第20話 トモヤVS中将&皇帝
「よう。アガレス13世。」
「なるほど、人神の言っていたことは本当のようだな。トモヤ。お前、龍神の使徒だな。トモヤ、はじめて会ったとき、お前とはどこかで会ったことがあるような妙な感じがしていたんだが、妙な感じの正体は人神の、つまりは俺の敵だったことが原因だったのかもな。」
「人神?龍神?」
「とぼけても無駄だ。時龍に喰われながら生きているのが何よりの証拠。そして、その格好。」
アガレス皇帝が指摘するように、トモヤの格好は普通ではなかった。空をイメージする衣装に身を包み、空龍の剣を手にしていた。
どういうわけか、トモヤは、この短期間で、空龍の秘宝を手に入れ、しかも、それを顕現できるほどに力を付けていたのだ。
「シルヴィアは・・・・」
「気絶しているだけだ。お前が喰われた後、しばらくして、お前を追いかけて行こうとしたそうでな。ビーケルたちが気絶させたみたいだ。」
「そうか。」
トモヤは、シルヴィアの方へと歩みを進める。
「悪いがお前には死んでもらう。ゼクロス、トモヤを殺せ!」
「しかし・・・」
「文句があるのか。」
皇帝が、ゼクロスを一睨みする。
「わかりました。アーロン、マリウス、ラングレー。トモヤを殺せ。」
ゼクロスは、短い付き合いとはいえ、自ら手にかけることを躊躇したのか、部下たちに、トモヤの殺害を命ずる。
アーロンたちは、時龍との戦いで力を消耗しているとはいえ、秘宝を顕現させた状態であるから、さすがという動きで、トモヤへと攻撃に向かう。
だが、トモヤは、全く動じた様子もなく、シルヴィアの方へ歩をすすめる。
そして、ついに、アーロンたち三人の剣をが一斉にトモヤへ襲いかかる。3つの剣がトモヤの心臓を刺し貫いた。
確かにそう見えた。
だが、トモヤは、その時、既にシルヴィアの目の前にいた。
「うわわわ。」
「うっ。」
「うぎゃあああ。」
アーロンたち三人が突然痛みをあげる。
特に、アーロンは、大きな叫び声をあげる。
「俺の、俺の腕が!痛い、痛い。俺の腕が切られた!絶対に許さない!ラングレー何をしている。早く、治癒魔術をかけてくれ。」
「やってるさ。だが、全く俺の腕も治らないんだ。」
「そんな・・・。痛い。痛いぞおおお。」
「喚くな。うるさい。腕の傷が治らないのは空龍剣で、腕を空間ごと斬ったからだ。普通の傷より、治りはかなり遅いが、全く治らないわけじゃない。腕を切り落としたわけじゃないんだからな。それとも、切り落として欲しかったか。」
トモヤが三人の方へ視線を向けると、三人は一斉に後ずさった。
そう、一瞬でトモヤは、三人の腕を斬りつけたのだ。
トモヤを除いて、誰もが呆然としている。皇帝までもが。
「おい!シルヴィア!起きろ!おい!」
「トモヤ!」
シルヴィアは、トモヤの名を呼びながら目を覚ました。
「シルヴィア大丈夫か?」
「え!わ、私は、大丈夫だが。それより、お前の方こそ。お前は、時龍に・・」
「あれば夢だよ。俺なら、ほらピンピンしてるだろ。」
「はは。そうか、そうだよな。お前が死ぬはずないよな。でも、良かった。グスッ。本当に良かった。」
シルヴィアは、トモヤが痛がるほどに強く、強く、その存在を確かめるように抱きしめた。
「おい!トモヤ!お前何を考えている。随分、シルヴィアから信頼されているようだが。」
「アガレス皇帝・・・。ただ、俺は、シルヴィアにもっと笑ってほしい。ただそれだけですよ。だけど、この国じゃ、シルヴィアは笑えない。だから、連れて行く。」
「連れていく?トモヤ、お前に娘が守れるのか。」
「さあね?でも、ここにいるよりは、確実に幸せにしてやれるさ。」
「幸せ?そんなものに何の意味がある。生きていればそれでいいじゃないか。今、この国には、俺以上の才能、いや、この国史上で一番の才能を持ったヒカルがいる。彼が皇帝になれば、この国も安泰だろう。そして、そのアガレス帝国にいれば、シルヴィアもまた安全だ。」
「安全?女性が物のように扱われるこの国で?」
「そうだ。ヒカルが、皇帝になれば、ヒカルがこの国の法だ。ヒカルがシルヴィアに女性として強い興味をもたずとも、シルヴィアの容姿ならいくらでも使い道はある。そのうえ、時龍の秘宝の顕現までできるようになれば、戦力としても申し分ない。だから、シルヴィアはこの国で生かされる。この最強の軍事国家で命を保証されるのだ!生きていられるのだ!」
「生きていられる!?馬鹿か!物のように過ごす人生に何の意味がある。そんなものは、生きてるって言わねえんだよ。そこらへんに転がっている石ころと同じようなものさ。」
「いいではないか。石ころと同じで。何が悪い。死ぬよりよっぽどましだ。」
「父上、私は、石ころような人生は嫌です。トモヤと生きられるなら、この先どんなに辛いことがあっても構いません。たとえ、この命を落とすことになっても。」
「・・・・。そうか。口で言ってわからぬようなら、力で止めるしかないな。それがこの国のあり方だ。」
アガレス皇帝が、戦闘体勢に入る。
「悪いけど、こっちは、時間がないんだ。皇帝、あんたに付き合っている暇はない。」
トモヤは、シルヴィアをお姫様様抱っこすると、足元に魔術陣を構成する。
「ト、トモヤ!?」
シルヴィアは少し恥ずかしそうに、ほほを染める。
「それで、シルヴィア。一応聞くけど、俺には今、この国を出る力がある。一生俺のそばにいてくれるか。一緒に国を出るか?」
「何を今更。もちろん、一緒に行くさ。」
「トモヤー!!」
皇帝が、トモヤを殺そうと向かってくる。
「あばよ!皇帝!時龍の秘宝もいただいていくぜ!」
皇帝の剣がトモヤへと振るわれる。
だが、その剣は、空振りに終わった。
「・・・。まさか、空間転移したのか。」
トモヤは、空間転移魔術で、シルヴィアとともに迷宮を脱出したのだ。




