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陰謀の城

 鳥の姿をした悪魔は、マーニを捕まえたままものすごい速さで飛び上がり、ぐんぐんとその姿を小さくしていった。マーニの悲鳴もどんどん遠ざかっていく。


「きゃああああ! マーニ! マーニ!」


 ランテは悲鳴を上げながら、必死にマーニを追いかける。唱もクリワも全速力で後を追った。


「ダメだ! すでに、おれの射程距離を超えちゃってる!」

「僕も射程圏外です!」


 大声で歌っていたTaiyoとKassyが悔しそうに言った。YAMAが顔をしかめて首を振る。


「もう、十メートル以上離れてしまってる……これではもう……」

「あああ、マーニ……マーニ……!」


 人目もはばからず、ランテはその場にへたり込んで泣き叫んだ。


「ごめん。おれ、全然悪魔に気づかなかった……」


 悲痛なランテの姿を見て、しょんぼりと肩を落とすTaiyoをYAMAが慰める。


「いや、あの形状なら鷲とかハヤブサとか……いずれにせよ、猛スピードで飛んできたんだろう。気づけないのは仕方ない」


 全員が絶望を感じていたが、唱だけは悪魔が飛び去った方向を見て確信を持っていた。


「皆さん、城へ行きましょう」


 一瞬の間の後、皆、口々に騒ぎ出す。


「おいおい、ちょっと待てよ。それより、マーニちゃん探さねぇと」

「ショウ様……まさか、まさか、マーニを……」


「……あっ、そうか。ショウ、そういうことか」


 YAMAだけが唱の意図に気づいたようだった。


「みんな、落ち着いてくれ。唱の言うことは正しい。たぶん、マーニちゃんが連れて行かれた先は城だ」

「……ショウ様、ヤマさん。なぜそんなことがわかるんですか?」


 ランテが妙に静かな声で聞いた。


 うっ。ランテさん、めっちゃ怖……


 変なことを口にしようもんならただじゃおかない、というオーラを身にまとったランテに唱はビクビクしたが、YAMAは全く気付かない様子だった。


「まずは一つ。あの悪魔が向かった方向が、オルケスの方角だ」


「あ……確かにそうですね」

「そうだけどよ、たまたまってことだってあり得るぜ?」


 いぶかし気なRYU-Jinに対し、YAMAが首を振る。


「ああ、いつもだったら、おれもそう考えるさ。だが、そう思う理由はもう一つある。そうだよな、ショウ?」


 促されて、唱は続きを口にした。


「マーニは、悪魔が喰うために連れ去ったんじゃない。たぶん、魔王が悪魔を操ってさらったんです」


 しかし、まだ全員腑に落ちない顔をしている。


「補足すると、おれ達が日ごろ目にしている悪魔と、あの鳥の悪魔は明らかに違ってた。みんな、今まで、悪魔があんな風に人を連れ去るところを見たことがあるか?」


「……? 確かに、ああいう風にさらったのはあんま見ない気するけど、ほらシフレー組のピアーだっけ? あいつとか、喰われたまんま悪魔走ってたよなぁ……って、ああっ、ランテちゃん、何かゴメン!睨むのやめて!」

「あと、それこそ、さっきのアイザッツさんもそうですよね……五匹くらいの悪魔に運ばれてましたよ」

「あ、でも……必ず食べられちゃってるね」


 YAMAがTaiyoを指さす。


「タイヨウ、当たり。そうなんだ。やつらは、まず喰うことから始める。運ぶとしたらその次、というか、喰いながらだ。それに対して、さっきの悪魔はマーニちゃんを足で捕まえた。もし、飛びながら喰うつもりだったら、口にくわえるだろう。マーニちゃん一人くわえられるくらいの大きさは優にあったからな。つまり、あの悪魔の目的は、マーニちゃんをさらうことにあったと見て間違いない」


「……ですが、それで魔王がさらったというのはどうしてなんでしょうか……?」


 さっきよりは落ち着いた様子のランテが尋ねる。すぐに喰われることはないと聞いて、少しほっとしたのだろう。なんとなく唱は胸をなでおろした。


「ああ。悪魔と言うのは、ほとんど知性のない、生き物を見れば喰うことしか頭にないモノだ。そんなやつに、喰わないよう言うことを聞かせられる存在なんて何人もいるわけない。おのずと絞られる」


「つまり、魔王だっていうことか」

「やっぱり、本当に魔王は城にいるってことなんだね……」


 ようやくみんな納得すると、突然ランテが立ち上がった。


「そうであれば急がないと! 城へ行きます!」


 そう言うなり、猛然と走り出した。


「ちょっと待ってください、ランテさん! 一旦落ち着いてください!」


 慌てて唱達も追いかけ、ランテを腕ずくで止めようとした。


「離してください! マーニを、マーニを助けに行くんです!」

「だめです、ランテさん! 何の準備もせずに行ったら危ないですよ!」


 自分を止めようとする男達の手を、ランテはすごい力で振り払った。皆、地面にごろごろとひっくり返る。


「こんなことをしているうちに、マーニが! マーニが殺されてしまうかもしれないんですよ? 行かせてください!」


 いつもは穏やかで優し気なランテだけに、その怒り具合はすさまじく、大の男が怖気づくほどだった。


「大丈夫だ。マーニちゃんはすぐ殺されたりしない。だからランテちゃん、落ち着いて話を聞いて」


 転がっていたYAMAは起き上がると、諭すような口調で言う。


「どうして? どうしてそんなことがわかるのですか?」


 ランテはまたぼろぼろと泣き出した。唱はなだめるように言う。


「もし、魔王がマーニを殺すつもりなら、最初から悪魔に食わせてたはずです。わざわざ連れ去ったのは、マーニが必要だったからですよ」


 ランテが泣き止んだ。


「なぜマーニが……?」


 唱は、唇を噛んだ。


「たぶん……マーニの力だと思います……」


 ランテがはっとした。YAMAもうなずく。


「タイミングから言っても、マーニちゃんの力を欲したと考えるのが自然だ。まぁ、どうやって知ったのかが不明だけどな」


 唱はうなずくと、改めて全員を見回して言った。


「それでは、城に乗り込むため作戦を立てましょう。マーニを助け、魔王を倒すために」


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