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第4話 皇国との戦い2

「第一陣の騎馬隊は全滅か……あれが噂に聞く魔族の火魔法か」

「左様のようで。火属性のみと思われますが魔法耐性の鎧も通用いたしません」


 我らとは全く違う生き物、魔族。その戦法も異質。ここに来るまでにも、引いたと思えば戦闘を仕掛け、また引いていった。姿を見せる事もなく、どこからともなく攻撃を仕掛けてくる。


「これだけ広い戦場だ。左右に分散させて前進させろ。第二陣にはチャリオットと魔術師部隊も参加させろ」

「はっ!」


 ここは戦場を見渡せる高台に位置する。敵陣後方に広がる森の彼方には、目標とする魔王城が小さく見えている。

 森手前にある前線の砦を制圧し、あの魔王城さえ落とせば我らの勝ちだ。魔族め、我らの力を思い知るがいい。


 第二陣は攻撃の主力である、馬に引かせた戦闘馬車のチャリオットと魔術師部隊を送り出す。その後も同じような部隊を繰り返し送り出し波状攻撃を仕掛ける。この猛攻に屈しない軍はいない。


 予定通り第二陣を送り出して、しばらくした後、第三陣と四陣で控えていた部隊が攻撃を受けた。敵陣からこれほど離れた部隊に対して攻撃だと。


「馬鹿な。どこからの攻撃だ」

「そ、空であります。空から魔族の火魔法が!」


 何を言っているのだ! いや、魔族の王はヴァンパイア。空飛ぶモンスター。魔王自ら攻め込んできたのか?! それならば返り討ちにしてやる。


「全軍で空に向かって、魔法攻撃を行なえ!」


 魔王がどこを飛んでいるのかも分からず、狙いを付けず全方位に攻撃する。だがその上空の射程外からの魔法攻撃が続く。どういうことだ!! 

 魔法は射程外になると、魔素に戻り霧散する。その距離は術者にもよるが、こちらは一級魔術師を配置している。相手も魔法が届く範囲でしか攻撃できないはずだ!


 この高台の陣に対しても攻撃が降り注できた。戦場となる前方の平原と最後方のこの陣地。ヴァンパイアと言えど、たった一人でこんな広範囲に攻撃できるものなのか!

 戦場の軍が混乱状態になり、兵は右往左往するばかりだ。


「全軍に撤退命令を出せ。後方の川向こうの森まで撤退せよ」


 ここは一旦退き、体勢を立て直さねば全滅する。こんな戦場は初めてだ。これが魔族というものなのか。初めて恐怖を感じた。



「我が軍はどうなった……」

「残った兵は三万二千人。ほぼ半壊状態です」

「だ、だが。まだ三万以上の兵がいるではないか。サザンドラ将軍、まだ戦闘継続は可能です」


 側近はそう言うが、一度に一万二千人もの兵を失って、まだ戦えるのか? 軍の再編成を進めてはいるが、それが整うまでに五日は掛かるだろう。その間に攻められればどうなる。


「天子様は、魔族から我が領地を取り戻せとおしゃっておりました。その命に背くことはできません」


 確かにそうだ。このままおめおめと帝都に戻る事はできない。姉上にも申し訳がたたん。

 だが、たった一戦で我が軍の四分の一以上を死傷させた魔族軍に、再度挑んで太刀打ちできるのか。


「将軍様。現在、暗部の者を選抜させております。前線の砦に潜り込ませ、内部から城門を開けるようにいたしましょう」

「お前は、天子様から頂いた警護部隊の隊長……」

「我らは、常より特殊任務を行なっております。此度は天子様よりその力を、将軍様にお貸しするようにと命を受けています」


 天子様直属の特殊部隊と言う事か。ならばこの者達に頼る他あるまい。


「再編成の終わる五日後の夜中に、前線にある砦に潜り込みます。日の出と共に城攻めしていただきたい」

「よし分かった。お前に任せよう」


 そして五日後。選抜された精鋭の五名が、暗闇に紛れて敵陣へと向かった。


 日の出直後に、敵の城より狼煙が上がり予定通り敵砦の城門が開いた。あの者達が上手くやってくれたか、これならやれるぞ。用意していた突撃部隊に号令を出す。


「全軍突撃せよ。敵は少数である、魔族を蹂躙(じゅうりん)せよ」


 敵陣からの魔法攻撃は続いているが、三方より一気に進撃し敵の砦を落とす。あそこにいる敵主力を殲滅できれば、その後の魔王城制圧など容易な事だ。

 犠牲をいとわず、全軍をもって砦に攻め込ませる。


 魔法攻撃が荒れ狂う中、敵の砦内に侵入できたようだな。城門さえ突破できれば我が軍の物量をもってすれば容易いか。砦の城壁に我が皇国旗がはためいている。これで、天子様のお言葉通りの戦果があげられるぞ。


「報告! 砦内に敵兵はおらず! 物資、兵器も一切なく……」


 その直後、前方の砦が大爆発を起こした。

 その轟音と爆風がここまで押し寄せる。何なのだ、何が起こった!? 砦があった場所には巨大な火柱と、地面に倒れる無数の兵の姿が広がっている。


 砦は消滅したものの敵からの攻撃は続き、生き残った兵までもが倒されていく。蹂躙、我が軍が蹂躙されている。


「貴様がこの軍の総大将か」


 声は空から聞こえてきた。そして五人の血を吸われて干からびた遺体が降ってきた。


「地上を這いずり回る虫けらどもの策略が、我に通ずるとでも思ったか」


 その者の声は直接頭に響いてくる、これは闇属性の魔法なのか。周辺にいた将校全てが空を仰ぐ。

 愕然とし空を見上げたその先には、黒い翼を持つ者がこちらを見下ろしている。


 そうか、あの砦自体が我らを引きつける罠。初めから我が軍は魔王の掌の上だったと……。


「神の子孫と名乗る皇国の天子に伝えよ。我が魔族軍の侵攻を止める事は不可能だ。帝都で首を洗っておけとな。まあ、お前達が帝都に帰れたらの話だがな」


 その者が両手を広げた瞬間、この場所は灰へと化していた。


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