22 邪魔者
ふと気づくと目の前に彼の顔が来ていた。びっくりして押し返し逃げた。
「ちょ、っちょっと、何?」
「叶える」
私は真っ赤になった。
「こ、こんなところで何を。」
「お前、頼んだだろう。」
「は?」
「そういう事だろう。分かってるから。」
もしかして、「お願い」と言ったことだろうか。私は更に真っ赤になってそういう意味じゃないー、と押し返そうとしたが彼は私の顔をまた胸に抱きこんで耳元でささやいた。
「知ってるか?おれも黒子に惚れたって。」
3つ並んだ冬の星みたいなやつがここにある、そう言って耳たぶを噛んだ。私はまた体中が溶けたようになって力が抜けてしまった。彼が私を下ろそうとした時、木の向こうから声がした。
「そこまで。10秒後に参ります。1、2、3・・・10」
その声が聞こえる否や彼が立ち上がると、私の手を引っ張って立たせた。すばやく現れたのは、チェザーレの兄上と近衛隊の何人かだった。
兄上は相変わらずの冷たいまなざしで、弟を睨み付け、他の2人はニヤニヤしている。私は恥ずかしくてまた下を向いてしまった。
「覚悟はいいんだろうな。」
兄上がチェザーレに言った。初めて聞いたけど声もブリザードのようだった。
「えぇ。できています。兄上も。」
と聞くと兄は頷き私を見た。
皆の視線が私に集まり、私はまた言葉に詰まった。あの、違うんです。彼はたまたま学校の同期で会っただけで私が転んで、なんて典型の言い訳をしようとしたのだけれど。
「あ、あ、あっの」
チェザーレがイライラして言った。
「だから言っただろう。喘ぐなら夜にしろって。」
「ちょっと、人前で・・。」
「恥ずかしいと思う方が恥ずかしいんだろうが。」
パン、と目の前で手を叩かれ、ハッとすると兄上が苦々しい顔で見ていた。
「ジョセフィーヌ王女」
私は、めったに言われない正式名称を言われビクッとした。
「陛下がお待ちです。」




