モンスターたちとの会話にて
勇者まさとし(以下、ま)「今回もお疲れー。相変わらず俺たちを操作してるプレイヤー、ガサツだよな」
魔法使いゆかり(以下、ゆ)「今回も後先考えず僧侶のMPガンガン使ってたわね。すぐMPが無くなって、素手でモンスターに攻撃してた」
僧侶ひでゆき(以下、ひ)「たぶん、1ずつしかダメージ与えられていなかったんじゃない?プレイヤーの効率が悪いから、時間かけた割にはあまりレベル上がらなかったし。俺が早く何らかの攻撃呪文覚えれば少しは楽になるのに」
ま「僧侶は魔法使いが覚えないような面白い攻撃呪文覚える時あるしね。意外と中盤以降、魔法使いよりも魔法使いしてる可能性あるよ」
ゆ「そもそも魔法使いと僧侶って、実質一緒みたいなものよね。回復も蘇生も呪文を使う「魔法」だし。一応ゲームの幅を広げるために、攻撃特化魔法使いと補助特化魔法使いに分けてるのかしら」
ひ「今回のゲームは「古き良き」RPGっぽい設定だけど、比較的新しいRPGなんかだと、「魔法戦士」なんていうキャラクターもいるらしいね」
ゆ「それって、攻撃も魔法も使える点で「勇者」と被ってるんじゃない……?」
ま「その「魔法戦士」とやらが強くなったら、もしかしたら「勇者」いらなくなるかもな……」
?「いやー、お待たせしました!」
?「ちょっとシャワー浴びてて遅くなりました!」
ゆ「あ、「あばれくま」役の人と「ミニゴーレム」役の人だ。今回もお疲れさまです!」
あばれくま(以下、く)「このクマの着ぐるみ、めちゃくちゃリアルっすよね。でも通気性あんまり良くなくて、途中から汗が止まらなくなりました……」
ま「熱中症になったら危ないし、場合によっては保健指導が入って面倒くさいから、開発部の人に伝えておいたほうが良さそうですね」
ミニゴーレム(以下、ゴ)「このゴーレムの装備、見た目は良く出来てるように見えるのですが、繋ぎ目が固くて動きづらいし、少し重量があるのでめちゃくちゃ疲れるんですよ……」
ゆ「ゴーレム系のモンスターは、見た目の重厚さが大事ですものね。まだミニで良かったと思いますよ!これから冒険が進んだら普通のゴーレムはもちろん、ビッグゴーレムやメタルゴーレムなんかも出現するって聞いたわ。装備する人も大変そうね……」
ひ「しかも、モンスター業界は人手不足で大変って聞きましたよ?何体ものモンスターを同じ人がやってるんだとか」
く「そうなんです。僕も後々出てくるモンスターを兼任しています。見た目を作るのが難しいモンスターや、ビッグゴーレムみたいな演じるのが大変なモンスターほど、待遇が良くなるらしいですよ。馬に乗ってるモンスターなんかは、資格が必要になりますし」
ま「そんな裏の話を聞いちゃうと、モンスターを倒しまくってレベル上げするの忍びなくなるよ」
ゴ「モンスター業界は圧倒的に男性が多いのも特徴です。最初は求人情報で、クマの着ぐるみを着られるとか、可愛いスライムになれちゃうみたいなイメージを持ったのか、女性の方も来られることはあるのですが、いかんせん肉体労働なので、すぐにやめちゃいますね。だからなかなか出会いがなくて、独神の人が多いのもこの業界の悲しき部分です」
ゆ「たしかに、あんまり女性がモンスターを演じてるイメージないわね……。」
く「この業界で出世するためには、一般モンスターから中ボス、割と強いイベントボス、そして魔王の側近や隠しボスのように役職に付く必要があります。でも、意外と出世欲が無い人が多いのも特徴ですね」
ひ「まぁ、演じてて楽しいと感じてる人いるようですしね。倒され方が上手な人は、戦っててこっちも楽しいですもん」
ゴ「実は、隠しボスの方には一般モンスター役の人はほとんど見たことがありません。それは「隠し」だから見たことがないんじゃなくて、もう役職が上過ぎてなかなか会うことができないんです」
ま「普通の会社で、一般社員が社長は意外と会えるものの、執行取締役みたいな役職の方にはなかなか会えないみたいなものか」
く「まぁ、俺やミニゴーレム役のこの人は、あんまり出世欲無いから、実際見た所でそんなに驚かないと思うし、そもそも気付かないかもしれないですけど(笑)」
ゴ「そうそう。掃除のおじさんかと思ったら、実は社長さんでした!みたいな感じね」
ゆ「でもモンスター業界は人手不足なんでしょう?意外と隠しボスの人も、そこらへんのモンスターを兼任してるかもしれませんよ?たとえば、一般モンスターの人がちゃーんと仕事をしてるか監視してるとか……!」
く「え……、そんなわけ……」
ゴ「でも、ひでゆきさんが言ってたみたいに、さっきやたらと倒され方が上手い人がいたような。あれは普通の人では出来ない……」
ま「これはワンチャン見られてる可能性ありますね(笑)」
ピロリーン。
く「よ、よーし。ちょっと本気で演じますかね……!」
ゴ「やればできるところ、みせてやろうかね……!」
ひ「実は出世欲あるんじゃない?この人たち」