第一話
投稿は不定期なので気長に待って頂ければ幸いです。
この世は鬼が蔓延っていた。
人類は鬼から身を守る為、地下に街を作る者、街の周りに巨大な壁を形成する者、大きな川を利用し街の周りを川で囲む者達により、何とか生き延びていた。
だが、そこで終わる人類ではない。
鬼たちに立ち向かう為にとある機械を開発した。B.Sである。
それにより、少しずつではあるが反撃を開始し始めていたのであった....
昔に栄えていたであろうとある街今は廃墟と化し、砂漠化が進んでいた。
今にも崩れそうな建物の中の瓦礫に身を隠すように潜む人影が5つほど存在していた。
「こちら巡回部隊、陸。巡回中に灰鬼発見。数3。指令室掃討してもよいか」
『こちらサクラ支部指令室。部隊陸の現在地を特定します。こちらの指示があるまで待機して下さい』
「了解。待機する」
隊長らしき30代の男性が他の隊員にハンドサインで待機の指示を出す。
巡回部隊の目的は鬼の位置確認と一般人の保護が主な目的である。鬼の討伐では無いのにはいくつか理由がある。まず、鬼を討伐するのに必要不可欠のB.Sの数が少なく、使うものはある程度の訓練が必要な事。
そして街の近くで鬼を討伐してしまうと、理由は分かっていないが、街の位置が鬼に分かってしまうのである。巨大な壁に囲われている街であれば、街の位置は鬼にはバレているので問題は無いが、部隊陸は地下の街が拠点の部隊であるので街の位置が鬼にバレてしまうと、防衛するのが難しいのである。逆に言えば、防衛力が弱いので地下に街を築いているのがサクラ支部である。と言っても灰鬼は知性が乏しいので、よく灰鬼同士で殺し合う事があるのでそこまで怯えなくてもいいのだが、倒し過ぎると強い鬼が現れる傾向があるので用心しているのである。
だが、そこでイレギュラーが起きた。
約50m先のに灰鬼が3体ほどうろついていたが、その灰鬼達の前に30代ぐらいの一般人と思わしき人物が出てきたのだ。
「隊長!一般人がいますよ!」
「分かっている。」
再び隊長が耳に手を当て、通信を再開する。
「こちら部隊陸。イレギュラーが発生した。一般人が鬼の前に出てしまった。突入の許可を」
「隊長!確認なんてしている時間はありません。自分行きます。」
一人の若者が瓦礫から飛び出して行った。
「あのバカ。仕方ない。『ちょっと、待ってくだ・・・』GO!」
通信を一方的に切り、隊長が指示を出しながら飛び出す。他の隊員も後ろから追うように瓦礫から飛び出す。
「チェンジ!」【チェンジ ナイト】
若者が走りながら叫ぶと手にしていた長方形の機械が起動し、若者が一瞬で特殊合金で出来たB.Sを着装した。そして手には身の丈ほどある長剣が両手で握られていた。
「「「「チェンジ」」」」 【チェンジ ナイト】【チェンジ ガーディアン】【チェンジ ガンナー】【チェンジ ガンナー】
他の隊員もそれぞれB.Sを起動し、それぞれ長剣、短銃、長銃、大楯を持ち一般人の下に走りだした。
「お、いるね~灰鬼ども。死して俺の糧となれ。チェンジ」【チェンジ リミットオーバー】
一般人が暢気な声で腰に巻いているベルトに手を当ててつぶやいた。するとその一般人がB.Sを着装した。
その一般人の右手には片手剣が握られていた。
だが、その横を若者が通り過ぎてこちらに気づき襲って来ようとしている灰鬼の一体を切りつけた。
「あれ?先客がいたのか」
あくまでも暢気な声を発する一般人だが、いつでも戦えるように身構えていた。
その横を短銃を二つ握り、撃ちながら一人の隊員が過ぎていく。
灰鬼の一体は若者が切り伏せて倒し、一体は短銃によりハチの巣にされ、最後の一体は後ろで構えていた長銃により頭を吹き飛ばされ、灰鬼は掃討された。
「手練れだな。」
一般人が部隊の動きを見て、そうつぶやくと、一般人?の首筋に長剣がそえられた。
「動くな。どこの街の所属だ」
B.Sには体のどこかに所属している部隊のマークが描かれている。なので、街同士である程度はマークを情報共有している。だが、その一般人のB.Sには何も描かれてはいなかった。さらに言うと、サクラ支部で使われているB.Sを着装するのに必要なデバイスは長方形のものだが、一般人が使ったデバイスはベルト型のものであった為、違う街の部隊であるのは明白である。だが、マークが無い為、かなり怪しい存在として部隊には思われていた。
すると、一般人はおとなしく、武器を腰に戻し、ゆっくりと両手を挙げた。
「頼むから、質問は場所を変えてからにしないか?」
「それもそうだな。ガンナーはこいつに銃を向けていろ。このまま連行する。だが、その前に装備を解除しろ」
隊長は一般人の提案に乗りつつ、警戒は怠らなかった。
「それは構わないが、俺を街に入れるなら、警報は切っとけよ」
その言葉で部隊全員が一般人に武器を向けた。
「貴様、今のはしゃれにならないぞ」
隊長が声をワントーン落とし、凄む。
「俺は人類に敵対するつもりは無いからな。それと、このデバイスは解除しないほうがいい。」
「鬼の言う事を鵜呑みにするとでも?」
隊長が長剣を首に当てたまま、隊員が一般人のベルト手を掛け、無理矢理外す。【アウト】
デバイスの電源が落ち、一般人は生身に戻った。
そう、一般人は鬼であると自白したのだ。だが、その一般人はどう見ても角はないし、肌が灰色ではない。灰鬼は肌が灰色で頭部に角が生えているので一目で分かるのだ。もし仮にこの人物が本当に鬼であれば、未だかつてない新情報である。もしそうであれば、鬼に敵対しているB.S持ちの鬼が存在しているということになるのだが...
「一様忠告したからな」
自称鬼の首筋に当てた長剣に少し力を入れ、軽く切りつける。すると、鬼である証拠の青い血が流れた。
「まじか」
「隊長!仕留めましょう」「隊長!発砲の許可を」「隊長離れて下さい」「隊長殺しましょう」
自称鬼のつぶやきをかき消すように部隊全員が叫ぶ。
『待つのじゃ!!』
全隊員の耳元から強制的に大声で怒鳴る年寄りの声が響いた。
「なぜダメなのですか。博士」
隊長も他の隊員と同じ意見だったのか、待ったの声に異議を唱えた。
『こちらに抵抗を示さない鬼は未だかつてないほど貴重なサンプルだ。』
「それでも危険を冒すよりかはマシかと」
『ならば、わしがおる仮拠点につれて来れば良いじゃろ』
「でもそこは、司令部でもあり、研究施設でもある重要な拠点です。」
サクラ支部では一般人がいる地下街を本拠点、鬼を討伐する部隊の拠点を仮拠点と呼んでいる。
『ならば、隊長格に渡している、鬼でも外すことが困難な手錠を使って拘束しなさい。その上で隊員が必ず三人を付ければ安全でしょう』
すると、通信からは30代ぐらいの女性の声がした。
「く、支部長の指示であれば仕方ない。これより、部隊陸。帰還する。」
そこで隊長は通信を切った。
他の隊員も通信の内容が聞こえていたので、渋々指示に従うしかなかった。
隊長が人型の鬼に手錠をする。
人型の鬼は抵抗をすることもなく、手錠をされ、部隊に連行されて行ったのだった。