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異世界に来たる四騎士

 Create the World。


 人気の男性四人組ロックバンドである。通称、クリワ。


 ドラム一人、ベース一人、ギター兼ボーカル一人、ラップボーカル一人で構成されている、ツインボーカルのバンドだ。


 彼らは滅多にテレビには出ない。たまに、動画サイトでミュージックビデオを配信したり、SNSで新曲やライブの告知動画を流す程度である。


 あまり頻繁にメディアに出るわけではないのに人気が出たのには理由があり、多くの人気アニメやゲームの主題歌となっているからだ。


 彼らの作る楽曲は、そのシーンがありありと目に浮かぶほど作品のイメージにぴったりと寄り添っており、物語をより深みのあるものにする。そのため、作家や制作会社の方から指名で主題歌をリクエストされることも多いらしい。


 唱も、好きなアニメの主題歌で耳にしたこともあるし、ストリーミングで好んで聴いている。スマホに落としている曲もある。あまり芸能人に熱狂するタイプではないが、好きなグループの一つだ。


 そのCreate the Worldが、なぜ、異世界に。

 なぜ、音楽騎士に。

 仕事はどうした。


 唱の頭の中は疑問でいっぱいだった。


 いや、まさか、まさかな。渋谷で偶然会うんだって確率低すぎるっていうのに、異世界で偶然会うなんておかしすぎるだろ。きっと人違いだ。ただのそっくりさんだ。きっとそうだ。


 真偽を確かめようとじろじろ見ていると、ベースの人のそっくりさん――本物なら名前はYAMAだ――と視線が合う。はっとすると、彼は唱に小さく微笑みを向けた。


 やばい。さっきので、完全に認識されている。


 バツが悪くなって、またうつむいた。


 服装こそこちらの世界になじむものを身に着けているが、やはり、どう見てもクリワだった。一人だけなら他人の空似とも言えようが、四人そろって全員激似ということは、いくら何でもないだろう。クリワも異世界転生していると考えた方がよっぽど合点がいく。


 もしだぞ。もし本当にクリワだったとしたら。同じ異世界転生者同士、何か力になってくれたりしないかな。……いや、バカバカ、向こうは芸能人だぞ。そんな都合のいい話があるわけ――


 そこで、唱は思い出した。


 不安がおありなら、男性四人組の音楽騎士を探してください。


 コモードは、そう言っていた。その四人組は、唱と似た雰囲気の外国人だとも。


 もしかして、コモードさんが言っていたのは、クリワのことだったのか?


 顔を上げると、ちょうど一人がしゃべるところだった。


「皆さん、こんにちは。おれ達は一次募集で合格した音楽騎士で、試験官を担当します。おれの名前はタイヨウです。ということで、皆さん。これから試験をするので、庭に出てください。試験といっても面談みたいなものだから安心してね」


 そう言って彼は人懐っこい笑顔を浮かべた。


 唱は確信した。彼は、間違いなくクリワのギター兼ボーカルであるTaiyoその人だ。唱のテンションも否応なく上がる。


 うわうわ、やっぱりタイヨウだ、すげー! そんでもって、意外。思ったより、穏やかでかわいらしい雰囲気の人なんだな。


 ゴリゴリのロックサウンドにも負けない迫力あるボーカルの印象から、もっとグイグイくるタイプの人かと思っていたが、今の話し方は少年のような朗らかさで、穏やかな印象だった。これなら、勇気を出して話しかけることもできそうだ。


 大広間の窓が開けられ、唱達は中庭に移動することになった。


 大勢が集められた庭は異様な空気に包まれている。

 無理もないだろう。これから、運命を共にする仲間を決めるのだから。


 唱は、空気に飲まれてしまって、群衆の端っこの方で、恐る恐る周囲の状況を眺めていた。


 今度は、さっき目が合ったYAMAが前に出てくる。


「では、四列に分かれて、おれ達の前に並んでくれ。どこに並んでも一緒だから焦らなくていいぞ」


 左から、クリワで一番ごつい印象を持つドラムのRYU-Jin、隣にTaiyo、YAMA、右に、黒髪メガネ男子のラップボーカルKassyが並び、それぞれ手を上げている。


 群衆はざわめきながら、うろうろと列に並び始めた。人波に押されているうちに、唱は一番左側のRYU-Jinの列に並ぶことになった。


 またYAMAが手を上げながら言う。


「列に並んだら、一人ずつ自己紹介と歌の力を説明してくれ。力によっては、実際にやってみてもらうこともあるから」


 実技……やっぱりあるのか。さっき、アイザッツさんが言ってたもんな。


 唱の予想通り、またガラスケースに入った悪魔がいくつか運ばれてきた。大きさはまちまちだが、どれも比較的小さい悪魔だ。これなら緊張していても何とかなるだろう。唱は胸をなでおろした。


「はい。それじゃ、一番目の人からどうぞ!」


 唱の並んだ列の前で、大きな野太い声が響き、組決め試験が始まった。


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