理想のヒーロー
初投稿です
「守るべき人々がいる限り、僕は悪をこの世から成敗する!」
先程まで戦っていた悪の大総統が爆発四散し、目の前に来たカメラに向かい僕は高らかに叫ぶ。ピリピリとした空気の中皆の意識はある一点へと向かっていた。
「はい、カットォォォォ!!!」
そして凝り固まった空気はこの一言で弛緩した。笑顔が好々爺的な印象の人物がこちらに近寄り、手を握ってきた。そして、強めのハグをしてからこちらに言葉をかけてくれた。
「良かったよ〜!樽崎くん!やっぱり君が理想のヒーローだよ!」
彼は柴原監督、特撮作品の名監督だ。彼の作る作品は子供から大人までを魅了し、世界にもその名が広まっているのだ。樽崎遙こと僕は、今年の春から始まる彼の作品の主役として選ばれたのだ。
「ありがとうございます監督、これも全部この作品に関わってくれた全ての人のおかげですよ。」
「何を言うんだ樽崎くんは!100年にひとりの逸材とまで呼ばれた君と仕事がしたくてここにいる皆はいるんだぞ!謙遜なんてしなくて良いんだよ。」
「まだまだ僕なんて新人俳優なんですよ、謙虚くらいがちょうどいいですよ。ということでお先に失礼しますね。」
監督やスタッフの方々そして他の演者の人に挨拶をしてから、打ち上げは後日関係者全員で行うとのことなので、現場近くのコンビニで夕飯を買い帰宅した。明日は待ちに待った【Innocent Actors Online】の正式リリース日なのだ。
2200年、AIと科学技術の発達により人間の脳を電脳世界にリンクさせることが可能となりこれまでの現代人の営みは大きく変化をした。特に家で電脳世界にリンクすることが可能となるリンクマシンが造られてからは、ゲームといえばVRゲームがメインとなった。少し時が経ち、2230年大手ゲーム会社であるスターメイク社から新作のVRオンラインRPGである【Innocent Actors Online】が発表された。
【Innocent Actors Online】(世間ではIAOやアクオンと略されている)《もうひとりの自分、もう一つのセカイ》がキャッチコピーの初のオンラインRPGとなっており、これまで実現されなかった電脳世界への多人数の同時接続が可能ということで世界中で話題となった。他にも、ベータ版の情報では人間とほぼ同じスペックのAIがNPCに搭載されていて、キャッチコピーよろしくもう一つの世界がそこにはあり、自分の言動次第で様々なストーリーが生まれるそうだ。
僕は生まれた環境と現在の職業のおかげであまりゲームというものにそこまで触れたことがなかったが、IAO披露のイベントに参加したことで少し興味が湧き事前抽選に応募したところ、運良く当選さらには特典でアイテムが貰えることもあり、このゲームをやろうと決めた。正直楽しみでしょうがない、今日がクランクアップだったこともあり、当分休みを貰えたので早いところ休んでサーバー開始とともにログインをしようと思う。
はじめまして赤烏りぐです!
初投稿につき、拙作ですがどうぞこれからもお付き合いください!
誤字脱字感想等いつでもお待ちしております。