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JKだけど異世界で真の漢に俺はなる  作者: 相川ミサヲ
第1章
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◇アジャールの砦◇

話がなかなか動いていかない…亀進行です。



 砦は町を取り囲むようにそびえている壁の、魔の地との境界にあるらしい。

 砦の上の方には物見台があり、壁と壁との間に身を隠しながら攻撃ができるように設計されているようだ。その壁には数多の傷がきざまれ、悠久の時の流れの中での激戦の歴史を物語っている。


 有事の際には、門を締切り、町を守る盾となり、そうでないときは、魔の地へむかう冒険者達を見送る最後の守り手となる。

 ウィルがシリアス顔で語ってくれた。



 意外なことに、砦の前の広場へ続く道沿いには屋台がならび、冒険者や雇われた傭兵達をあてこんで商売をするものがいて、賑わいを見せていた。

 武器や装備品を扱う者。食べ物を扱う者、情報やマップを扱う者、薬や妙薬を扱う者、変わった所で言うと、占いを営むもの、冒険者向けに奴隷を貸し出す者まで居た。

 奴隷文化あるのか・・・。

 もちろん買い取りの屋台も並んでおり、魔の地よりの算出品を、より多く、より 安く買いつけようと、店主達が油断のならない目つきで、魔の地からの帰りの冒険者達に声をかけていた。


 ちょっとしたバザールのような光景に、少しだけ心が浮き立つ。


 ウィルは店と店の間を縫うように通り抜け、目当ての人を見つけると俺を呼んだ。

 「魔法を学ぶなら丁度いい相手がいる」

 ウィルは、ライラさんを紹介してくれた。あの幌馬車の荷台に母子と乗っていたローブの方の人だ。


 「あら、夕べの・・・あなただったのねぇ」

 そして手を握りながら耳元で

 「ウィルは優しくしてくれたかしら?」

と、囁いてきた。

 なにかいろいろ誤解をしているような気がしたが、とりあえず死んだ魚の目で見返しておいた。

 「やぁね、冗談よ」

 あきらかに面白くない、という顔をされてしまった。何を期待してたんだ。

 彼女は砦の補修のため、リスボレイという街からアジャールに呼ばれたということだった。

 土魔法と水魔法の使い手で、あちらでは弟子を取って教えているらしい。


 「あなた、剣士を目指しているようだけれども…せっかく魔法の才能があるってウィルが言うんだから、訓練してみない?よかったら私がみてあげるわ」


 竹刀を持っているのを見たからだろう、俺が剣士を目指していると思い込んでいた。

 俺の目的は「強くなること」で剣士になることではないのだが。


 「お願いします、教えてください」

 ウィルがせっかく引き合わせてくれたし、ここは素直に魔法を習おう。

 理想では物理でTUEEEEEなのだが、手段や方法をえり好みしている立場ではない。

 俺が本格的に鍛錬をはじめて、たった1年。

 理想は、まだまだ先の方にある。


 「私の休憩時間になったらおいでなさい。それまでレオ君とデートしてくるといいわ」

 ライラさんは晴れ晴れと笑って、俺とレオの背中を押した。

 なんだってこの人は、やたらと男女をくっつけたがるのだろう。

 趣味なのだろうか?あれか?仲人体質か?


 「しょうがないなー」

 レオが素直すぎる。将来騙されたり、つけ込まれたりしても知らねーぞ。

 さも当然のように手を差しだして来たのでうっかり取ってしまった。


 ――本当だ。何故疑うんだ?役得とか思わなかったし!まったく!


 気が付いたら手を繋いでいたんだ。言い訳じゃない。

 レオさん、さりなげなさがパネェ。


 俺が誰にともなく言い訳をこねくりまわしていると、レオの小さな呟きが聞こえてきた。

 「違う…女の子はこんな風にノッシノッシとか歩かない」

 ああ、ごめん。なんかごめん。

 ライラさんもごめん。なんか台無しにしてしまったようだ。


 振り返ってみると、ライラさんは土と水を、魔法でこねて砦の穴のあいた部分に塗りこんで、次に水分を飛ばす、という作業をしている。

 もう一人、火の魔術を扱う術者がそこへ高温の炎を浴びせる。表面の釉薬が溶けて、水分がしみこみにくい構造になるようだ。


 とはいえ、壁の内側の杭や内部補強材を補充するのは人海戦術のようだが。


 念動というのは、魔術には含まれないものなのか?

 足場を組んだり、補強材を用意したり、そんなことには使えないのか?

 俺はそう考えこんだ。


 ――そうだ風、風を使って物を動かすとかは…ダメか。空気を動かすというのはピンポイントではできないのかもしれない。すると物を動かすのは重力魔法か?

いや重力は物の重さをかえるものだし。

 そもそもああやって土や水を移動させてるところをみると重力や移動についてクリアできていると考えられるものだし――


 考えこんだ俺の手をレオがひっぱる。

 「ほら、アリサ!砦の中をみにいくよ」


 とりあえず魔法についての考察はあとまわしにすることにした。






 「王都にいくなら身分証が欲しいよね」

 レオに言われて、そういえば、定番だったと思いつく。


 「冒険者ギルドに行くのか!そうと決まればさぁいこう!!」

 突然目を輝かせながら、力強くレオの手を握り返すと、ぎょっとされた。

 ああ憧れの冒険者ギルド、行ってみたい。すごく見てみたい。


 期待にwktkしている俺に若干ひきながら

 「まぁ、連れてってやるから落ち着け」

 と言って手を引いて連れていってもらったところが冒険者ギルド、アジャール砦支部。

 砦の一部をギルドとして使っている、とレオが説明してくれた。テナント料いくらだろ、と的外れなことを考えながら、西部劇にありそうな木の扉をあけてその建物に入ると、そこは筋肉祭りだった。


 俺の太ももより太い腕を見せつけるようにむき出したマッチョな方々がたくさん!筋骨隆々、ガチムチ兄貴の楽園がそこに広がっていた。


 中にはひょろりとした魔法使い風なのも細マッチョなアサシンタイプの人もいたけどね。

 女性もいるけど、ハイレグアーマー的なものを着込んだマッチョねぇさん達だったし。


 あれ?普段着の俺、アウェイ?






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