再びレベル上げの日々にて
勇者まさとし(以下、ま)「定期的に訪れる、「レベル上げの日々」が来ちゃったな……」
魔法使いゆかり(以下、ゆ)「一歩橋を渡った先とか、次の街を境にとかで、急に敵が強くなるから仕方ないんじゃない?」
ま「そろそろ回復役がパーティーに加わらないとキツイんじゃないのか? 何回死んだよ? 今回」
ゆ「教会に行き過ぎて、近くの街の神父ちょっとニヤついてたし、生き返らせる呪文唱えるときもちょっとおふざけ入れてたわね」
ま「今回の敵キャラクター、毒を使うやつが多くて毒消し草もたくさん食べたな。相変わらず「草」のまま食べないといけないから、超苦かった……」
ゆ「少なくともレベル上げに効率良い場所では無かったわね……。「のろいぞんび」から何回毒を浴びせられたことか」
のろいぞんび役の人(以下、の)「毒の息吐きすぎて、呼吸困難なると思いましたわ。息で毒浴びるなんて、どんだけ至近距離で戦ってる設定なんだよ、って思いながら頑張って吐いてました」
ま「でも、なかなか様になってましたよ! もはや本物のゾンビみたいでした!」
ゆ「なんか、喜んでいいかどうか微妙な褒め方ねそれ」
の「いやぁ、そうですかぁ? 最初は「ゾンビの役かぁ……」って思いましたが、やってみるものですね。次第に熱が入ってきて、ゲーム内では一切表示されないのにゾンビっぽい声出してみたりとか、色々工夫するようになりました。ゾンビ映画のゾンビ役の人の気持ちが分かった気がします」
ゆ「すごい喜んでるこの人」
ま「攻撃のターンが交互に来るのも、なかなか気まずい所ではあるよな。戦闘なんだから普通ならもっとこう、入り乱れるはずであるところを、律儀にターン制でやってるんだから」
ゆ「回復道具とか使うとき、相手が待ってるのもなかなかだと思うわよ。私たちが毒消し草食べ終わるのを待っててくれるんだもの」
の「我々もその間何をしてれば良いのか分からないので、とりあえずそれぞれのモンスター特有の動きをずっとしています。だってその間もカメラは回ってますからね。気を抜くとすぐに怒られちゃいます」
ま「あと、同じモンスターが複数体出てきた時、それがAなのかBなのか分からなくなる時ある。たまに、ウィンドウには「Aに攻撃した」って表示されるけど実際にはBに攻撃してる時あるのはプレイヤーには内緒だね(笑)」
ゆ「たまに同じモンスターが3〜4体くらい一回で出てくるもんね。同じ動きするし。そういえば、私たちが街で回復してる時なんかはなにしてるの?」
の「交代でトイレに行ったりご飯食べたりしています。モンスター業界でも定期的に労基が調査に入りますから、そこらへんはきっちりしないと指導が入るんですよ。昔に比べると随分ホワイトになりました。でも、たまには残業もしないと生活が潤わないですけどね」
ま「モンスターたちは入れ替わりでトイレに行けるのか、羨ましいな。冒険者は常にカメラが向けられてるから、我慢してる顔もあんまり出せないから辛いのよ」
ゆ「静止してる時でも私たちが小刻みに動いてるのは、全部が全部仕様じゃなくて、たまにトイレを我慢している時があるのよね」
ま「ま、プレイヤーにはそんなことまでバレてないと思うけどね」
の「あんまりそういうこと言わないほうがいいですよぉ? 誰が聞いてるか分かりませんから。たとえば、これを文章にして書いて、世の中に公開してる人がいるかもしれませんし」
ま「そんなことあるわけ……、いや、心当たりがあるな……。この前そういうインタビュアーからインタビューを受けたような……」
ゆ「考えすぎよ! 電源オフの世界は誰にも知られてないんだから!」
ピロリーン。
ま「始まったか。まぁ、しばらくはレベル上げかな」
の「次はちょっとだけ、毒の息を吐く動きを変えてみるので楽しみにしててね!」
ゆ「随分楽しそうね」