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突然に

 Taiyoが動きを止めた悪魔に、フオゴが火をつける。Kassyが燃える悪魔を魔王に投げつける。もくろみ通り、魔王は少しずつ壁際に押されていった。


 唱も、部屋の奥の方から湧いて出る悪魔達を次々に消していく。


「ショウ様、さっきより、悪魔の数が減ってきたみたいですね……!」


 ランテがほっとしたように言い、唱も少し胸をなでおろした。


 これならいける。と思った時だった。


――こしゃくな人間どもよ。これで勝ったと思っているなら大間違いだ。


 魔王の声が聞こえた。

 その瞬間、周囲にいた悪魔が、皆、小さく震え始めた。


「な、なんだ?」


 震えていた悪魔達は、やがて、まるで強力な磁石に吸い寄せられるように、魔王の元へ飛んでいく。そして、魔王の前には闇の固まりができつつあった。


「おいおいおいおい、あんなでかい悪魔見たことないぞ?」


 ペザンのぎょっとした声がすると、YAMAが慌てたように叫んだ。


「ショウ、フオゴ! 悪魔が巨大化する前に少しでも悪魔を消すんだ!」


 しかし、YAMAに言われる前から唱もフオゴも必死に悪魔を消そうとしていた。だが、魔王も心得たもので、二人の射程距離圏外に悪魔を集めているのだった。戦いの中で計っていたのだろう。


 唱達の必死の攻撃は成す術なく、ついに、部屋中の悪魔は一つ残らず吸収され、巨大な悪魔が出来上がってしまった。


「ま、まじかよ。クソでけぇ!」


 祭壇室の天井いっぱいまでの高さがある胴体に、ドラム缶ほどの太さの長い首が二つと尻尾が一つついた、双頭のドラゴンの姿だった。天井部分で折られた首は、獲物を探すようにぐねぐねと動いている。


――さあ、お行き。人間どもを喰ってしまえ。


 魔王の声と共に、ドラゴンの二つの首は、のたうち回るようにしながら結界に襲い掛かった。しかし、結界に触れると、弾かれるように首がのけぞる。


「た、助かった。やつにも結界は効いてるぜ」


 RYU-Jinが安心したように言うと、ペザンとニシモが何やらジェスチャーでやり取りを始めた。


「ん? なんだ? ふんふん、わかった。――おい、ニシモの話だと、あんなでかいやつ相手したことないから、あんま結界に期待しないでくれ、だとよ!」

「えっ? お前、ニシモの言ってることわかんの?」


 RYU-Jinが驚くと、ペザンは得意げに胸を張った。


「ふっ、良いだろう。音楽騎士は、戦いが始まると会話ができなくなるから、ペザン組は身振り手振りで意思疎通ができるよう日頃から訓練してるんだ」


 YAMAとRYU-Jinは、めずらしくペザンに感心したようだった。


「なるほどな。ペザンにしては、なかなか考えてるじゃないか」

「まぁ、おれ達もアイコンタクトとかハンドサインとかしてるけどな」


 唱は、一旦歌を止めて言った。


「ニシモの結界がもっている間に、何とかしましょう。タイヨウさん、悪魔が攻撃してきたら、その瞬間に動きを止めてください。少しでも止めてもらえたら、おれとフオゴで攻撃します」

「了解。やってみるね」


 そうこう言っているうちに、また首が一つ向かってきた。結界にかじりつこうとした瞬間、Taiyoの歌が響き、悪魔は動きをぴたりと止めた。唱とフオゴは歌い始める。


「よっしゃ、これで行けるぜ! さぁ、もう一個の頭も来いやぁ!」


 RYU-Jinの嬉しそうな声が響いたが、唱の顔は険しかった。


 おかしいな。おれの力は悪魔の大きさに比例して時間がかかるから仕方ないとしても、フオゴの歌が効いてない。やっぱり大きいと時間がかかるのか……


 その時だった。後ろの方でうねうねと動いていた首の一つが方向を変え、吊るされているコモードに向かった。


「げっ、危ねぇ!」


 声と共にRYU-Jinが駆け出し、ばっくりと口を開けたドラゴンの首から、コモードを抱えて避けた。悪魔の首は、勢い余って壁に激突し、首が深くめり込んだ。


 全員、ぎょっとしてRYU-Jinを見守る。


「リュウ! 外は危険すぎる。早く戻ってこい!」


 YAMAは見たことがないほど慌てたように叫んだ。

 しかし、RYU-Jinはコモードを縛り付けている縄を何とか外そうとしている。


「リュウさん。危ないです! あたしのことなど放っておいて、早く皆さんのところに戻ってください!」


 コモードも必死な様子で叫んだが、RYU-Jinは笑った。


「何言ってんだよ。ここまで来て、オッサンのこと見捨てられるかっつーの」


 YAMAの必死な声が何度も響く。


「リュウ! 早く!」

「おうよ、悪魔のヤロウ、まだ壁にはまってるから大丈夫だ。くっそ。さっき落っこってた剣、持ってくるんだったな……」


 しかし、その時、唱達は信じられないものを見た。ドラゴンの尻尾が見る見るうちに頭に変わり、胴からぶちりともげたのだ。


 新しくできた首は、のたうち回りながら猛スピードでRYU-Jinに迫った。


「リュウ、後ろだ! 逃げろ!」

「え? んなバカな……」


 その瞬間。


 ドラゴンの首が、RYU-Jinとコモードを、その大きな口で喰ったのを唱は見た。


 え……?


 首は跳ねるように動くと、さっきまでRYU-Jinとコモードがいた場所には、何も無くなっていた。二人を喰った首は飛び跳ねながら移動し、再び胴体にくっついた。


「え? リュウ? おい、まさか――」


 YAMAが、腰が抜けたように床に座り込んだ。


 思わず、唱も歌をやめた。歌をやめて、RYU-Jinとコモードの姿を、部屋の中に探した。


 しかし、見当たらなかった。


 RYU-Jinとコモードは、この世界から消えてしまっていた。


「そ、そんな……」


 唱も呆然と、膝から崩れ落ちた。


 そして気づいた。いつの間にか、歌が止んでいることに。


「リュウ……?」


 気が付くと、唱の側に、Taiyoが立っていた。


 いつも、にこにこと穏やかに微笑んでいたTaiyoが、凍り付いた表情で、何度もRYU-Jinの名を呼んでいた。


 Taiyoは、泣いていた。


 祭壇室に、RYU-Jinの名を呼ぶ悲痛な声が、何度も何度も響いた。


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