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番外編 君に 下

 学校での日々はあっという間に過ぎた。日々に流されあいつのことをすっかり忘れていた。東では、文官として勤め、国とは違う連邦ごとに代表たる知事がいて、それを取りまとめる総知事が国を代表するというやり方に面喰うことも多かった。王政と違うのは一族に重きがないところだろうか。それでも力のあるものが権力を集中させた場合、ストッパーのような役目を周りが行うことが難しいという懸念はありながらも、国よりも自由に上に意見をあげやすい土壌は自分に向いていた。


 女性たちも、あっけらかんとしている人が多くて、女性の方からつきあいを求めてくるのには面喰った。付いている知事のお嬢さままでもとは驚いたが、それなりに付き合いを進めていた。ときめき、胸の高鳴り、仕掛けて追いかけて捕まえる。恋愛とはこうでなかったか。


 知事について各地を巡るとき、国に近い国境の町に、舞踊団の催しがあると歓迎する市長が言った。ここを超えると国か。戻りたいのか俺は。そう思いながら、あいつのことを久しぶりに思い出していた。


 正直、歌舞音曲には全く興味がない。そこにあるだけという存在だった。目の前で踊る女性たち。柔軟な体で跳ねたり廻ったり。その中の一人に、どこかで見たことのあるような若い子供がいた。まだ小さいけれど、中心でソロを踊る娘に花を渡す役。


 私の母は、東出身の踊り子 名前はヨランダ 私を産んだ時18歳だった。その言葉を思い出した。すっと席を離れ、裏に出ると舞踊団の関係者だろうか、大柄な男が会場を守るように立っていた。


 近づくとさっと目を見、剣に手をかける。


「ヨランダという女性を知っているか。」


 男は目を大きく見開き、剣を引こうとした。


「娘から伝言を預かってきた。」

そう言って、名乗ると、男は遠い目をして剣から手を離し、近づいてきた。そして俺の肩をたたき、話始めた・・・。


 宴の後、野暮用と言って知事を先に返した俺は、暗がりで待っていた。舞踊団の片づけが終わった男は、3人の娘たちを連れてきた。上二人は男そっくりだったが、舞台で見た小さな娘は驚くほど似ていたーあいつに。


 「ヨランダは去年死んだ。」


 先ほど、男は絞り出すような声で言った。この町に定住しているという男は、妻がいつも国境の方を向いて祈るようなしぐさをしていたと。

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