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13 教師

 学校を卒業してから、私は城内の外れにある児童院で、戦争孤児たちを育成し教育を行うという国の理念を実現するため(という名目で)、教師として働いていた。王女という立場から給料が出ることはなかったが、施設の一角で寮母のように子供と寝食を共にし、まさに母のような気持ちでいた。


 過去形なのは、始めは理念を持って、学校で学んだことを子供らに伝えるのだと意気込んでいたのだが、相手は生身の人間である。それぞれに都合があり事情がある。素直に私の話しに耳を傾けてくれる訳ではない。


 加えて、一人ひとりが違って、いろいろなトラウマを抱えてそれを乗り越えようとしている子供たちの姿に、ただ寄り添うしかできない自分が情けなくもあった。なにかをしてあげようという奢った気持ちで私は人を見ていたかもしれない。どこかで王女の自分が、こんなお飾りのような立場で、理念だけにすがって立ち尽くしているのが恥ずかしくもあった。


 「影の王太子」というあだなももう聞かない位、私の国での存在感は薄くなっていた。話し下手で要領の悪い私は同僚からも邪険にされていた。


 「民をも憂えず」


 チェザーレの言葉が何度も頭をよぎることがある。他にも思い出せば、ズブズブと落ち込んでいきそうな言葉の数々。池での穏やかな彼との時間は別として、彼からの厳しい指摘は私の先生だった。


 少なくとも、あの言葉の一つでも覆せるようになりたい。がんばっている彼にいつか会った時恥ずかしくない私でいたい。そう決めて、私は初めて正面から子供達、いや人間そのものに向き合い始めた。


 笑顔で挨拶をして、困っている子がいれば傍に寄り添い、叱るときには叱り、とにかく諦めなかった。授業は決してうまいとはお世辞にも言えなかったかもしれないが、口下手だった私はその分、子供の心の機微を拾い上げフォローすることができる、と上司である児童院長に言われたのは3年経ってからだった。時間をかけてゆっくりと、子供たちも同僚たちも私を認めてくれるようになってきた。気付けば私は一人ではなく、誰かが周りにいて、また輪の中に自然に溶け込んでいた。


 母になろうとか、王女として私ができること、そういう大義名分でなく、目の前の人に寄り添うという事で私の世界は変わった。

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