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見捨てられた村

「なるほどね! うん、わかるよ」


 マーニの話を聞いたTaiyoが、にこやかにうなずいた。


「えっ、タイヨウさん、本当ですか……?」


 てっきりダメ出しされるのではと思っていた唱は拍子抜けした。Taiyoがにこにこと続ける。


「全然あるあるだよ。おれの、悪魔がいるのが何となくわかるのと一緒!」

「はぁ、そんなもんですか……」


 凡人の唱には全く理解ができなかったが、共に第六感的なモノを持つ者同士、Taiyoとマーニはすっか

り打ち解けているようだ。


「そっか。マーニちゃんは歌呼だったんだね。今は歌えなくなっちゃって、つまんないでしょ。おれもマーニちゃんの歌うとこ、聴きたいな。早く悪魔倒してこの世界元に戻して、一緒に歌おうね」

「うん! タイヨウさん、約束よ」


 自分の話を理解してもらえたので、マーニはすっかりご機嫌だ。


 その横でRYU-Jin達が首をかしげている。


「でもさ、マーニちゃんを疑うわけじゃねーんだけど、空が晴れたのはどう説明すりゃいいんだ? マジでみんな見たよな?」


「はい。僕も見ました。本物の青空だと思っていましたけど……」


「ああ、おれも見た。仮にもし、光の巫女の力がイカサマだって言うんなら、幻覚でも見せられてたってことになるな」


「あんな大勢をいっぺんに騙せるもんかぁ? それに国外でも同じことやってるんだぜ? 幻覚見せられてたなんて、そっちの方が現実的じゃねーっていうか……って、違! だから疑ってるわけじゃねーんだって。ランテちゃん、やめて、そんな目で見ないで!」


 ハルプ村での出来事を思い出しているうちに、唱はふと思い出した。


「そういえば、全然関係ないんですけど、帰る時、大量の袋みたいなものを運んでませんでしたっけ……」


「ああ、ありゃ見返りの品だろ? 討伐隊は、ボランティアはやらないらしいぜ」

「ハルプ村は、確か、近くの鉱脈で貴重な宝石が取れるらしいから、袋の中身はそれだろうな」


「国内の災害なのに、お金取るんですね……」


 唱が顔をしかめると、YAMAもうなずく。


「国外の場合は、あれの比じゃないそうだ。やたらと金を取る悪魔討伐に、イカサマの可能性がある光の巫女――この前の新聞記者の主張も、あながち虚言じゃないのかもな。――おっと、これ以上はやめよう。どこで誰が聞いているかわからない」


 気を取り直して、特訓を開始しようとしたとき、ひどく焦った様子の若い男が馬に乗って通りかかった。


「あ! もしかして、音楽騎士の方ですよね?」


 彼は、唱たちの腕章を見るなり馬から飛び降りて、地面にひれ伏した。


「お願いです! 私の村を助けてください。悪魔が……悪魔が出たんです」

「マジか! 場所はどこだ。どのくらい出た?」

「ペトラン村です。悪魔の数は……よ、よくわかりませんが、何十匹と……」


 唱とクリワは顔を見合わせた。


「よし、すぐ行こう。ペトラン村は、この前のハルプ村と城を挟んでちょうど反対側に位置するな。さほど遠くない」

「おれたちだけで大丈夫ですかね。ちょうど今は討伐隊もいることだし、声をかけてみた方がよくないですか?」


 唱の言葉に、男はぱっと顔を上げた。


「実は今、城の方まで行ってお願いしてきたんですが、国王の御意志ではないから、討伐隊は出せないと……」


 そう言って涙をこぼす男を見て、RYU-Jinは舌打ちをした。


「ちっ。たく、何が討伐隊だよ。マジで腐ってんな」


 唱は驚いて聞き返した。


「ちょっと待ってください。国内で被害が出てるのに討伐隊が出せないって……意味わかんないんですが?」


 クリワの四人が、顔を曇らせた。


「実は、前も似たようなことがあって、僕たちも頼んでみたことがあったんですが、断られたんです」

「さっき言っただろう。討伐隊は、見返りが約束されない場合は出さない、ということだと思う」


 唱は絶句した。


「そんなバカな……何が討伐隊なんですか……」


 Taiyoが唱を慰めるように言う。


「ショウ、仕方ないよ。自分の力でどうにもできないことを嘆いてもつらいだけだ。おれ達だけで何とかすることを考えよう」

「そういえば、今日はシフレー組がこの辺りの森で調査活動をしているはずだ。彼らに応援を頼もう」

「よっしゃ、わかった。おれが探しに行ってくる。みんな、先に行っててくれ」


 RYU-Jinは言うなり、馬に飛び乗った。


 唱は、悔しい思いをかみしめながら、カルに乗った。


「ランテさん、マーニ。今から悪魔退治に行ってきます。危ないのでこの辺りで待っててください」


 二人に声をかけると、マーニが憤慨したように言った。


「あたし達も行くわ! 今日から一緒に行くって言ったじゃない」


「いや、今日は光の巫女も来ないし、危ないだけだよ?」


 しかし、唱の言葉などお構いなく、ランテとマーニはアジの背に乗り込んでいる。


「私たちも、何かお役に立てることはあるかもしれません。村が悪魔に襲われた経験はありますから」


 唱たちのやり取りを見ていたYAMAが渋々といった顔でうなずいた。


「よし、わかった。ここで議論している時間が惜しい。但し、おれ達に二人を守り切る余裕があるかはわからない。十分に気を付けて」


 そうして、唱たちはペトラン村に向かった。


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