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JKだけど異世界で真の漢に俺はなる  作者: 相川ミサヲ
第1章
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◇魔獣襲撃◇

東京方面の方は今朝は驚いたでしょうね?

この機会に非常食や非常持ち出し品のチェックをしようと思います。

 なんだろうな?今の感じ…

 首を捻っていると、突然、けたたましく鐘が鳴らされ、周囲が騒がしくなった。

 周りを見ると、屋台のお店の人達があわてて火の始末をしている。


 「魔獣の襲撃だっ!」

「 魔術師達は砦の上へ!」

 「騎士団!砦と壁を守れっ!補修途中箇所を破られるなっ!」


 伝令とおぼしき人が砦中を走りまわり、火の始末を終えた店主からわれ先に逃げ出す。…屋台は置いたままにするようだ。


 「非戦闘員は、避難部屋へ急げ!」

 「冒険者ギルドへの応援要請は?!」

 「了解したと。リシャール殿が!狼煙はもうあげてあるそうです!」


 見ると、砦のひとつから青紫の煙があがっていた。俺はレオに手を引かれて走りながらそれを見た。


 急に、何かの影が俺達を通り過ぎて、翼のある巨大なトカゲのような獣に乗った、筋骨たくましい偉丈夫が数人の仲間と共に空から舞い降りて叫んだ。


 「Bランクのアレスだ!。ここは俺達「戦塵の刃」にまかせろっ」

 5~6人のパーティが周囲にさっと展開していく。

 打ち合わせたような機敏な動きだ。


 「大丈夫?走れる?」

 レオが心配気に俺の顔を覗き込んで我に返った。

 すっかり周囲の様子に気をとられて、足が止まっていたようだ。

 俺は頷き、レオに引かれるまま、走りははじめた。


 はぁっはぁっ…

 息を荒げて避難部屋へ走りこむと、中の人がしっかりと石のドアをしめた。

 ドアの内側に魔法陣が浮かびあがる。


 「気配探知を阻害する魔法陣だよ」

 レオが教えてくれる。

 「この中に居れば、砦そのものが全壊しない限り大丈夫だ」


 とはいえ、外の音がすべて遮断されるわけではない。

 絶え間なく、何かが咆哮する声と、悲鳴、ドーンとかドカーンとか何かがぶつかるような音が聞こえる。


 「魔力が半分戻ったら出るわ」

 ライラさんが体操をしながら言った。準備運動なのだろうか。


 「誰か矢を持ってない?。請求は俺にしてくれればいいから」

 炎の使い手の魔術師さんが弓の調整しながら言った。

 それに応えて一人の商人が、何もない空間から矢の束を取り出した。

 まさか?アイテムボックス?インベントリ?

 「宝物庫もちか」

 「魔法使いとしては、微妙でしてね。商人になりました。でもこれくらいは使えます」

  宝物庫って俺が知っている「インベントリ」でいいんだろうか。

  何だかゲーム的な能力だな。


 「矢を使うの?」

 ライラさんが、炎の魔術師さんの手元を覗き込む。

 「ああ、魔法陣を使って、魔力によって炎を纏わせる」

  炎の魔術師さんが、何かを唱えてると矢に魔法陣的なものが浮かび上がる。

  ライラさんがガン見している。今にも飛びつきそうだ。


 「あとで教えて?」

 「『魔術師年報』最新の技術だぞ?」

 「お礼は、あ・た・しで」

 「断る!」

 

 …ナニその情報誌??

 

 てか、報酬が自分って、安売りしていないか?ライラさん!

 しかも断わられているし!


 「よっしゃ!出るわよ」

 暫くしてライラさんが、両頬をパァンと叩いて活をいれて立ち上がった。

 「もし、私が死んじゃっても、…訓練はちゃんとするのよ」

 俺の肩を軽く叩いて笑う。

 そんな、フラグみたいだから…やめて下さい。

 「俺も出る。ライラ、一緒に撃ってでよう」

 「了解よ。ディーン、気合入れていくわ。一匹たりとも町には入れないんだから」

 炎の魔術師さん、ディーンていう名前だったのか。


 「どうか、ご無事で」

 俺達も、二人に無事を祈る言葉をかける。

 ディーンさんが、後ろ手で、軽く手を振った。


 多分死地になるかもしれない所に、赴く二人は、泣けるほど恰好よかった。







 どれほど時間が立ったろうか、小さな灯りひとつの部屋で息をひそませて待つ。

 時折、砦ごと、大きな揺れと轟音が響く。

 

 パラパラと細かな破片が落ちてきて、小さく悲鳴があがる。

 「この中は、大丈夫だから」

 レオが俺を庇うように俺の肩に手を置いているが、不安のあまり、まるで俺にしがみついている感じだ。


 人は弱い。

 哀しいほど弱い。


 圧倒的な力や暴力に、なすすべもなく踏みにじられる。

 ――あの幼馴染の少年のように、たやすく強者によって命を奪われる。

 俺は、嫌だ、奪われるのも奪うのも。

 ――強くなりたい。誰も、奪われないように。

 肩をつかんでいるレオの手をぎゅっと握る。

 こんな怖さには負けない。

 

 「大丈夫だなんて言わないで、男の子だってこんな時、怖いのは当たり前だよ」

 レオも俺の肩をぎゅっと引き寄せた。

 「兄さん…」

 きっと今、ウィルは第一線で戦っている。

 あんな強そうな冒険者の身体に酷い切り裂き傷を作るような魔獣が相手だ。

 レオが不安になるのも無理はない。

 ドーン、ドーン

 何かが「壁」にぶつかっている。

 壁を破ろうとしているのであろうか、まるで砦全体が揺れているように感じる。


 終わりがくるのかとは到底思えなかった長い時間を、歯を食いしばって耐えているうちに、その内に音も、揺れも収まってきた。


 誰かが、避難部屋の外から、扉を激しくノックした。

 入口近くの商人が扉を開けると、ボロボロの装備の伝令が顔だけ出し、焦ったように叫んだ。


 「危機は去ったが、どこもかしこも、けが人だらけだ!手伝ってくれ」

 彼はそれだけ伝えると、次の避難部屋へ走っていく。


 私とレオはぎゅっと手を繋いだまま、おそるおそる外へ出た。

 外はひどい有様だった。


 砦や壁はところどころが壊され、それに頭を突っ込んだ状態でオーガらしき巨大な魔物が死んでいた。ゲームなんかや指輪を捨てにいく物語に出てくるような人型の巨大な魔物だ。


 他にも内臓をぶちまけて死んでいる人や馬、矢や斧が刺さったままの魔獣もいた。

 あちらこちらで煙が細く立ち上っており、肉や装備品の焼けるいやな臭いがする。

 魔獣はほとんどがとどめを差されているようだが、味方で、怪我を負った者達がいたるところで、呻き声をあげて助けを求めていた。。


 「重症者は西の治療院へ、軽傷者は東の治療院だ。判別がつかないものは中央の 臨時治療所へ。怪我の酷いものから優先してくれ」

 白い服を着た人が大きな声で叫んでいる。


 何かできないだろうか?

 何かで助けになりたい。

 俺は立ち尽くすレオの手を引っ張って、戦いの酷かったと思われる壁の破られた所へ走った。

 「手伝おう。レオ。軽い怪我の応急手当くらいなら手伝えるかもしれない」

 学校で救急処置の初歩なら習った。

 折れた手足の固定くらいならできるかも。


 「レオ、そっち押さえて、紐ない?紐!」

 一番近くに倒れていた冒険者風の男性の様子を見にいくと、いきなりの重症者だった。

 心臓の脈動に合わせるかのように血が腕から噴き上げている。

 近くの人が布で押さえているが、止まる気配がない。

 「動脈が傷ついている。止血しないと!」

 何かないかと周囲を見回すと、矢を出してくれた、あの宝物庫もちの商人が、何もない空間から白い布地を出して寄越した。

 「どうぞ、お使いください。水もお出しいたしましょう」

 レオに布を引き裂いてもらい、脇の下のあたりで縛った。


 あとは血が止まるまで、縛った部分から先が壊死しないように時々ゆるめてやればいいはずだ。

 「ここから砦の頂上まで行って帰ってくる位の時間がたったら緩めて、血が止まってなかったらまたしめて同じ位で緩めて、止まるまで続けて」

 砦の頂上までは20分くらいだろう。

 行って帰ってくれば40分くらいのはずだ。

 男の傷を押さえていた、仲間らしき男に伝える。


 「よし、これで運べる。こうやって担架を作って…」

 縛った事によって、血が止まったので、男のマントを広げ、怪我人を乗せる。

 そして四隅を俺、レオ、商人、付き添っていた男で持って、臨時治療所へ運んだ。


 「こっち、頼みます。出血がひどい!」

 後は付き添いの男にまかせ、俺とレオは次の怪我人へと走った。



 次の人は毒を受けているようだった。

 「どんなのにやられた?」

 「…蜘蛛だ。蜘蛛っぽい奴だ。」

 「黄色と黒の奴か」

 「ああ…そうだ」

 「ポイズンスパイダーかもな、治療院にいけば薬があるはずだ」

 レオが判断を下す。

 「西の治療院へ運ぼう」


 俺が噛まれたとおぼしき傷の心臓側に近いところを縛っているうちに、レオと

 商人は、インベントリから出した丈夫な布で簡易担架を作り男を乗せた。


 ポイズンスパイダーの毒は、猛毒らしい、救護所に着いた頃には男はビクンビクンと痙攣しはじめていた。

 縛る前に、もう毒が身体を巡りはじめていたらしい。


 「誰か!毒消しをっ。ポイズンスパイダーの毒だ!」

レオが叫ぶと

 治療師さんらしき人が気が付いて走ってきた。


 青い髪を後頭部の高い所でポニーテールに結っている。キツめの瞳がクールな男性だ。

 その治療師さんも、商人さんと同じで、何もない空間から試験管にコルクで蓋をしたような物をとり出した。


 そして、くぃっと歯で蓋のコルクをあけ、持っていた、漏斗みたいなものをビクンビクンしている男の口に差す。

 …中の液体を注意深く流しこんだ。


 肺に入って誤嚥させないように、食道にダイレクトに流し込んでいるらしい。

 まかせてよさそうだ。俺達は、青髪の治療師さんにあとは任せて現場へ急ぎ戻った。




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