32回目 国内安定のために
史実よりはマシだが、この時期の日本にも様々な不穏分子がいる。
ゲームだとこれらは、皇道派やら統制派という名前で出現してくる。
その他にも例によって共産主義者だとか。
アジア主義だとか。
とにかく様々な名称で色々な事件が起こる。
それらに違いはほとんどない。
分かりやすく言えば、どちらも独裁をしたいというだけの話だ。
頭に天皇をのせるかのせないかの違いでしかない。
もっと分かりやすく言うなら、次のようになるだろう。
『税率100%』
既に出てきた独裁と同じだ。
何も変わる事がない。
これらが実権を握ると、あらゆる資産や資源を政府が自由に出来る。
国民の自由は消滅する。
それを表現するなら次のようになるだろうか。
好きなものを買えない、好きなものを作れない。
そうしようにも、自分では資金も資源も用意できない。
牛耳ってる政府に陳情しなくてはならなくなる。
そして、その陳情をどうするかは政府の自由だ。
そういう状態になる。
その理由として、戦争遂行の為の、国家一丸の体制を、とか。
財産の均等な分配のために……などがあげられる。
助け合いというのもこれにあたる。
持ってる者から奪って、足りない人に渡すという。
その手段の為に独裁をしようというのだから何とも。
口では何とでも言えるというものだ。
やってる事は、資産の収奪による行動の自由の喪失・消滅でしかない。
ススムとしては、既に述べたような理由でこれに反対だった。
確かに国内の全てを好き勝手に出来るようになる。
しかし、まともに国を成長させようとすると、逆に手間や面倒が多くなる。
むしろ、邪魔としか言えない。
放っておけば自然と町が出来たりしていくのだ。
いちいち手動でやらなくても良い。
思い通りにはならないが、必要なものはそれなりに揃っていく。
プレイヤーが一々考え無くてもよいのだから、その方が楽だった。
狭い範囲でならば、好き勝手が出来るのも良いかも知れない。
しかし国全体となると、とても網羅できるものではない。
人の手にはあまる。
プログラミングされてるAIによる民生に任せた方がまだマシだ。
幸いにもゲーム内の日本は、公武合体の段階で独裁を排除している。
その時点で、憲法なども制定していた。
この憲法により、独裁などを否定するようになっている。
少なくとも法律などでは。
反乱などが起こって内戦、つまり国内で戦争になったらどうにもならないが。
これは『思想の研究』を独裁否定の方向に進めると可能となる。
利点よりも面倒が多いと考えてるススムは、だいたいこの方向に研究を進める。
面白い事に、日本だとこの研究が比較的早く進められる。
必要な段階が少ないのだ。
ゲームの説明によれば、十七条の憲法や、その後の法秩序があるから、という事らしい。
フレーバーテキストやゲームの設定だとそうなっている。
なんでも、古くからの国家という事が影響してるそうな。
まあ、確かに国としてある程度のまとまりがあるのだ。
法体制が全く無いということはない。
文章化されてない不文律も含めて、色々なものがあったのだろう。
それらを土台にしてるから、新たな研究がさほど必要ないのだとか。
それを反映してか、ゲーム内の日本は、十七条の憲法をもとにした体制となっている。
それに加えて、様々な不文律も含めて、これを統合した法体制をとってる事になっている。
明文化されてない慣習をもとにしてるというが、話に聞くイギリスと似てると思った。
このおかげで、ゲームのイベントとしての反乱などがそれほど多くはない。
全く出て来ないというわけではないが。
ゲームのイベントとしては出にくくなってるという。
実際にどれくらい少なくなってるのかは分からないが。
検証しようがないから分かりにくいのだ。
たぶん、プログラミング上で色々な処理がされているのだろうが。
プレイヤーには確かめようがない。
だが、理由はこのさいどうでもいい。
国内情勢が安定してくれるなら文句は無い。
国内の問題を、速やかに解消出来てるならば。
幸い共産主義などは、ロシアを潰した時点でほぼ消えている。
なので脅威の種類は減っている。
それだけでも救いだ。
かけねばならない手間がその分減る。
不利な点をあげるとすれば、独裁体制をとりにくくなる事だろうか。
それを敬遠してるススムには、特に欠点となるものでもない。
ススムには不要な選択肢だ。
もっとも、皇道派だろうが統制派だろうが共産主義だろうが。
これらが主導権を握りにくい情勢になっている。
これらがそれなりの勢力になるには、国民に不満がたまってなければならない。
なのだが、ゲーム内の日本の国民満足度は高い。
不満を持ってるものは少なく、反乱などに加担する者は少ない。
おかげで騒動や暴動、反乱などは滅多に発生しない。
起こってしまっても、即座に終息していく。
他の国だと、一カ所で起こった事が飛び火するようにあちこちで連鎖発生するのだが。
日本はそうならずに、単発で小規模なものが発生して終わってくれる。
だとしても、暴動や反乱など起こらない方が良い。
ほんの少しでも、そういった事態が発生するとあらゆる事が滞る。
暴動や反乱なら、鎮圧するまで生産などが停滞する。
そうなれば、収入なども減るし、国内の不満も高まる。
それをおさめていくには、相応の時間と手間と金が必要だ。
事前に消していければ、その方が良い。
その為にも、国内の治安を良く保ち。
国民の満足度を上げていく。
これは知識や技術が向上すると高くなる。
生活に余裕が出て来るからだろう。
加えて、娯楽なども充実している事。
楽しみがあれば、特に生活に不満は抱かないものだ。
こういった手をうっていく事で、国内の問題を解決していく。
そのおかげもあってか、国内は順調に発展していってる。
史実では滞っていたという東北なども開発が進んでいる。
この地方も含めて、日本全体で生産性が上がっていた。
また、大きな特徴として、重工業の比率などがあがっている。
戦前などは、工業よりも農業などの第一次産業が強かったという。
そのためか、通産省より農林水産省のほうが勢力が大きかったとか何とか。
その比率が、史実と違い、工業の方が大きくなっている。
これにより、だぶついてる就労年齢人口を産業に吸収していける。
就職率が高い事で、誰もがそれなりに生活出来ているのだろう。
特に、若年層の就職・就業率が。
大分落ち着いてきているが、まだ若年層の方が人口に占める比率として多い。
これらを受け入る事が出来る産業が発展していっている。
そうして労働者が増える事で、税収も増えていっている。
日本において、失業による不満の増大はほとんど無い。
暴動や反乱を起こす必要がない。
やはり、人間食っていけるかどうかは大事だ。
それもこれも、繁栄あってのものである。
くだらない戯言にそそのかされる理由は二つ。
明日をも知れぬ困窮の中で、一か八かの賭けに出るか。
豊かで暇を持て余し、余計な考えにふけってしまうか。
その一方を潰せば、問題はそれだけ減る。
そして今、残ったもう一方も潰していく。
政治家や官僚、富裕層など。
このあたりにいる問題のある連中を片付けていく。
逮捕や投獄などもせねばならない。
その為の選択肢を選び、迷わず実行していく。
こうすると一時的に政治機構が混乱する。
政治家や官僚や企業重役や著名人を捕らえていってるのだから当然だ。
だが、こうしておけば、今後余計な問題は起こらない。
残り少ない国内問題も、こうして解決していく。
おかげで日本の治安は驚くほど安定している。
5・15事件や2・26事件にはほど遠い。
ありがたい事だった。