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これまでのあらすじ
実力の伴わない正義感を空回りさせた俺は、結果として家にも学校にも居場所を無くし、逃げる様に入った名も知らぬ神の祠で生まれ変わりを願った。果たしてそれは聞き入れられたのだが、俺が転生したのは剣と魔法の世界、その中で勇者と敵対する魔王の四天王。そして今正に勇者に倒されたばかりの魔神エボニアムだったのだ。
不滅という特性ですぐさま復活し、辛くも自分の国へと逃げ帰った俺。そこは魔族が治める腕力と権力がものを言う歪んだ国家。そんな中で虐げられていた人間の父娘に肩入れし、人間の待遇改善を模索していた魔族の若い政治家に肩入れし、どちらにもある程度の道筋は立てられはしたが、何故か自分の居場所を作る事は出来なかった。
国の中で自分の役割を見出せず、ふらふらと辺境を彷徨っている時、突然俺は何かの力に吸い込まれようとしているのに気付いた。そして俺は抵抗しなかった。誰かに呼んで貰っているという事実が、心が隙間だらけだった俺にはむしろ魅力的だった。そうして俺は自分を呼ぶ力に呼応し、自らそこに現れた空間の裂け目へと身を投じたので有った。