第三話
数十年前のとある実験施設での出来事。
「あ~ぁ。使用制限来ちまったな。もう俺は戦えないのか~。」
俺は隣にいる自分と同じく、B.Sの使用制限を迎えた相棒セカンドに聞こえるように独り言を呟いていた。
ここは施設の中央エリア。コーヒーが飲み放題で、よく研究員が休憩がてらに来る場所である。その一角にあるベンチに2人で座っていた。
「いや、僕より先にデバイスを使っておいて、僕より後に使用制限が来た人がそれを言う?嫌味にしか聞こえないけど?」
相棒は銀髪のおかっぱ頭に茶色の瞳でこちらを睨んでいた。
「怒んなって!使用制限は体質によって異なるんだから、仕方ないだろ~」
「分かっているけどさ。僕が、20回で、ファーストが30回も使用できるなんて何か納得いかない」
セカンドは俺の昔からの友人であるがたまによく分からない所で張り合うことがある。ちなみに俺がファーストで、相棒がセカンドである。本名を知らない分けでは無いが、ここに来てからはコードネームで呼ぶことが習慣づいたせいである。
「さぁってと、休憩もこの辺にして博士の所にでも行くかなぁ~」
俺は重い腰を上げて、軽く背伸びをする。
新しいデバイス『シックス』を博士と構想を練っていたので、その続きでもやろうかなっと思っていた。
「ファーストはデバイスをいじれていいよね~。僕にはちんぷんかんぷんだよ」
セカンドもベンチから立ち上がりながらしゃべっていた。
「いやいや、俺からしてみれば後輩育成に力を入れられるセカンドがうらやましいよ」
「ああ、ファーストって昔から教えるの下手だよね。こないだの時なんてとりあえず、俺に打ち込んでこい!って感じだったもんね」
セカンドは昔から自分が出来ることを他人に教えるのが上手かった。なので、今は新しいデバイス所有者が出てくるように後輩の育成に力を入れてくれている。
じゃ、っと別れた二人は各々の目的の場所に向かう。
ファーストは博士がいるであろう、研究長室に向かった。
セカンドは訓練場に向かった。
研究長室に入ると、そこにはテーブルが4つほどあり、壁にはいくつものモニターが付けられ、沢山のモニターには武器の設計図やB.Sの設計図や説明が書かれていた。
そして、そのモニターを見ながら、ペンでモニターを直接触り、何かを書いている佐久田博士の姿があった。
年齢は53歳で、白髪交じりの黒髪の短髪。身長は166cmほどで細身の男性である。
「ファースト戻ったか。新しいデバイス「シックス」には「ファイブ」で成功したガンを遠距離のスナイプに変更しようと思うんだが、どう思う?」
モニターを弄っていた佐久田博士がファーストに向き直る。
「確かに遠距離型のデバイスは今まで無かったからいいかもしれないけど、俺はちょっと試したい事があるんだよね~」
ファーストはそう言うと、手持ちの小型ディスプレイをスワイプし、モニターの方に自分で描いたB.Sの一部機能の作成図を表示させた。
「ほう。これは………。何?駄目じゃ!これは危険すぎる!」
「お!作成図を見ただけで理解できるのはさすがだね~」
理解者がいて、喜ぶ場違いなファースト。
「何を喜んでおる!これは外部からエネルギーを抽出し、保存するもの。だが、そのエネルギーをどうせ、武器やB.Sに転用しようとしているのだろう?問題はそのエネルギーを抽出する先の話をしておるのだ!」
「お?話が早くて助かるね。転用方法と、エネルギーを抽出する相手まで分かるとは、流石だね~。俺が考えているこの設計図通りに物が出来れば暴発することは無いさ!」
そう言われ、改めてモニターを確認する佐久田博士。
「いや、やはり危険だ。もし、暴発したら大ケガを負うどころか、死人が出るぞ。」
「やっぱ、駄目か~。博士にはこれの転用先の武器を開発して、欲しかったんだけどね~。まぁ、シックスは遠距離系のデバイスで開発しますか!」
佐久田博士に否定され、流石に諦めたファーストは最初に博士が提案していた遠距離系のデバイスにシフトする。
「前に鬼をエネルギーに転換できないかの話をされた時に嫌な予感はしていたよ。」
佐久田博士はファーストの突拍子も無い話しにあきれながら、「シックス」の話し合いを行っていくのであった。
だが、話しがまとまりかけた時、警報音が施設中に鳴り響いた。
「な、何じゃ?」
『侵入者あり。侵入者あり。入り口エリア。入り口エリア』
博士が呟くとともに、機械音声で、侵入者と場所をアナウンスした。
『皆様、直ちに避難されたし。直ちに避難されたし。』
さらに機械音声で避難勧告も流れる。
そして、その音声は繰り返し続けるのであった。
「博士!侵入者は人か?鬼か?モニターに早く出してくれ!」
「わ、分かっとるわい!」
博士は後ろにある、テーブルにつき、慌てて、キーボードを操作し、いくつもあるモニターが全部各エリアの防犯カメラの映像に切り替わる。
ここは本来すべてのエリアの防犯カメラを写し出す場所であり、研究を行う場所では本来無かったのだが、長年本来の使い方をしなかったため、新たにタッチパネルの昨日を搭載し、研究室として、使うようになっていたのだった。
モニターには外と入り口エリアを挟む壁を壊して侵入する緑鬼の姿が写し出されていた。