騎士達の出会い
「皆さん、お待たせしました。集まってください」
試験終了後、一時間ほど待たされたのちに、再びクリワが前に登場した。Taiyoの呼びかけに、皆、ぞろぞろと集まってくる。
「これから組分けを発表します。今回集まってくれた五十二名を、四つに分けました。では発表の前に、この組分けの目的とか、各組の役割なんかを説明します」
Taiyoの後、YAMAが話し出す。
「組の役割は二種類ある。一つは守備型の組。これは、自国の警備や、研究のために悪魔を調査したり捕獲する組。
もう一つは攻撃型の組。こっちは軍に所属して、実際に悪魔を討伐する組だ。遠征なんかにも行く。
組分けは、各組に必要とされる能力で分けている。基本的に、強い力を持っている人中心に組分けしたと思ってくれ」
なるほど。そうなると、おれとフオゴさんは悪魔討伐の方になるんだろうな。軍に所属するのか、嫌だな……
説明から察しがついた唱は、先のことを考えて少し憂鬱になった。それに説明から言って、うっかりリーダーになりそうな気がする。あまり前に出るタイプではない唱にとっては、不安しかなかった。
「そんなの、フオゴさんの組がいいに決まってるじゃねえか」
「なれなかったら、むしろ守備型の組の方がいいな」
周囲の話し声が聞こえてきて、唱はますます落ち込んだ。この分だと、組をまとめられる気がしない。
Kassyが声高らかに言う。
「では、組分け発表します。名前を呼ばれたら、頭領の騎士の後ろに並んでいってください。――守備型第一組、頭領はシフレー」
悪魔を凍らせる女性の組だ。彼女の名前の後、次々に名前が呼ばれていき、総勢十二名の組となった。
「次、守備型第二組、頭領はペザン」
こちらは十三名の組となった。
残り二十七人か。半々で分けるのかな。おれ、三人くらいでも良いんだけど……
虫のいいことを考えていた唱だったが、聞こえてきたのは意外な結果だった。
「では続いて、攻撃型の組です。ショウ君一名を除く二十六名は全員フオゴ組となります。以上」
わっと歓声が沸いた。
「やった!」
「天国と地獄の二択だったよな、良かった~」
「冷や冷やしたぜ」
「つーか、何あいつ、独りぼっち?」
残っていた音楽騎士たちは口々に言いあい、嬉しそうにフオゴの後ろに並んでいった。
ぽつんと、唱は一人残された。
え? あれ? おれは? どうするの? なんで?
状況がよく呑み込めず、唱は呆然と立ち尽くした。
「では、フオゴ組の人は、早速軍の方に移動してもらいます。今日から遠征があるんで、一緒に行くことになると思います。ではこっちに」
Kassyが言うと、フオゴ組となった音楽騎士達はぞろぞろと歩き出し、庭から出ていった。
目の前の状況を理解できず突っ立っていると、いきなり肩をがしっとつかまれた。
「ショウちゃんは、こっちな」
RYU-Jinだった。
「えっ? こっちって、どっち、ですか……?」
戸惑う唱に、RYU-Jinはにやっと笑った。
「おれ達と同じ組ってことだよ。ショウちゃん、転生者だろ?」
「あっ……やっぱ、わかってたんですね……」
「目が合った時にすぐわかったよ。見るからに日本人だからな」
YAMAもやってきて、にやっと笑う。
「僕たちも、悪魔を倒せる騎士を一人入れたかったんですよ。だから、今回の試験でメンバーを探していたんです」
戻ってきたKassyも言う。改めて彼が話しているところをよく聞くと、かなりの早口だ。クリワの歌には、高速ラップがあったりするから、当然なのかもしれないが。
唱は一気にほっとした。かえって、組のリーダーなんかにならず良かった。
「よ、良かった……さっき、自分一人残されたとき、失格なのかなって思って……皆さん、よろしくお願いします」
「よろしく」
クリワの四人が全員集まって、唱に代わる代わる握手した。
「でも、他のみんなの組とは何か違うんですか? 人数も全然少ないし……」
唱の疑問に、YAMAとTaiyoが穏やかに答える。
「うん。おれ達の目的は、悪魔の秘密を暴くことなんだ。悪魔という存在は何なのか、弱点は歌と言うけれど、どんな歌が最も効果的なのか、とかね」
「それで、悪魔を倒すための曲を作りたいんだ。ミュージシャンだからね」
唱は、嬉しくなった。
「それだったら、おれもお手伝いできると思います。歌によって効果に違いがあることもわかりましたから!」
「だから『遠くへ』だったんですか?」
「はい。色々歌ってみましたけど、今のところ、『遠くへ』が一番威力ありました」
Kassyの問いに唱が答えると、RYU-JinとYAMAは嬉しそうに言った。
「それは嬉しいよなぁ。おれ達の曲にそんな力があるなんてな」
「ちょっと感動したよな。自分たちの曲で悪魔が消える瞬間」
会話を聞いて、唱は安堵した。
「あ、あの、おれのあんな歌い方でも、わかってくださったんですね」
「当り前だろ。作ったの、おれ達だぜぇ? てゆーか、正確にはタイヨウだけど。なぁ?」
RYU-Jinに声をかけられたTaiyoはきょとんとした。
「あれ、『遠くへ』だったの? わぁ、そうなんだ。嬉しい。ありがとう!」
満面の笑みのTaiyoだったが、唱は全力で声に出さずに突っ込んだ。
いや、全然わかってないじゃん!




