事に生還した。


 勇者は元の生活に戻り、以後の生活は国に保障され幸せな人生を送った。


 姫は正式に女王となり国を導き繁栄させる事に成功し『名君』として後世まで語り継がれた。


 後に姫は他国でも似たような事があった事を知る。


 その際、逆ギレや自分勝手な反論をした国は更に女神の怒りを買い、神罰を喰らったという。


 姫はその話を聞いて苦笑いした、という。 

〈登場人物〉

 女神

 この物語の主人公。本来は穏やかな性格だが勝手な勇者召還や人間達のワガママにぶちギレて怒鳴りこんだ。


 姫

 国王に命令され勇者召還をして女神の怒りを買った。基本的に素直な良い子だが、今回の件で父親である国王の無能さに気付き国王に三下り半を突きつける。その後は女王として国の繁栄に力を注いだ。


 老魔導師

 国に長年使えるベテラン魔導師。国王に命令され勇者召還を行った。女神から言われた事はすっかり忘れていた。今回の件でショックを受け引退。国近くの森で隠居生活をする。


 国王

 今回の事件の元凶。神官からの勇者探しの神託を無視し、勇者召還を命じた張本人。姫から強制的に国王の座を引きずり降ろされた。最後まで自分の罪を認めなかった。その後、女神に対する侮辱的な発言をしたせいで神罰をくらい寝たきり状態で最期を送る。


 勇者

 田舎の村に住んでいた少年。国から突然勇者として呼び出され姫の話を聞いて、魔王討伐の旅に出た。性格は深くは考えず欲は無い。旅の最中に様々な経験をしてたくましく成長して無事に魔王を討伐する。その後は田舎の村に戻り元の穏やかな生活を送る。


 少年少女

 勇者召還に巻き込まれたある意味一番の被害者。状況がわからないまま、女神の力で元の世界に戻された。その際記憶は消去され、何事も無く穏やかな生活を送った。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 見下り版って三行半(みくだりはん、離縁状・今で言う離婚届)の事かなぁ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ