融 解
ゆっくりと溶けてゆく氷のようにわたしたちひとつになれたなら
【短歌十首連作】
水底に潜みし我の前に君は一筋の光となり現る
亡骸を瓶の棺で葬送す辺り一面の枯葉に寄せて
遠ざかる記憶の澱を閉じ込める存在意義の確認作業
着飾った言葉の羅列では足りぬ 貴方を前に 自我など不要
いつからか 君を想うと苦しくて 逃れた先の眠れない夜
目的は 果たされたのにこれ以上 何を望むことがあっただろう
星のない夜は 画面超しに君の歌声沁みて おやすみなさい
眠れない夜は やさしくふれていてほしい 他には なにもいらない
ゆっくりと 溶けてゆく氷のように わたしたち ひとつになれたなら
からっぽの心 抱えたままの ふたりを閉じ込めた 透きとおる夏
2024.盛夏