31回目 植民地政策と、それへの反発、始まる暗躍
敗戦国であるロシア・ドイツ・フランス・スペイン。
これらの国々の状況は悲惨の一言につきる。
国家予算の50%が強奪されていくとなれば、まともな政治政策は行えない。
海外植民地の全てを失った今、収入そのものも減っている。
しかも、戦死者などへの慰安金もある。
まともな国家運営など出来るものではなかった。
ある意味救いなのは、軍事が制限されてること。
そのおかげで、大きな出費の一つが無くなっている。
それはそれで問題だが、この状況ではむしろありがたいくらいだった。
とはいえ、それでも必要な予算は足らず。
やむなく増税して足りない分を補おうとする。
しかし、これがいけない。
増税すれば当然国民の負担が増大する。
ゲームにおいては、民生を圧迫する。
そのせいで生産力が落ち、もととなる経済そのものが停滞する。
結果として、税収も減少する。
それはそうだろう、税収のもととなる国民の収入が減ってるのだから。
政府は自ら税収の増加を阻み、短期的にも長期的にも衰退していく道に入っていく。
さすがにこの事態を打破しようという動きが出てくる。
特にその声が強いのがロシアだ。
先の大戦で最も大きな被害を受けたのがこの国だからだ。
何せ、日本の猛攻を最も正面で受けて。
なおかつ降伏後は12~60歳の男女を根こそぎ徴兵された。
それらが素手のまま敵に突撃させられたのだ。
しかも、同盟国であったドイツに向かって。
そこで大量の国民が死滅させられた。
あろう事か食料なども補給されていない。
これはススムがそう設定したからだ。
「必要な物資は現地調達」というのも加えて。
おかげで武器も食料も敵から奪う羽目になった。
また、このせいで、戦うこと無く飢え死にする者が続出した。
それは戦争が長期化すればするほど増大していった。
ここにロシアは、生産人口の多くを喪失。
国家の現状維持が不可能になった。
いずれ回復するにしても、相当な年月を必要とする。
それでいて重工業などの産業は禁止されている。
そういった技術者は連行されるか処刑された。
残ってるのは農業・牧畜・漁業に林業など。
いわゆる一次産業のみといったところ。
せいぜい、工具を作る程度の工業くらいだ。
更に、科学や技術、知識を記した書物も軒並み回収されていった。
図書館などに蓄えられてるものだけではない。
個人の蔵書も含めてだ。
そうしてから、印刷機などは破壊された。
原稿なども回収されていく。
これに加えて、国家予算50%の収奪である。
いったいどうしろというのか。
とはいえ、別に驚くほどの事では無い。
既にこれらは行われた実績がある。
産業の制限と書籍などの回収は戦後日本に施された政策だ。
更に言えば、ヨーロッパの植民地がなされてきた事だ。
それをヨーロッパで行ってるだけである。
そうして吸い上げた利益が戦勝国に吸い上げられてるだけである。
何もおかしな事は無い。
とはいえ、納得できるものでもなく。
各地で反乱も起こっている。
それの制圧のために、現地政府の警察や軍が出動する。
それらは国民を守るものではなく、国民を制圧するものになっていった。
かくて敗戦国は内部分裂を起こしていく。
そんな状況がどれだけ続くのかと、敗戦国の誰もが思った。
だからこそ、つけいる隙も出てくる。
ロシア・ドイツ・フランス・スペインといった敗戦国。
彼らには秘密裏にとある国が接触。
今後についての策を提案していく。
それにのった彼らは、静かに力を蓄え始めていった。
「なるほどね」
諜報部からの報告でそういった動きが上がってきた。
それを画面に表示されたメッセージで受け取り、ススムはこれからを考える。
「まあ、そうなるわな」
これも珍しい事では無い。
敗戦国が現状打開を目指して暗躍を始める。
これまで何度も繰り返されてきた事だ。
大事なのは、誰がそれに参加してるのかだ。
今回はとある国が裏で糸を引いてるのが判明している。
「らしいと言えばらしいけど」
苦笑い気味に呟く。
諜報部からの情報では、戦勝国の一つが動いているとの事。
まあ、珍しいものではない。
ともに戦った勝利者達は、今度は次の勝利者を決める為の敵になる。
対立などせず手を取り合っていれば良いとは思うのだが。
そうもいかないのが国というものなのだろう。
自分の国益だけを考えれば、それもやむなし。
だが、分かった以上は相応の対処はしていく
でないと問題が多発する。
その暗躍で敗戦国が力をつけ、行動を開始したら面倒だ。
だがススムはそれにはあえて手をつけず、情報収集だけを命じた。
「そのまま踊ってくれ」
敵が暗躍して敵対してくれるならそれでいい。
敵として潰すだけだ。
それだけの戦力はそろってる。
下手に仲間面して一緒にいるほうが面倒である。
敵よりやっかいなのは、味方の裏切りだ。
それが早い段階で判明したのは、僥倖と言って良いだろう。
少しずつその国との関係を閉ざしていく。
情報の共有を無くし、間をあけていく。
ついでに、他の戦勝国達の様子も見ていく。
彼らにも接触はあるはず。
それにどう反応していくのか。
それを見て考えていかねばならない。
とりあえず敗戦国は好きにさせておく。
黒幕の国の手引きでアメリカと接触。
そのままアメリカで兵器の開発を行っていく。
第一次大戦後のドイツがロシアで行ったように。
アメリカも敗戦国の技術供与を受けて、一気に国力を増大させていく。
知識や産業のほとんどを奪ったはずだが、それでもいくらか敗戦国には残っていたのだろう。
伊達に列強をやっていたわけではない。
そんな動きを眺めつつ、ススムは国内の引き締めを行っていく。
どうせ内部に諜報員が送り込まれてる。
それらを一斉に摘発し、動きを解明していく。
また、国内の不穏分子を扇動されないように手を打っていく。




