第7話 褒美の使途 前編
すさまじい美少女奴隷三人を所有することになったトモヤは、奴隷の少女たちを連れて、自分の部屋にやってきた。
ここで、まず、この世界の奴隷について説明しておこう。
奴隷は、迷宮で手に入る奴隷輪を連れられることでなる身分だ。奴隷になると、6つの効果が生じる。。まず、奴隷は、常に奴隷の輪を身に着けていなければならない(絶対装着)。次に、奴隷は奴隷の輪をつけている限り、所有者が本気で命じたことには絶対にさからえなくなる(絶対命令)。また、奴隷が所有者や所有者の他の奴隷を害そうとすると体が硬直して動けなくなる。(絶対安全)そして、逆に、奴隷は輪をつけている限り、所有者が積極的に望んだ場合を除き、所有者以外と性的な接触をされることはない。(絶対貞操)。
そして、5と6つ目の効果は、トモヤは聞かされていなかったが、奴隷が所有者の感情を大まかに読み取れることができる効果と(絶対共感)、所有者が死ぬと奴隷は奴隷でなくなる効果がある(絶対解放)。
トモヤと少女たちが部屋に着くなり、ダークエルフの少女シアは、トモヤに頭を下げた。そして、シアの後ろでは、ヴァンパイアの少女たちが、恐怖から震えていた。
「お願いです。私はどんなことでもしますから、お嬢様方だけには手を出さないでください。お願いします。」
「ちょっと、頭を上げてください。俺は、君たちにひどいことをするつもりなんてありません。なんとなく聞いているとは思いますが、俺は、別の世界から来たんです。その世界では、奴隷なんていませんでしたし、ひどいことをするつもりなんてありません。」
「・・・本当ですか?」
シアは、驚いた表情で、おそるおそるトモヤに確認する。
「うん。本当だよ。むしろ、女性を物のように扱うこの国の価値観には嫌気がさしているくらいだ。でも、生きていくうえでは、うまく立ち回らなきゃいけないのも事実だと思う。だから、この世界のこといろいろ教えてくれないかな。できれば、君たちも、さらわれてきたと聞いているけれど、もとの場所に返したいと思っている。やっぱり、皇帝になるのが手っ取り早いのかな。」
今度こそシアは驚いた表情で、トモヤを驚かせる発言をする。
「そんな・・・。決めました。私、これからあなた様のことをご主人様と呼び、皇帝になるのをお手伝いさせていただきます。」
今度は、シアの発言に、トモヤが驚かされた。
「ずいぶんとあっさり信用するんだな。そんなんじゃ、悪い奴に簡単にだまされるぞ。」
「そんなことをおっしゃるなんて、ご主人様は本当にお優しいのですね。でも、ご安心ください。奴隷は、主の感情を大まかに読み取ることができるのです。ご主人様の言葉が真意であることは、はっきりとわかります。」
「えっ!マジで!すごいなその機能。」
「あらあら、ご主人様、簡単にはじめて会った奴隷のいう事を信じてはいけませんよ。」
「はは。これは一本取られたな。そうだよな。そんな便利機能あるわけないよな。いくら異世界とはいえ。」
「「クスクス。」」
トモヤの発言を聞いて、今までずっと黙っていた、クリスとオリビアが、そのかわいらしい小さな口にかわいらしい手をあてて、小さな声で笑った。
トモヤが、二人をみると、体をびくっとさせて、すぐにシアの後ろに隠れてしまう。
「クリスお嬢様。オリビアお嬢様。そんなにおびえなくても大丈夫だと思いますよ。お二人とも、ご主人様の奴隷なのですから、ご主人様の温かい感情をなんとなく感じられるでしょう。」
「え!?感じられるって・・・さっきのは嘘なんじゃ。」
「ご主人様。簡単に信じてはいけないとは言いましたが、感情を読み取れるのが、嘘だなんて申してはいませんよ。」
「はあ。もう、なんだよそれ。シアは、人をからかうのが好きなんだな。」
「申し訳ありませんでした。普段は、このようなことしないのですが、なぜか、ご主人様には少し意地悪をしたくなってしまいまして。」
「シアは、私たちもたまにからかうよ。」
「クリスお嬢様。確かに、言われてみると・・・。もしかしたら、好きな方には、少し意地悪してしまう性格なのかもしれません。」
「好きって・・・」
彼女いない歴=年齢のトモヤが、これほどの美少女に好きと言われて、たとえ冗談だとわかっていても、顔を真っ赤にしたのは当然だろう。
「冗談ですよ。ご主人様。」
「もう。シアは、ただでさえ美人なんだから、そういう冗談はよくないですよ。」
「美人・・・」
シアは、その言われなれているはずの<美人>いう言葉を聞いて、鈍感なトモヤにはわからない程度にほほを赤く染めていたが、その理由は、本人にもわからなかった。
「それにしても、なんでその機能奴隷だけについているんだろうな。」
「それはきっと、奴隷は、ご主人様の機微を感じとり、ご主人様のために行動すべきですが、ご主人様は奴隷のことなど気にせず好きにすればいいという事でハイでしょうか。」
「いやな話だが、一理あるな。まあ、シアたちに信用してもらえるのはありがたいけどな。それで、シア。この世界のことを知りたいんだけど・・その前に軽く自己紹介しようか。」
トモヤは、大まかに自分のことをシアたちに話す。
「私は、ヴァンパイア族の領家のお嬢様方であるクリスお嬢様とオリビアお嬢様の世話役兼護衛をやっていました。しかし、情けなくも先日お嬢様方を守れず、そろって奴隷になってしまったのです。」
「なるほど。それじゃあ、次は・・・」
トモヤが、クリスとオリビアのほうへ視線を向けると、再び、二人は、シアの背中に隠れてしまった。少し先ほどまでと違うのは、オリビアが、少し恐怖心が和らいだのか、トモヤのほうをそっとに睨んでいることだ。
「ご主人様。申し訳ありません。二人とも、はじめてみた純人族に人さらいにあい、ずいぶん怖い目にあったばかりですから、なかなか警戒心が解けないようでして。それに、二人は、もともと人見知りなところがありますから。特にクリスは。」
「いや。仕方ないよ。むしろ、シアは、ずいぶんと冷静ですごいよ。しっかりしていると思う。」
「いえ。結局、お嬢様たちをお守りできませんでしたから。」
「シアはすごいよ。」
「クリスお嬢様・・・」
シアがクリスの頭を撫でる。
「えっと、それで、さっそくだけど、この国のこと教えてくれないかな。勇者っていうのもよくわからないし。」
「アガレス帝国。皇帝を頂点とした男性純人族至上主義国家。皇帝は、代々、聖龍の秘宝を受け継いだものが受け継ぐと聞きます。かつて、人神が、世界に破滅をもたらすとされた龍神に戦いを挑んだとき、人神の右腕として活躍して勇者とまで呼ばれた人物もまた、聖龍の秘宝を所持していたと聞きます。そのため、アガレス皇帝は、いまも勇者とよばれるのです。他には、聖皇帝などと呼ばれることもありますが。」
「なるほど。」
「アガレス帝国は、軍事国家としても有名です。冒険者の存在は一切認めず、迷宮はすべて国で管理しています。秘宝所持数も世界最大の国と言われています。また、先ほど述べた通り、男尊女卑思想を徹底しています。もともと、この世界では、男尊女卑的な思考をもつ方が多いですが、この国は異常なほどです。女性のほとんどは奴隷とまで聞いたことがあります。強い男性ほど、たくさんの女性奴隷を手に入れることができる一方で、弱い男性は、一生女性と性的接点を持つことはないそうです。アガレス13世もまた、一時期は、性奴隷を1000人以上保有していたとか。」
「1000人!?あの皇帝はそんなに偉いのか?」
「はい。もともと、アガレスは皇帝による絶対君主の帝国ですから。それに、アガレス皇帝の強さに対抗できるものなど、この世界に魔皇帝様のほかに果たしているのかさえ疑わしいと思います。レーム王国の雷帝、第一獣人連合国の百獣帝、第二獣人連合国の九尾姫、ダストレアス国の気皇帝、セムナーンの魔技王など強いといわれている方たちは、この世界にたくさんおりますが、アガレス皇帝に対抗できるほどの強さを持っているのかは、私にはわかりません。」
「へえ。あの皇帝は、そんなに強いのか。それから、さっきから気になっているんだけど、秘宝とか迷宮についても教えてくれないか?」
「迷宮というのは、世界各地に存在する不思議な空間です。迷宮内部では、モンスターなどがでてきます。モンスターを倒すと、迷宮外で倒した場合と異なり、死体は残らず、アイテムをドロップしたりします。そして、特定の迷宮の最深部にいるのがもっとも強いモンスターである龍です。この龍を倒すと、龍の秘宝を手にすることができます。パーティーで挑むこともできますが、秘宝の所有者になるためには、その秘宝の属性を保持してなければなりません。ご主人様は、聖の属性を保有していらっしゃって、聖龍の秘宝を受け継いで、皇帝になれる資質を保持していらっしゃたのではないですか。」
「うん。確かに、持っているよ。なるほどなあ。とにかくさ、俺が皇帝になれば、その権力で三人を返してあげらるよね。」
「ご主人様・・・あなたという人は・・」
「あっ!でも、俺は、その皇帝の候補であるわけで、結構偉いと立場にいるんだよな。それなら、三人を解放してもとに返してくれと頼んだらどうにかなるのかな。」
「ご主人様。それはおやめください。きっと、ご主人様に返したと嘘をついて、こっそり誰か別の男性の奴隷されるのが関の山だと思います。これでも、自分が男性にとって申し分ない容姿をしているとの自覚はありますし。」
「そう、だよな・・。まあ、詳しい話は、また今度にしよう。今日、午前中自主練で少しハードにやりすぎて、すごく疲れていてさ。はあああ(あくび)。すごく眠いんだ。悪いけど。先に寝るね。シャワーとかお風呂は勝手に使っていいし、ベッドはどうするか・・・」
「お嬢様たちは、いつも一緒に寝ていますから、二人一緒で大丈夫ですよ。」
「そっか。それなら、ベッド3つでも大丈夫だな。シアで一つ、クリスとオリビアで一つ使ってくれ。かなり、大きいベッドだし、二人で寝てもかなり余裕ありそうだしね。はあああ。やばい。まじ眠い。悪いけど。もう寝るね。お休み。」
トモヤは、そのまま寝てしまった。
三人とも、まさか何もされず、しかも、温かいベッドで寝ることまで許され、聞いていた奴隷の立場と随分と状況が異なることに、困惑を覚えていた。また、人見知りのクリスとオリビアは、強い警戒心をなかなか解くことができずにいた。
そして結局、その日の夜、なかなか寝付けなかったクリスとオリビアは、シアのベッドに入り込むことになった。
「クリスお嬢様。オリビアお嬢様。ご主人様ならきっと、この状況をどうにかしてくれる。そんな気がします。ですから、今は、ゆっくり休みましょう。」
クリスとオリビアが、シアの言葉にうなずき、三人は互いの存在を確認しながら、浅い夢の世界へ意識を沈めた。