◇立ち上がる人々◇
あれー?投稿したつもりが反映してないや。
2重投稿でしたらあとで削除します~。
GWも終わってしまって…今度の休みは…いつだろう?
それからの作業はとてもしんどいものだった。
死者の搬送に切り替わったからだ。
俺も、レオも、商人も、みんな無口になっていった。
バラバラになりすぎて肉片になっていた遺体もあったが、それは騎士さん達が率先して集めてくれていた。
あのBランクの「戦塵の刃」の冒険者のアレスの姿も見かけた。
仲間の一人が死んでしまったようで、遺体を前に、がっくりと肩を落として座り込んでいた。
「どこもかしこも…酷いな…」
レオが呟き、俺も無言で頷いた。
その頃になって、町から人がやってきて屋台の商人さん達と一緒に炊き出しをはじめた。
生きて、食事が出来る者の手には暖かい具だくさんのスープが配られた。
でも、とても食欲なんかわくわけなんかない。
スープがなみなみと注がれた容器を前に、ぼんやりしていると、青髪の治療師さんが自分の分の容器を手に俺達の方へやってきた。
「食える時には食っとけ、食って体力を戻して、備えておかんと、いざという時に動けなくて後悔することになる」
どっかと地面に胡坐をかいて座るとぐぐーっとスープを飲み干す。
「こういう風に喉から腹へ無理やりでも食い物を通して、あとは身体にまかせれば、…力にしてくれる」
そう言いつつ、「うっ」と手で口を抑えた。
…ひょっとして今、ちょっと戻した?
しまんないんですけど…?。ちょっと笑えた。
俺達が微妙な目でもって見ていると、彼はげほげほとむせたあと、咳払いをして、ごまかすと、俺達に手を伸ばして、頭をぐりぐりとなでた。
「…その、ありがとな。お前らが運んでくれた怪我人の殆どは助かった。
適切な処置だったよ。礼を言う」
ぐりぐりと撫でられて、頭をグラグラ揺らされて、余計に食欲がなくなる。
でも、彼の言葉はうれしかった。俺達を励まそうとしているんだろうな。
「この最果ての地は、生きている者に厳しい、でも、生きているからこそ立ち上がって、何度でも立ち向かえるんだ」
彼は砦の方を指さした。
「見ろよ。彼らは、もう「次」に向かって踏み出している」
彼の指さす先には、魔獣によって穴をあけられた壁があり、その穴を埋めようと、たくさんの人間が働いていた。
その中にライラとディーンの姿を見つけて、俺はやっと、ほっとできた。
ウィルも彼らと一緒にいたようだ。
修繕に取り掛かる人々に指さして指示を出している。
彼の身体や装備には傷らしい傷は見当たらなかったが、返り血や、何かの液体で
ひどく汚れていた。
…魔獣の体液なのだろうか。
「兄さん!」
レオが叫んで走っていく。
ウィルの無事な姿を確認してうれしそうだ。
ウィルも気が付いて、大股で俺達の方へ向かって歩いていくる。
「二人とも、無事でなによりだ。」
レオを抱きしめ、次に俺の方を見て手招きする。
「アリサには、いきなりの事で怖がらせてしまったと思うが…平気か?」
近くに寄ると、長い腕で俺を抱き込み、レオともども腕に閉じ込める。
…きゅ…窮屈ですがな。
「…それに治療師のクリスから聞いたが、よく働いてくれたそうだな。
得にデュオのことでは、よく助けになってくれた。礼を言う」
優しい手つきで俺とレオの髪を撫でる。
本当に心配していたのがよくわかる。弟のレオのことを心配するのはよく分かるが、昨日今日知り合ったばかりの俺のことまで心配して心を痛めていたのがわかる。
本当にやさしい人なのだろうな。
…み、耳が、ペタンとなっちゃってるよ。さ、触りたい!
大丈夫、かなりビックリしたけど、こっちではフツーにあることなんだよね?
「この二人が、ウィルの身内だって聞いてなるほどと思ったよ。
お前の身内なら、あの働きも納得できる」
どうやら青髪の治療師=クリスとウィルは知り合いのだったようだ。
お互いに肩を叩き合い親しげだ。
…いつの間にかウィルの身内的なものになってた。
すんません。ウィル的というか豹的なものとか麗し度的なものが何もないんですが…。
あ、預かってる知り合いの娘とかいうのも身内に入るんですか…そーですか。
俺も、ウィルと血がつながっていたら、獣耳とか生えるんだろうか。
尻尾とか是非欲しい。あれ、なんかあったら何か楽しそう!
あ、でもレオは豹的なものを持っていなかったんだっけ。
でも、身体能力は野生動物並みだと思う。獣人ぽさはそっちに出たんだろうな。
ついで、クリスは俺達と一緒に行動していた商人さんに向き合って握手を求めた。
「君もありがとう。屋台の店主はだいたい覚えていると思っていたが、…
君の用意してくれた大量の綺麗な水と清潔な布のおかげで感染症の心配もだいぶなくなったよ。…大きな容量のインベントリを持っているそうだね?」
商人は、軽く頭を下げた。
「お恥ずかしい事です。魔術師にはなれなくて商人になりましたが、
修業時代に習得したインベントリが思いがけずお役にたったようで」
「またタイミングよく使える物をたんまりと収納していてくれたねー。助かったよ」
クリスは腕を組んでウンウンと頷いた。
「それに、あの方法は良いね!どんな応急処置を受けたのかどこが悪いのか、一目瞭然だ。患者さんが気を失ってる場合もあるからね」
何のことかと思ったら、あの包帯がわりにした布に書いたメモ書きのことだった。
「あれは、こちらのお嬢さんが考えたんですよ」
商人さんは静かに笑って俺の方を見た。
「まだお若いのによく気がつく方ですね」
どうやら童顔の日本人、実年齢より若く見られていたらしい。
「いや…こう見えて17ですし」
というか、元いた世界ではフツーに使われている方法だし。
「ははぁ。ではお年頃ですな」
商人さんはなんだかしたり顔で微笑んでいる。
「まだまだ子どもですよ」
ウィルがまた俺達の頭をくしくしっと撫でた。
なんかお父さん的発言ですな。
多分テンプレならこっちでは15、16歳で成人なんだろう。
「…見ない顔だが、最近こちらで仕事を?」
商人さんの方を向きなおして、ウィルはふいに目を細めた。
その時、部下の人らしい人がウィルを呼んだ。
「団長!すみません、ちょっと!」
「おう、今行く!」
話しかけられた事で気がそらされてしまったようでウィルはそのままもう一度俺達の髪を撫でてから仲間の方へ歩み去っていく。
(今、なんか商人さんを見て、何か怪訝そうな顔をしたような…クリスさんも何かひっかかるような言い方していたような?タイミング良く?)
俺はもっとこの時、この事をつきつめて考えておくべきだったのだが、
はじめての事で興奮もしていたのであろう、残念なことに、感じたひっかかりも 俺の意識からこぼれていってしまった。
それは俺だけじゃなく、ウィルもクリスさんも、他に優先してやる事を抱えていたために見過ごされてしまったのだ。
何気なくレオの方を見ると、デレっとした顔が目に入った。
うわー、わかりやすすぎる。
間違いなくブラコンだよこの少年!
「では、私はこれで。放りっぱなしで逃げた屋台の具合を見ませんと」
商人も軽く会釈をして去っていった。
――名前を聞くのを忘れたな。
俺が商人さんの後ろ姿を見送っていると、レオがスープを一気に飲み干し、上機嫌で言った。
「…帰りに解体所に寄ってコアを取るところ見ていく?」
本当、現金な奴。
レオの奴、兄成分補充したみたいで元気が復活したようだ。