41回目 中国分裂
とにかく目先の問題である中華民国。
これについては徹底的に引き延ばしにかかる。
満州国は防衛に徹し、中華民国の攻撃を引き受けるだけにする。
その方が敵に消耗を強いられる。
中華民国は莫大な人口を抱えている。
その為、兵隊を無尽蔵に投入できる。
それだけの余力がある。
だが、その兵隊を動かすとなるととんでもない労力がかかる。
歩いて移動させるなら車の燃料などは必要ないが。
それでも食料は消費する。
これがまず大きな負担になる。
その人数に任せた突撃。
これによって満洲に攻め込みはするのだが。
それが兵員の損失という消耗につながっていく。
防御陣地を構築して迎撃する満洲軍。
そんな所に突撃すれば無傷でいられるわけがない。
敵は次々にすりつぶされていく。
銃弾や砲弾の消耗も激しいが。
与える損害の方が大きいので、帳尻は合う。
そんな中国内の軍閥への兵器援助。
これにより中華民国は四方八方に兵力を分散する事になる。
それが満洲への集中を欠く事になる。
もし一点突破するなら、もう少し有利に戦えただろう。
しかしそれが現実に出来なくなっている。
下手に防備の薄い場所を作れば、軍閥が攻め込んできてしまう。
これに対抗する必要があった。
更にその軍閥の背後。
ベトナム・タイの国境線や、モンゴル方面の日本勢力圏内。
これらに各地の軍勢が集結し、防御陣地を構築していく。
攻め込みはしないが、配置する事で圧力をかけるためだ。
南北から攻め込まれる可能性を中華民国に意識させる。
軍閥に加え、これらの備えに更に兵隊を分散させるために。
こうして、戦わずして相手に消耗を強いていく。
勢力圏各国各地域の軍の展開は、演習もかねている。
こうして実際に布陣する事によって訓練を。
そして作戦に必要な情報を集めていく。
布陣にかかる時間や、食料・燃料などの消費など。
それを運ぶ手間といった情報を各軍に蓄えさせていく。
後々これが重要になりもするのだ。
これが地味に中華民国の裏にいる連中にも打撃を与えていく。
兵員などが戦闘で死傷してるわけではないが。
物資生産などに無理を生じさせていく。
何せ大量に存在する中華民国軍だ。
その全員に適切な装備を渡すとなると、莫大な物資が必要になる。
歩兵用の銃器だけに限ったとしても、何十万という量が一度に必要になる。
しかもこれが常に消費され続けているのだ。
輸送の負担も大きい。
輸送用の人員だけでも相当な数になる。
迅速な輸送ともなれば、トラックなども使う。
そうなると燃料消費も馬鹿にならない。
それでも直接戦火を交えるよりは負担は少ないのだが。
戦争をしてない平時の出費としては莫大なものになっていく。
それらを無料で提供してるならなおさらだ。
ある程度は中華民国から代金も取ってるだろうが。
中華民国をそそのかして動かしてるなら、そういうわけでもないだろう。
それなりの自費負担で援助を行ってる可能性はある。
となれば、それは財政に大きな負担をかけていく。
それにいつまで堪えられるか。
成果も上げない投資に。
それを考えて、とにかく中華民国との戦闘を長引かせる。
死んでいく者達には申し訳ないが。
所詮、ゲームの中の数字でしか無いとしてもだ。
これが現実なら、数多くの人たちがこれで死んでるのだ。
「むごいよなあ」
酷い話だと思う。
無駄に攻め込んでこなければこんな事にはならないのだから。
なお、迎撃するにあたって、それが悪いなどとは決して思わない。
不当に不毛に殴ってきたのだ。
そんな奴らへの迎撃が悪いなんて思わない。
むしろ、徹底的に潰すべきである。
悪いのは相手だ。
そんなわけで、中華民国には全く同情もせずに迎撃を続けていく。
殺されていく兵隊、もとをただせば民衆には申し訳ないが。
それは指導者が悪いという事だ。
文句は馬鹿なことをさせてる指導者にしてもらいたいところ。
その願いがかなったというわけではないが。
中華民国内で不満が高まっていっている。
負けてはいないが勝つことが出来ない戦争。
損失損害だけを増やす戦争。
それによって死んでいくことへの不満や不安。
それらが国民満足度を下げていっている。
これで勝ってるなら、不満もそこまで高くはならないのだが。
先の見えない、いつ終わるか分からない状況は人に疲労をもたらす。
一時的にせよ、終わりが必要なのが人間だ。
それから休息をして、また次に向かう。
そうでなければ人は疲弊する。
不満と不安を抱え込む中華民国。
それは一つの動きを作っていく。
中華民国の分裂を。
度重なる徴兵と終わることの無い戦争。
その負担に堪えかねた者達が国を割っていく。
これにより、中華民国は南北で分裂。
北京などを中心とした地域が分離独立を宣言する。
日本側の工作が実った形だ。
もっとも、ススムもこういう結果になるとは思わなかった。
これにより発生した政府は、これ以上の交戦を拒否。
満洲(および日本)との停戦を調印する。
当然ながらこれは、中華民国と対立する要因になる。
中華民国は、交戦を拒否したこの政府を敵と認定、攻撃を仕掛けていく。
やむない形ではあるが、中国新政府もこれに対抗していく事になる。
これは日本としてはありがたい事だった。
前線が自動的に南に移動し、満洲は脅威から解放された。
加えて、満洲との停戦に合意した政府の軍隊が中華民国と戦っていく。
その分の兵士は中国で徴兵されるので、満洲・日本の負担が減った。
中国は内戦状態になってしまったが、圧力はかなり低下した。
その事だけでも利益は大きい。
少なくとも満洲や日本が損害を受ける事はなくなった。
中国新政府への援助を行うだけで良い。
中国新政府も武装を日本から受け取る事で、抵抗力を持っていく。
それだけで中華民国からの圧力を撃退していける。
これで中国からの圧力を完全に相殺する事が出来た。
日本とその勢力圏は行動の自由を得る事になる。
この独立した新政府であるが。
当初は中華民国正統政府を名乗っていた。
しかし、それでは混乱のもとになる。
その為、後に名前を変え、新たな国として発足していく事になる。
西暦1939年。
中華民国正統政府発足。
この後、漢民国に名前をあらためる。