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Inosennto Actors Online〜その人形は誰がために〜  作者: 赤烏りぐ
序幕〜それは子供のように無邪気に〜
2/16

演者ないしは物語の傀儡

 朝6時、アラームが鳴るよりも早く目が覚めたので、とりあえずコーヒーを淹れるためにキッチンへ向かった。IAOが始まるのは7時なのでまだ1時間はあるのでゆっくりとしていようと思う。


 テレビを見ながら朝食を食べ終え、ちょうど7時になる頃なのでリンクマシンに座った。リンクマシンは大きなドームのついた椅子のような機械で、真っ白い見た目はまるで蚕の繭のようでもある。顔認証による本人確認をしたあと僕はリンクマシンに座り起動した。昨日のうちにゲームはしっかりダウンロードしたので、あとは始めるだけである。期待に胸を膨らませながら電脳世界へと意識を飛ばした。



【Innocent Actors Online】へようこそ


 ふと前を見ると、真っ白な空間の中にひとりの男性が立っていた。

事前情報によれば彼はキャラクターメイク用のAIであろう、その顔つきはまるで王族に仕える壮年の執事のようだ。彼はこちらに近づき、話しかけてきた。


 「Innocent Actors Onlineへようこそ、ここではもうひとりのあなたであるキャラクターを創ります。私はそのお手伝いをさせていただくAIの《SLー72》と申します。さっそくですがまずはお名前からお願い致します。」


 彼は僕の方へと1枚の半透明なパネルを飛ばしてみせた。そこにはプレイヤーネームを打ち込む欄があったのでそこに僕はタレイアと名前を入れた。僕の名前である樽崎遥の名前をもじったのだ、それにこの名前は神話に登場する喜劇の女神の名前でもある。そして名前を打ち込むとSL-72が声をかけてきた。


「タレイア様でよろしいですね。ではこれより種族及び、初期スキルの選択を行います。」


 そしてまた、僕の目の前に半透明のスクリーンが現れた。そこには人間やエルフなどのファンタジーではよくある名前の他に、甲人種や機人種など聞いたことの無いものまであった。さらに、注意書きも下の方に書いてあり、選んだ種族によってスタート地点が変わるそうだ。ゲーム進行の難易度に関わる可能性があるため、かなりしっかりと書かれている。さらにスキルも初期から4つ入手できるらしい、こちらも魔法関係や剣術、生産系のものまでいっぱい並んでる、正直どれも面白そうで選べない。そうしてスクリーンを眺めながら悩んでいるとSL-72が声をかけてきた。


「お悩みのようでしたら、こちらからいくつか質問をさせていただきタレイア様に合うと思われる種族を選ばせていただきます。スキルの方もランダムで選ぶことができるので、お悩みになられるのであればそちらを選択することもできますよ。選択する場合同意書にサインが必要となりますが、こちらでしかなれない種族やスキルも存在するのでメリットも存在します。これは現実世界で1週間までなら変更可能ですので一度試してみる、というのもどうでしょうか。」


「なるほど...悩む時間ももったいないし最初はそうしてみるか!」


 そう言うとキャラクター制作における同意書というものが出てきた。だいたいの内容としてはこのキャラクターメイクでゲームの進行に支障が出たとしても運営は責任を負いかねるとのこと、キャラクターの見た目も現実の僕の顔をスキャンしたデータから少しいじった見た目に勝手に決まること。その文章を読み、一番下の同意の欄にチェックを入れた。するとSL-72はどこからビンゴの抽選機のようなものを取り出した。


「同意が得られましたのでまずは、スキルを抽選させていただきます...はい、でましたね。タレイア様のスキルは魔力精製、鑑定、クラフト、格納庫ですね。ではスキルも選び終えたところで...ああ、忘れていましたタレイア様は特典当選者でしたね、こちらの特典はゲームを始めるとメールボックスに届いていますので受け取りをお忘れなきようお願いいたします。では、最後ですね」


 SL-72は真剣な顔で僕に問うた。


「あなたがこの世界で自分を表すなら何だと思いますか?」


 SL-72にいわれて僕はすぐに答えが出た、これは僕の役者としての持論と同じ答えだったからだ。僕は彼にこう言った。


「人形、いわゆるパペットですね。このIAOと言う世界、物語を作った人の傀儡です。僕はIAOの世界の住人になりに来たんだから。」


 こう告げるとSL-72は少し不思議そうな顔をして僕の顔をじっと見、そして僕に笑い返した。


「それはとても愉快です、この質問を答えたプレイヤーの多くは英雄や戦士、主人公になろうとするのですが人形とは、これはとても愉快ですね。あなたは強い英雄になろうという意思がないのですか?」


「この世界で僕に求められることならなんだってやります、それが英雄だろうがなんだろうが関係ありません。人に求められた役に為る、それが僕なんです。」


「世界に求められた自分を演じる..ですか、よろしいでしょうあなたにピッタリの種族が決まりました。では、これよりもうひとりのあなたがこの世界に生まれます、【Innocent Actors Online】をどうぞお楽しみください。」


 この言葉を最後に僕は唐突な眠気に襲われ、抗うまもなく意識が落ちていく...










               










 ふと気がつくと、空気が冷たく背中がなにかゴツゴツしたものに当たっていることに気づく。周りを確認しようとして、目の前を見るとそこには大きなドラゴンの顔面があった。そして僕はまた意識を落とした。


たれいあは めのまえが まっくらに なった

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