51話
軽いネタを含みます。
――汜水関駐屯地・公孫賛陣営――
【李鳳】
蜀の天才軍師による俺暗殺計画は未遂に終わった。
暗殺って言うと……斉(さい)を思い出す。
今頃どこで何をしているのやら……本当に死んだんだろうか!?
まぁ今となってはどうでも良いことだ……面白いサンプルには不自由しないからな、ククク。
そのサンプルである天才軍師2人は今や、俺とマンセーの玩具へと化している。
「ほ、本当にそんな事が……?」
恥ずかしがりながらも諸葛亮は前のめりになって聞き返してくる。
鳳統も興味津々と言ったところで耳を澄ましている。
「クックック、このマンセーをここまでにした私を……お疑いで?」
李鳳の言葉を聞いた瞬間、2人の視線は李典の一部に注がれる。
李典は李鳳に言われるがまま、諸葛亮と鳳統に見られるがまま、何も語らず何も隠さず微動だにしない。
「い、いえ。信じます!」
「信じましゅ!」
「ククク、結構。医と気功を複合させ編み出した秘技法ですので、あまり口外しないで下さいね」
黙って頷く諸葛亮と鳳統。
李典も黙って李鳳の意図を読み取ろうとしていた。
「氣法の一つに化勁(かけい)というものがあります。これは相手の氣を吸収したり指向性を変えるものでして、あまり知られていませんが氣は自在に扱える者は少ないのですが誰にでも宿っています。全身に満遍なくという人もいれば、ある部分に集中している人もいます。素手で岩を砕く人は腕に、蹴りで大木を圧し折る人は脚に、視力が良く遠くや暗闇でもハッキリ物が見える人は目に氣は集中しているものなんです」
「なるほど」
李鳳の説明を2人は真剣に聞いて感心している。
この話は李典も初耳らしく、聞き入っていた。
「氣の集まり方は身体的特徴にも表れます。……分かりますよね?」
パッと2人の視線が李典の胸に向けられた。
「ククク、正解です。そして人は想像することで始めて実現できるものなんです。目標・目的を想定することで得られる結果・効果が大きく変わってきます。これも良いですか?」
「「はい」」
李鳳は都度、確認しながら話を続けていく。
「体というのは刺激を与えることによって活性化します。鍛えれば重い物を持ち上げれたり、早く走れるようになりますよね。同様に、胸も刺激を与えることで豊満になるのですよ」
「「っ!?」」
「はは~ん、そういう事かいな」
李鳳が核心に迫る内容を語り始めた。
提案を聞いて面白そうだと黙っていた李典も合点がいって笑みがこぼれた。
「これに化勁を複合し、理想の胸の想像し、刺激を与えると……」
「(ゴクッ)……あ、与えると?」
「こうなります」
そう言って李鳳は李典の胸を指した。
「「おおぉぉ!」」
見事にハモって感心する諸葛亮と鳳統。
「悪いやっちゃ」と口には出さずに笑う李典。
「いいですか、やり方を説明しますよ。まず対象となる胸の豊かな人を見つけます。その人には胸に氣が溜まっているはずですので、それを少し頂戴します。余っている過剰な分ですのでむしろ奪ってあげた方が良いのですよ。両手で『ヤー!』と叫びならが対象の胸を握って下さい。ただし、相手に何をするか悟られてはいけません」
「許可なく触ったりすると失礼になりませんか?」
「ここが氣の難しい所なんですが……相手に気取られると氣が分散してしまう事が多いのですよ。そうなると効果的に氣を吸収できません」
諸葛亮のごく当然の疑問に最もらしくシレっと答える李鳳。
「な、なるほど。でも、いきなりだと……」
「まぁ最初に『済みません』とだけ断りを入れておけば、大きな問題にはならないでしょう……同性ですし。ニ、三度握れば充分です、この時には掌に氣が吸い付くことを想像して下さい。そして、吸い付けた氣を自分の胸に当てしっかりと揉み込んで下さい」
「はぅぅ」
「あぅぅ」
真剣な表情で聞き入っていたが、顔は真っ赤に染まっている。
「吸い付けた氣はあまり長く保ちませんから、すぐに揉み込んで下さいね。その際に『大きくな~れ』と声に出すこと、理想の胸を想像することが大事です」
「「は、はい」」
もはや先生と生徒と化した李鳳の豊胸育成教室である。
李典はニヤニヤしてその様子を見ていた。
「想像、吸収、刺激、発声の4点が重要ですので忘れないで下さいね」
「「はい!」」
「返事は『ヤー!』ですよ」
「「ヤー!」」
「ニッシッシッシッシ」
元気良く返事をする2人に我慢出来ずに李典が笑い出した。
「あ、あの……鈴々ちゃんにも教えてあげてもいいですか?」
鳳統が遠慮がちに李鳳に尋ねた。
「構いませんよ。ただし、まずは御二人で実行し、効果の程を体感してからの方が良いのではないでしょうか? 万人に効くという保証はありませんので……それに、比較対象がいた方が検証し易いと思いますよ」
「……そうですね。確かに、せっかく教えても効果が無いとガッカリしちゃいますよね。……分かりました、そうします!」
「では、くれぐれも内密に。健闘を祈ります」
「「ヤー!」」
クックック、意外とチョロかったな。
やはりコンプレックスに感じてたんだな……気持ちは分かるよ。
同情の代わりに笑ってやろう、クヒヒヒヒ。
お茶も楽しみ良い会談になったということでお開きとし、君主の待つ隣の天幕に向かったのであった。
――公孫賛本陣――
「おっ! 終わったのか? あんまり酷い悪口は言ってないよな?」
「え!? ホントに悪口だったの?」
天幕を訪れた4人に公孫賛が気さくに冗談交じりで話しかけてきた。
劉備は真に受けて驚いている。
「程ほどに抑えましたよ、クックック」
「ニッシッシッシ、アンタの『程ほど』程エグいもんは無いで」
「おいおい、勘弁してくれよ……。そうだ、李鳳、お前に客人だ」
「……私に?」
苦笑いする公孫賛から来客を知らされる。
すると、奥から桃色ロングヘアと色々ロングヘアの2人の女性が近寄ってきた。
「は~い、おっひさ」
「初めまして……かしら、周公謹よ」
現れたのは呉の大将と大軍師であった。
苦手意識が払拭し切れてない李鳳の表情は固い。
「……そちらからお見えになるとは……」
「お前ら知り合いだったのか? 言ってくれればいいのに」
「へぇ、……ウチも聞いてへんで」
公孫賛は単純に話してくれれば良かったのに、というトーンだが、李典は少し含みがあった。
「あら、言ってなかったの? ……って、何かしら?」
「むっ、なんだ?」
孫策と周喩が同時に問い掛けた。
2人の前にチビッコ2人が現れたからだ。
「す、すいましぇん」
「ご、ごめんなしゃい」
「へ?」
「は?」
突然の謝罪に困惑する孫策と周喩。
次の瞬間――。
「「ヤー!」」
思いっきり2人の胸を鷲掴みにしてモミモミするチビッコ2人。
慌てる孫策と周喩のアダルトな2人。
「ちょ、ちょっと何しているの!?」
「や、やめなさい!」
「ヤー!」
「ヤー!!」
「しゅ、朱里ちゃん!? 雛里ちゃん!?」
ヤーヤー叫びながら乳を揉んでくる2人に若干寒気を覚える孫策と周喩であった。
劉備も公孫賛も軽く引いている。
チビッコ2人は三度程揉むと李鳳の顔を窺った。
そして、李鳳が頷くと李典が口を開いた。
「ウチの天幕好きに使うてええで」
「は、はい」
「ありがとうございます」
そういうや否や、チビッコは2人は飛び出して行ったのだった。
「クックックックック」
「ニッシッシッシッシ」
唖然とする周囲を他所に李鳳と李典は大笑いするのだった。
「何がどうなってるんだ?」
公孫賛が思ったことを口にした。
「全くね。説明してくれるかしら?」
「ひッ……」
かなり不機嫌モードの周喩は『私怒ってるわよ』感が満載で劉備はちょっと怯えていた。
「お二人の豊満な胸に肖(あやか)りたかったんでしょう。年頃な女性の切なる願いですよ……有る者には分からない苦悩とでも言いましょうか。何卒、寛容にみて頂けませんか?」
「そうだとしても……客に対して無礼な振る舞いではなくて?」
李鳳の何かを試そうとして噛み付く周喩。
それを察してか孫策は黙ったままである。
しかし、その周喩の思惑も空気を読めない真面目な2人によって妨害される。
「悪かった、周喩。私の監督不行き届きだ、本当にすまない」
「違うよ。2人は私の軍師だから悪いのは私だよ、ごめんなさい」
公孫賛と劉備に真摯(しんし)に頭を下げられては、流石の周喩も強く出れなくなってしまった。
「ウフフ。まぁ減るもんじゃないし、いいんじゃない。冥琳も、ね?」
「ふむ、まぁ2人に免じて無かったことにするわ」
「すまないな」
「ありがとう!」
見かねた孫策が助け舟を出し、周喩もそれに乗った。
公孫賛と劉備は謝罪と感謝を述べる。
「クックック、良かったですね。丸く収まって」
「お前なぁ……はぁ……」
他人事で語る李鳳に公孫賛も溜め息をついた。
しかし、そんな李鳳に楽しそうに話しかけてくる人物がいた。
「変わってないわね~。背は伸びたみたいで良かったじゃない」
「大きな御世話ですよ……わざわざ昔話をしに来たんですか?」
「そうよ~」
「…………」
あっけらかんと話す孫策に李鳳は『やっぱりコイツ嫌いだ』と再認識した。
「そうじゃないでしょ、まったく……。緒戦の作戦、その意図を問いに来たのよ」
「アンタらもかいな!」
孫策ではらちが明かないと周喩がここに来た旨を話す。
それを聞いて李典がツッコむ。
同じ話を二度するのは面倒だと李典と公孫賛に説明は任せて、李鳳は静観、正確には孫策を観察していた。
「なるほど。とんだお人好しがいたものだな」
「いいんだよ、私は別に」
「ウフフ、貴女は良くても……兵達はどうかしらね?」
「どういうことだ?」
「深い意味はないわよ~」
周喩は納得し、孫策は意味深な発言をした。
周喩が余計な事は言うなと睨んだ為、軽く流すことにしたのだった。
孫策自身はこの公孫賛が嫌いでは無かったのだ。
そこへ出て行っていた2人が戻って来た。
「さ、さっきは済みませんでした」
「しゅみませんでした」
「別に気にしてないわよ~」
「済んだ事よ。ただし、私には二度とやらないで」
頭を下げて謝るチビッコ2人を許して少し場が和んだ。
そこに、再び来客があった。
「呉の方がまた来訪されております」
衛兵が伝えに来た。
「うちの? 誰かしら?」
「通してくれ」
「はっ」
孫策と周喩も聞いてなかったようで見当もついてない。
公孫賛が衛兵に指示を出す。
すると、銀髪ロングヘアの女性が入ってきた。
「失礼仕る」
「祭じゃない」
李鳳がピクリと反応した。
「おお、策殿……むっ、なんじゃ?」
現れたのは黄蓋だった。
孫策に話し返そうとしたが、遮られることになった。
「ヤー!」
「ヤー!」
突然チビッコ2人に襲われた黄蓋は狼狽する。
「なっ、何をするんじゃ!?」
「ヤー!!」
「ヤー!!」
慌てる黄蓋に群がるチビッコ。
「止めんか! ち、乳を揉むでない!」
「ヤー!!!」
「ヤー!!!」
そのチビッコにたっぷり揉み解された黄蓋。
「な、なぜお主らの方が涙目なんじゃ!?」
「い、いくよ。雛里ちゃん!」
「う、うん!」
脱兎の如く走り去って行くチビッコ2人と穢されてしまった感のある黄蓋であった。
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