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最終話 キレイ

 それからは怒涛の日々だった。


 まず妹の皇太子就任とヨセフとの婚約が発表された。コッソーレ家を継ぐはずだった兄が皇太子の夫となり、家を継ぐつもりのない二男・三男の意向もあって、チェザーレがコッソーレ家を継ぐことになった。予定だった副将軍の話しがなくなったということは、やはりオレーリアとの婚約の噂は本当だったのか?と聞きたいけれど、結婚式を終えてすぐ議長秘書として北と西をこの3か月で巡っている夫に聞く時間はなかった。


 妹の前に式を上げなくては妹が恥ずかしい思いをするからと、憎々しげに義母が言いはり、用意を急がして1か月後に結婚式を挙げた。王室の味噌っかすの私でも、父は花嫁準備をしてくれたのには驚いたが、それ以上にこれまで実は近衛隊が私の警護を密かにしていたなんて思いもしなかった。


 マリーがブライドメイドをするとはりきって準備をしてくれたおかげで、関係者だけをあつめた王室にしては簡素な式だったけど、私は頭が溶けっぱなしで式の内容はほとんど覚えていない有様だった。


 チェザーレと二人になったのは、花嫁衣裳から普通のドレスに着替えに行く廊下でだけだった。


 椅子を持ってきて壁に置き、座れと促され、私は頷いた。緊張で食事も採れず、上がったテンションが落ち着いてきて一気に疲れてきた。私に水が入ったコップを差し出した。


 「教えてやろうか?」


 ブホッと水を噴出した私は、花嫁衣装にかからなくてよかったとは思いながら、廊下にこぼしてしまった水を、持っていたハンカチでふいた。


 ごめん、といいながら、チェザーレもかがみこんで水をふいた。そして、私の肘を持ち、私を引き寄せ口づけた。触れるだけのキス。私も彼も目を開けたままで、口が離れても見つめ合っていた。


 「キレイだ。」


 え、というと、そういうところと言って、ハンカチを指差し、途端に恥ずかしくなったのか引き寄せて胸に抱きしめた。


 こぼして水をふく私がキレイってこと?よく分からないけれど、誉められているんだろうと思うことにして、彼の胸にもたれた。


 急に私を引き離すと、立ちあがった。


 「分かってないだろ」

 「え、私のこの要領を得ない性格が好きだってこと?」


 一瞬真っ赤になって言葉が詰まって、からいつものニヤリとした笑いを浮かべた。


 「違う。けど正解。ヒントは、池で会った時、あれはお前。」


 そう言って、私を座らせると、先に着替えるぞと言って、照れくさそうに去って行った。


 ・・・・・。


 思い出す。13歳のあの時、彼は、咲き誇った蓮の花をキレイだと言ったと思っていた。


 まさか私のことなんて思いもしなかった。彼はずいぶん前から私のことを好きだったのだろうか。


 私もたいがい言葉が出ないけれど、彼はそれ以上だ。・・・でもそれが愛しくてたまらない。私は涙をこぼし続け、あまりに着替えに来ないと心配して戻ってきた彼を驚かせた。


――――――――――――


 今日、彼が帰ってくる。教えてくれるんでしょ、って言ったら照れるだろうか、それともいつもの調子でかわされるのだろうか。でも今度は私から言ってみよう。

 

 キレイって。




 あなたがお母さまを見つけるのも、お義父さまの反対とあなたの攻防の顛末を聞くのも、あなたの兄上がブリザードらしからぬ温情ある手腕を発揮するのも、私が学校長になるのも、私たちの娘があの池で誰かと出会うのも、もう少し先の話し。

拙く、ミスや、伝わりにくい部分も多々あったと思いますが、読んでくださり、本当にありがとうございました。しかも、評価やお気に加えて下さった方もおられ、ものすごく励みになりました。ありがとうございます。

番外編というか、付け足しのようなものを3話続けます。よろしければ読んでいただけたら嬉しいです。

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