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白い荒野  作者: 瀕死の重病患者
1/1

タイトル未定2024/12/11 19:58

見て頂き誠に感謝します

アンドレイ・ミハイロフはシベリアの広大な荒野に育った若者だった。父親はロシア帝国軍の退役軍人で、幼い頃からアンドレイに兵法や言語を教えた。父は貿易商でもあり、日本や中国との取引で得た知識から、アンドレイは英語、日本語、中国語を学んだ。平和だった村の生活は、革命と内戦の波によって一変した。

「アンドレイ、我々はこの国を救うために立ち上がらねばならない。」

ある日、地元の白軍指導者が村を訪れ、アンドレイを含む若者たちに協力を呼びかけた。赤軍が近隣の村々を占領しているという知らせが届き、彼も志願せざるを得なくなった。


アンドレイは家族に別れを告げ、白軍の拠点へと向かった。そこで彼は、革命を憎む旧帝国支持者や、共産主義に反対する者たちと共に訓練を受けた。

「アンドレイ、君は言葉ができるそうだな。」

白軍の士官が彼に話しかけてきた。

「はい、日本語と中国語、そして少し英語も話せます。」

「それはいい。これからシベリアを進む干渉軍と交渉する機会が増える。我々には通訳が必要だ。」

こうしてアンドレイは、白軍の通訳兼兵士として重要な役割を担うことになった。


その後、アンドレイの部隊はイギリス軍、日本軍、アメリカ軍を含む干渉軍と合流するため、シベリア鉄道沿いに進軍した。

「おい、君が通訳か?」

アメリカ軍の将校が笑みを浮かべて手を差し出してきた。

「はい、アンドレイ・ミハイロフです。」

流暢な英語で返答したアンドレイに、将校は驚きの表情を見せた。

「おお、立派なもんだ。君たち白軍も大変だろうが、我々もここにいるのは楽じゃない。氷点下での戦いなんて、想像もしていなかったよ。」

その後、日本軍将校とも会話をする機会があった。

「君の日本語はどこで学んだ?」

日本軍の中尉が尋ねた。

「父が貿易商だったため、日本人と交流する機会がありました。」

「そうか。我々も帝政ロシアが崩れた後、この地がどうなるかを注視している。君たちの努力が報われるといいな。」

干渉軍は友好的だったが、アンドレイは彼らがロシアの混乱を利用しようとしていることを薄々感じていた。


数週間後、アンドレイの部隊は赤軍との直接対決に臨んだ。戦場は雪に覆われた広大な平原だった。

「弾薬を節約しろ! 敵が近づくまで撃つな!」

士官が指示を飛ばす中、アンドレイはライフルを構えた。赤軍の兵士たちは士気が高く、次々と攻撃を仕掛けてきた。

「後退するな!」

仲間が叫ぶが、赤軍の勢いは止まらなかった。アンドレイは敵兵の一人を撃ったが、その瞬間、目の前で仲間が倒れるのを目撃した。

「くそ……なんて戦いだ……」

赤軍との戦いで部隊は大きな損害を受けたが、アンドレイはなんとか生き延びた。


戦況が悪化する中、アンドレイは白軍の敗北を予感していた。干渉軍も次第にシベリアから撤退を始めており、残された白軍は孤立しつつあった。

「アンドレイ、俺たちはもう持たない。これ以上ここにいても死ぬだけだ。」

ジョセフという仲間がそう言った。アンドレイも同感だった。

「日本に渡ろう。父の知り合いがいる。そこで新しい人生を始めるんだ。」

ジョセフの助けを借り、アンドレイは日本への亡命を決意した。途中、赤軍の追跡をかわしながらウラジオストクまでたどり着き、そこから日本の船に乗ることに成功した。


日本に到着したアンドレイは、戦争で失ったものの大きさを痛感した。だが、新天地での生活は彼に希望を与えた。彼は自分の語学力を活かし、貿易や通訳の仕事を始めることができた。

「もう銃を握ることはないだろう。だが、俺の中の戦争は消えない。」

アンドレイは心の中でそう呟きながら、シベリアの雪原に残してきた仲間たちのことを思い続けていた。

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