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火蓋は切られた

 目の前で起きた出来事の惨たらしさに、唱達はしばらく言葉を失った。


「なんてやつだよ……あんな子供を……許せねぇ……」


 見たこともないほど怒りに満ちた顔で、RYU-Jinがタメラを助けようと駆け出す。しかし、すぐに悪魔に前をふさがれ、舌打ちしながら叫んだ。


「おい、誰でもいい、悪魔何とかしてくれ! あの子、早く助けないとやべぇぞ!」


――無駄よ、お兄さん。悪魔は次から次へと出てくるわ。いつまで経っても、あなたはあの子の元へはたどり着けない。


 いつの間にか、魔王が背後にいた。


「おい、てめーバカなのかよ。あの子、死んじまったら、お前の計画だってパーだろうが。とにかくあの子を助けねーと……」


 RYU-Jinは食って掛かったが、魔王はふんと鼻で笑い、


――心配はご無用よ。多少体が壊れてても、さっきみたいに操れば、いくらでも歌わせることができるわ。それに、どうしてもあの子が使えなくなったなら……。


と言って、ちらりと檻の方を見た。


 その瞬間、鬼のような形相でランテが猛然と魔王に向かって駆け出した。

 と、同時に、唱の目の前が真っ暗な闇で覆われる。反射的に唱は叫んでいた。


「ニシモ!」


 飛びかかってきた無数の悪魔達が、はじかれるようにして四方八方に飛んだ。ニシモの作った結界が、悪魔の攻撃を防いだのだ。その間に、唱はランテを羽交い絞めにして止める。


「全員、結界の中に! ランテさん、今はダメだ。もう少し、我慢してください!」


 後ろから抱きかかえられながら、ランテは顔を覆って床にくずおれた。


「ニシモ、ありがとう、助かった。――よし、これから、計画通りに戦おう。そして、頃合いを見計らって、マーニとコモードさん、それと光の巫女を助けます」


 唱は全員を見回した。YAMAとRYU-Jinがうなずく。


「よし、動けるおれ達が三人を助ける係だ。うまいとこ、やつの隙を作ってくれ」

「マーニは……檻の中です。私が鍵を開けますので、私も連れてってください」


 ランテが青ざめた顔で言った。


「よし、わかった。救出隊はおれとリュウとランテさん、そしてペザンだ」

「え、えっ? おれもいくのか? 結界の外に?」

「一人は、悪魔に対抗できるやつが必要だ。だから、外に出るまでは歌うな。喉を温存しろ」

「お……おう、任せろ。お、おれの力で、悪魔からお前らを守ってやるぜ」

「頼んだぜ、ペザン。いいとこ見せろよ」


 ペザンは明らかにひきつった顔をしながら胸を張った。


 唱は立ち上がると、大きく息を吸った。


「よし。魔王を倒すぞ」


 こうして、戦いの火蓋が切られた。


 魔王の言った通り、悪魔は湧いて出るように、四方八方から切れ目なくやってくる。だが、ニシモの結界が、それを防いでいた。


 唱、Taiyo、Kassy、フオゴは、それぞれ四方を向くように立って、悪魔に攻撃を繰り出していた。

 TaiyoとKassyは、協力して唱とフオゴの射程距離内に悪魔を送り込んでいる。

 上から降ってくる悪魔が紫色の炎で燃え、右から飛びかかってくる悪魔が光の粒に変わり昇っていく。


 しかし、なかなか終りは見えなかった。


「おい、ちっとも隙ができないようだぞ。こんなんじゃ、とても助けに行けないじゃないか」


 唱達とだいぶ距離を取ったところで一人優雅な表情を浮かべている魔王の姿を見ながら、ペザンが不安そうに言う。


「確かに、このままじゃ圧倒的に不利だな。やつを戦いに引っ張り出してみるか」


 YAMAが目くばせし、Kassyがうなずいた。


 すると、Kassyのラップに合わせて、フオゴが燃やした悪魔が宙を飛び、魔王に向かって落ちていった。さすがの魔王も、むっとした様子でそれを避ける。


「やっぱり、やつには物理攻撃が効くみたいだな。ようし、どんどん行ってやれ」


 Kassyは、続けざまに燃える悪魔を魔王に向かって投げ込んだ。


「食らいやがれ悪魔爆弾。あのクソ女、悪魔と一緒に燃えちまえ!」


 RYU-Jinが高らかに叫ぶ。


 Kassyの攻撃を巧みに避けていた魔王だったが、だんだんとその顔つきが険しくなった。


――わずらわしい人間どもめが。そんなに私と戦いたいなら、望みどおりにしてくれるわ。


 すると、美しかった顔が、突然ゴムが横に引っ張られたようにぐにょっと伸びた。あっと思う間もなく、巨大なヘドロの固まりのようになり、うぞうぞと動き始める。ヘドロからは、無数の腕や顔が不気味に伸びたり縮んだりしており、ぞっとする光景だった。


「うっわ、マジで引くわ。あれが正体なら、そりゃあ変身したくもなるよな」

「逆に、あんな美女に平然となってた神経にびっくりだよな」


 RYU-JinとYAMAが魔王に対して悪態をついているうちに、魔王はその形を奇妙に変形させていた。ヘドロが動き、腕があちこちに伸びる度、天井や壁に当たって石がガラガラと落ちてくる。


――思い知るがいい。愚かな人間たちよ。


 突然、ヘドロからものすごい速さで腕が無数に伸び、ニシモが作っている結界をつぶすように取り囲んだ。

 見上げたRYU-Jinが焦りの声を漏らす。


「げっ、大丈夫か?」


 ニシモは、歌ったまま首をぶんぶんと振り、腕で大きくバツ印を作った。


「おい、結界やべぇんじゃねーか? ショウ、フオゴ、やっぱり魔王の腕は消せねーのか?」

「ダメです。全然手ごたえないです!」

「おれも同じだ。普通の悪魔なら、とっくに燃えてるはずだが、こいつはびくともしない」


 Kassyが叫んだ。


「フオゴ君。手近な悪魔を燃やしてください! 悪魔爆弾ぶつけましょう」


 Kassyの提案通り、結界を取り囲んでいる腕に燃える悪魔をぶつけると、びっくりしたように腕が離れた。怒涛の高速ラップが、悪魔爆弾を魔王にどんどん打ち込んでいく。


 結界を取り囲んでいた魔王の腕が全て離れた。RYU-Jinの歓喜の声が飛ぶ。


「よーっしゃ。やったぜ! カッシーさすがのコントロール力!」


 この隙に、と、唱は話し出す。


「やはり、魔王には歌の力は通用しないですね」

「ああ。悪魔とは根本的に性質が違うようだ。ニシモの結界が魔王にも有効だったのは幸運だな。しかも、悪魔と違って、やつは実態がある。物理で攻撃されるとやばい」

「けど、逆に悪魔爆弾は効くわけだろ? もう、これに賭けるしかなくね?」


 YAMAがうなずいた。


「よし、シンプルだが、悪魔爆弾作戦でいこう。防御と攻撃の一体型で、何気に効率も良いしな。悪魔爆弾を投げつけて、やつを反対の壁際に追い込むんだ。そうしたら、マーニちゃん達を助けに行けるチャンスも作れるだろう」


 全員で顔を見合わせると、唱達は早速作戦に移った。


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