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謁見

 タラララッという太鼓をたたく音がした。同時に、ラッパのようなプォーという音が響く。


「国王陛下、コンテ・ルート・マイスター様である! 諸君、静粛に!」


 アイザッツが声高らかに言った。


 まるで舞台の幕が開くように、正面の分厚いカーテンがするすると開くと、右から白髪の老人が歩いてきた。

 七十代くらいだろうか、丸々とした顔に、髪の毛と同じ白いひげを蓄えているが、小太りで貫禄があり、年齢を感じさせないオーラがある。純白のローブの上に羽織った分厚い高価そうなマントが、いかにもそれっぽかった。


 うわ、ガチの王様って感じ。


 唱が感じたのと同様に、周囲もその気配に圧倒されているのが伝わってくる。


 老人は、中央にある金色の椅子の前に立つと、しわがれ声で言った。


「音楽騎士達よ。励むが良い」


 そして、くるりと体を返すと、そのまま戻り、カーテンの中へ姿を消した。


 え? そ、それだけ?


 あまりの短さに唱が拍子抜けしていると、周囲がざわめき始めた。


「すげぇ。あれが国王様か」「一言だけでも圧倒されるな」「うわ、おれ、故郷に帰ったら自慢しよ」


 あ、みんな、あれでいいんだ。


 肩透かしを食らったような気がして物足りない気持ちでいると、再びアイザッツが前に立った。


「国王陛下御自ら、諸君にお言葉を下さったのだぞ。この上ない栄誉なこととして、しかとその胸に刻み、陛下と、コンセール王国のためにその身を捧げて奉公せよ!」


 また、「おお!」という声が上がる。さっきより、更に高揚した声だ。


 唱は、やっぱりこのノリについていけず仕舞いだった。


 アイザッツは、またもぐるりと音楽騎士達を見回す。


「さて、では、これからのことを話そう。今から諸君らには、試験を受けてもらう」


 周囲がざわついた。知らない者も多かったのだろう。


「安心したまえ。何らかの歌の力を有しておれば失格になることなどない。知りたいのは、諸君がどんな力を持っているのか、ということだ」


 アイザッツが続ける。


「我らが敵、悪魔どもは通常の武力が効かないことは、諸君もよく知るところだろう。奴らの弱点は“音楽”、特に人の肉声、つまり“歌”だ。特定の歌に反応して、悪魔どもは動けなくなったり、弱体化したり、死に至ったりする。

 そしてもう一つわかっているのは、基本的に、一人の歌が悪魔に働きかける力は一種類のみだ。これでは、一人では戦えない。故に、諸君らには何人かで一つの組を作ってもらう」


 なるほど、と、唱は組決め試験を行う理由について納得した。


 今まで悪魔と戦いながら、一人では難しいと考えていたのだ。唱の歌が悪魔に効くまでに、少なくとも十数秒はかかる。その間に攻撃されたりしたら、それだけでおしまいだ。


 しかし、例えば、悪魔の動きを止めるような力がある音楽騎士と組めば、この問題は解決するのだった。


 ここでうまいこと、相性のよさそうな音楽騎士と組めるといいんだけど……


 そんなことを考えながら周囲をちらちらと見ていた時、アイザッツの横に人が立った。


「さて、未来ある諸君らの将来を私自身で決めたいのは山々だが、残念ながら、私はこの後出兵の準備がある。そこで、試験と組決めは彼らに任せようと思う。彼らは、私が信頼する音楽騎士たちだ。諸君らの力を最大限生かせる配属を決めてくれることであろう!」


 アイザッツの横に立ったのは、四人の若い男性だった。


 ん? あれ? あの人たち、見たことが……


「ああっ!!!」


 唱は、思わず大声で叫んだ。慌てて口をつぐんだが、全員が一斉に唱を見る。


「おい、貴様! 何か発言があるのか?」


 アイザッツに問われ、唱はぶんぶんと首を振った。


「違います! えっ、ええと、虫! その、今、虫が目の前を通って、それでびっくりして……」


 どっと笑い声が起こった。


「なんだよ、虫ごときで情けねぇ」「そんなんで悪魔と戦えんのか?」「おしっこちびんなよ」などと、次々に嘲笑の声が聞こえてくる。


 アイザッツも顔をしかめて言う。


「諸君らはもう国難を救う音楽騎士なのだ。その名誉に見合うだけの振る舞いを常に意識せよ。よいな」


「は、はい……すみませんでした……」


 とほほ、と唱はうつむいたが、改めて、前に立つ四人の男性をそっと盗み見た。


 唱は、彼らのことを知っていた。


 とはいえ、直接面識があるわけではない。


 彼らの姿を見たのは、スマホの画面の中だけなのだから。


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