◇レア度なんてなかった◇
読み直すたびにボロが出てくる!
まさか、昨日の豹の頭の人が目の前のイケメンと同じ人だなんて、さすが異世界、何でもありだな。
思わず遠い目をした俺に、ウィルは続けて爆弾発言をした。
「ところで、お前のいた世界というのはどういうところだった?」
――あっさり異世界人という事がバレてる?。
ど、どうして?
WHY何故?
「ま、そんなに警戒しなくていいよ」
さっきからウィルがいたずらっぽく笑っている。そうしていると、彼の本質はやはり猫科なんだろうなと思える。
「驚くのも無理ないが、まぁ俺の話をきけよ」
うろたえ、狼狽する俺を前に、優雅にフォークを使って食事をしながら、ウィルは話してくれた。
「俺の祖父が異世界人でな」
まさかの異世界人の子孫なのかよ!なんだか自分のレア感が一気に下がった気がした。
「それに俺は鑑定スキル持ちだから、お前のステータスは見えていたし」
なにその便利なスキル、俺も欲しい。
もしかして、ステータスに「異世界人」とでもあったのか。
「もっとも、お前みたいに、不用心にもステータス全公開している奴ははじめて見たが」
設定いじれるのかよ!それだとあんまし意味ないじゃん!
俺は、ウィルにステータスの隠し方を教えてもらった。頭の中でイメージすることで隠したいところを隠せるようだが虚偽は出来ないらしい。
「俺のように異世界人の子孫、というのがいるって事からわかるように、元に戻れた例はあまりない」
探るような目で俺を見る。大丈夫だ。それについても想定済みだ。問題ない。
――いや、本当は泣きたいけれど、泣いたって戻れるわけじゃないしな。目の前のイケメンを悩ませるだけだし、ここでは泣かない。
「お前は見たところ、攻撃的じゃないし、冷静に振る舞っているし、話しがちゃんと通じる。それに、異世界へ来たばかりの割には落ち着いていると思う。
だから…あっさりこっちが気づいているって言った方が話が早いと思ったんだ」
「冷静に見えるようにしているだけです。でも、結果的にストレートに言ってくれて助かりました」
でないと、ずっと記憶喪失のフリをしなくちゃいけなかったからな。
嘘をつきながら生活するのってのは、結構しんどそうだ。
ウィルに出会って本当によかったな。ライラさんが言っていたが通り本当に運がよかった。
「俺の祖父のいた世界は獣人だけの世界で、皆、獣の姿と人の姿を自由にとれたそうだ。だがこっちの世界の亜人と呼ばれる獣人は、生まれたままの姿から変化ができない」
彼は腕をくんで、遠い目をしていた。
「祖父の世界と、こっちの世界のクォーターである俺の兄弟は俺以外、変化ができない。こっち風に変わってしまったんだな」
現在、彼は豹頭にもどってしまった。ていうかいつの間に。正直そのお顔をもっと拝んでいたかった。
…その豹頭は豹の中でもイケメンなのかもしれないが。
どうやら人化していた方が「鑑定」のスキルの精度がいいとの事。
それで普段は豹頭なのだが、今朝は人になっていたのだそうだ。
「人化した時の俺の顔って、なめられやすいんだ。甘く見られて余計なトラブルの元だからな」
うむうむ、そうであろう、あの甘い顔では、さぞや嫉妬を煽ったり、お嬢さん方に騒がれて、さぞかし煩わしいに違いない。
内面が「漢」なのにジョシコーセーをやらされてる俺にも心当たりがある。
オンナノコなのにとか女子の癖にとか、まったく生き難いったらありゃしなかった。
魔法少女モノよりも戦隊ヒーローモノが好きでもイイジャナイカ!
魔法を使って悪を懲らしめる可憐な美少女よりも、バッサバッサと物理で敵を やっつける筋肉ヒーローに憧れるのだ。
「で、どんな世界だったんだ?」
俺のいた世界についで、かいつまんで説明してみたがうまく説明できた気がしない。
「魔法が存在しない世界、か。興味はあるが、お前の話じゃよくわからないな」
俺の下手な説明では、ウィルを混乱させただけのようだ…すまんバカで。
「それより、お前のステータス見て気が付いたんだが、『剣士』とか『戦士』とか『格闘士』ばかりレベルを伸ばしているが、お前、物理系のスキルはイマイチだぞ」
え・・・ええええ!なんてこったい!
異世界での俺の資質すら内面を裏切ってるようだ。
俺はがっくりとorzと大地に手をついてうなだれた。
俺の筋肉、物理的強さに憧れるこのパッションはどこへぶつけたらよいのか。
「だが、『魔術の素養』がある、そちらを伸ばしていけばいい」
魔法使えるのかよ!一気に異世界への期待が上がった。
「それと、もうひとつ。王都にいけば『異世界人ネットワーク』にコンタクトがとれる」
・・・なにその便利そうなもの! 俺のレア度がさらに下がった気がした。
異世界人どんだけいるんだよ!!