7回目 手出しできる範囲が減っても、勝手にやってくれるならその方が楽
このゲーム、税率が高いと、人口が減る。
また、時間とともに生産力が落ちる。
結果、収支が減っていく。
これは、民生というものが設定されているからだ。
民生とは、民間における生産。
つまり、政府や政治によらない部分になる。
ここが大きいと、民間が発展していく。
その結果として、生産力が上がり、人口も増大していく。
しかし税率を引き上げると、民生が落ちる。
その分、生産力も下がる。
下がった分だけ、人口も減っていく。
これがあるので、うかつに税率を上げられない。
特に税率10%であるが、このあたりが民生を最大限に出来る限界だ。
ここからあげると、少しずつ民生が落ちる。
1%や2%では大きな問題にはならないが。
これが20%になると確実な影響が出てくる。
30%になると、現状維持になっていく。
40%だと人口減少が少しずつ始まっていく。
また、人口減少や生産力減少だけではない。
学問所などで向上している労働者の能力なども下がる。
これらはマイナスの補正や修正としてかかってくる。
なので、下手に税率はいじれない。
まして今は少しでも人口を増やしたい。
今後、大きな戦争が控えてるのだ。
残酷な言い方だが、兵隊を少しでも増やすために、人口の拡大も急務になる。
それに、人口が多い方が生産力も上がる。
税率や税収が少ない分、出来る事は減る。
しかし、土台となる国力を崩壊させるわけにはいかない。
その為、政策をいくつか絞っていく事になる。
ともかく、当面は生産力の増大に注ぎ込む。
やれる事に限界がある以上、何に集中するかは考えねばならない。
ただ、悪いことだけでもない。
税率が低く、民生が大きい。
この場合、生産力の増大が大きくなる。
また、プレイヤーが指示をしなくても、自動的に民間で必要なものを生産していく。
プレイヤーの思い通りには出来なくなるが。
ようは、生産に必要な部分は自動的に処理されていく事になる。
見方を変えれば、プレイヤーの手間が大きく減る事になる。
細かな指示は出来ないが、膨大な作業をこなす必要が無い。
それはそれで大きな利点だ。
プレイヤーはやりたいことだけに集中する事が出来る。
今のススムがまさにその状態だ。
「ともかく、生産力と。
それと、道路と鉄道の輸送路。
あと港か」
生産力増大は民生…………この場合、ゲームの思考AIに任せる事になる。
プレイヤーのススムはそれだけでは足りない部分に手をつけていく。
例えば、道路。
民生が大きいと、自動的に設置されていく。
しかし、それはプレイヤーの望む形とは違うものになっていく。
それではどうしても足りない所なども出てくる。
そこでススムが、足りない道路を設置したりする。
そういった事くらいは出来る。
また、どうしても何も設置して欲しくない場所。
後々、空港を作ったり工場を作ったりしたい所は、建設出来ないようにしておく。
そういった指示を出しておけば、必要な用地は確保出来る。
あとは手を出せる所に、ゲームのプログラムが勝手に建設などを行ってくれる。
それはそれで楽ではあった。
そうしてるうちに生産力は更に増大し。
日本の国力はどんどんと上昇していった。
生産力も増大し、結果として税収も増える。
人口も増えて、労働人口などの確保も出来るようになった。
そして、軍備の方も順調に拡大していっている。
研究も進めていたので、武器の質も上がっている。
軍全体への配備もほぼ完了している。
それと同時に、旧式である火縄銃なども処分されていく。
ほとんどは資源として再利用されていく。
だが、一部はそのまま海外へと持ち出されていった。
火縄銃と、弾丸と火薬。
それと、それなりの数の日本刀。
装備の更新で破棄されていったこれらは、ロシアにばらまかれていった。
日本にとっては、目先に迫る列強である。
それも、陸軍では世界最強。
海軍でも2番目か3番目。
そう言われている国だ。
実質、世界一と言って良い。
そんな国が、日本海を挟んだすぐそこまで迫っている。
これを牽制するために、現地の者達に武器を渡して活動をしてもらう事になる。
東に東に侵略を続けたロシアだ。
反発する者もいる。
そういった者達に手を貸すことで、多少なりとも時間を稼ぐ。
いずれやってくる戦争に備え。
その時までに、少しでもロシアの戦力を削るために。
無論、火縄銃でまともに戦える訳がない。
ないのだが、武器が全くないのと、多少はあるのとでは大きく違う。
それに、火縄銃や日本刀を放出し終えたら、新しい銃を提供していく。
数は多くは無いが、それで少しは持ちこたえてもらう。
もちろん、それだけではない。
こうして武器を提供すると、研究に必要な点数などがもらえる。
現地での使用実績などが反映されるのだろう。
貴重な戦訓は新たな武器を開発する時に有利になる。
それを得るためにも、武器の提供には意義があった。
そうして準備をととのえ。
ススムは最初の行動にのりだす。
「それじゃ、行ってくれ」
準備した軍勢。
それを一斉に出発させる。
用意した大量の軍艦。
大量の兵士達。
それらが向かうのは南。
沖縄、台湾を超えた更に先。
現在、スペイン領になってるフィリピンである。