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15 近づく時

 教師になって5年目。23歳になった私は児童院の院長になっていた。とは言っても役職だけで、実体は教師として、子供たちと走り回っていた。しかし、院長として、時折城を出て、他の児童養護施設や学校の関係者と会う機会も増えた。王女である私を知らない人の方が多かったのは好都合だった。知ったとしても驚かれることが多くて、それが不思議と心地良かった。


 そんな時、彼が帰ってきていると聞いたのは町に会合にでているときだった。そろそろだろうと思っていた。


 流れに流れていた妹の縁談が決まったと義母自らが私に告げてきたとき、予想していたとはいえ、私は久しぶりのそして最後になるだろう絶望の中にいた。


 コッソーレ議長の4男、イースタラント連邦に王命により派遣されているチェザーレ・ドン・コッソーレは帰国後、副将軍に任官し、王女オーレリア・フォン・トノート殿下と婚約する。


 その噂は国中を駆け巡った。美女で聡明名高いオーレリアが適齢期を過ぎても結婚しなかったのは、チェザーレの帰国を待っていたのだと、人々はオーレリアを一途な王女としてますます持ち上げた。そこで比べるまでもなく、私は嫁きおくれとして比較対象すらされなかったようだ(これはマリー談)。


 私はその時、人の噂を耳に入れる余裕なんてなかった。絶望の果てに、ある決心を固めていたからだ。


 二人の仲を裂くつもりはない。チェーザレには幸せになってほしいから。でも一つだけ欲しいものがある。引っ込み思案で、自分から何かを求めるなんてついぞしてこなかった私が、生涯でただ一度、無茶をしてみよう。


 「邪険にされている王女。上手く立ち回る訳でもなく、不穏な動きをする気概もなく、民のことも憂えず、何もせずいいご身分だな。」


 この中の一つでも叶えることが出来たならとずっと思ってきた。今の私で会いたい。つきあがる思いを抑えられなかった。


 もともと地に落ちた評判だけど、恥も外聞も捨てよう。


 まずは、マリーのところだ。


 私は駆け出した。


 部屋を飛び出たところでふと立ち止まる。いやいや、城を出ようとするまえに止められてしまう。落ち着いて周到に叶えなければ。


 とりあえずマリーを呼ぼう。

 

 私は急いで筆を取った。

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