表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/70

31回目 植民地政策と、それへの反発、始まる暗躍

 敗戦国であるロシア・ドイツ・フランス・スペイン。

 これらの国々の状況は悲惨の一言につきる。

 国家予算の50%が強奪されていくとなれば、まともな政治政策は行えない。

 海外植民地の全てを失った今、収入そのものも減っている。

 しかも、戦死者などへの慰安金もある。

 まともな国家運営など出来るものではなかった。



 ある意味救いなのは、軍事が制限されてること。

 そのおかげで、大きな出費の一つが無くなっている。

 それはそれで問題だが、この状況ではむしろありがたいくらいだった。

 とはいえ、それでも必要な予算は足らず。

 やむなく増税して足りない分を補おうとする。



 しかし、これがいけない。

 増税すれば当然国民の負担が増大する。

 ゲームにおいては、民生を圧迫する。

 そのせいで生産力が落ち、もととなる経済そのものが停滞する。

 結果として、税収も減少する。

 それはそうだろう、税収のもととなる国民の収入が減ってるのだから。

 政府は自ら税収の増加を阻み、短期的にも長期的にも衰退していく道に入っていく。



 さすがにこの事態を打破しようという動きが出てくる。

 特にその声が強いのがロシアだ。

 先の大戦で最も大きな被害を受けたのがこの国だからだ。



 何せ、日本の猛攻を最も正面で受けて。

 なおかつ降伏後は12~60歳の男女を根こそぎ徴兵された。

 それらが素手のまま敵に突撃させられたのだ。

 しかも、同盟国であったドイツに向かって。

 そこで大量の国民が死滅させられた。



 あろう事か食料なども補給されていない。

 これはススムがそう設定したからだ。

「必要な物資は現地調達」というのも加えて。

 おかげで武器も食料も敵から奪う羽目になった。



 また、このせいで、戦うこと無く飢え死にする者が続出した。

 それは戦争が長期化すればするほど増大していった。

 ここにロシアは、生産人口の多くを喪失。

 国家の現状維持が不可能になった。

 いずれ回復するにしても、相当な年月を必要とする。



 それでいて重工業などの産業は禁止されている。

 そういった技術者は連行されるか処刑された。

 残ってるのは農業・牧畜・漁業に林業など。

 いわゆる一次産業のみといったところ。

 せいぜい、工具を作る程度の工業くらいだ。



 更に、科学や技術、知識を記した書物も軒並み回収されていった。

 図書館などに蓄えられてるものだけではない。

 個人の蔵書も含めてだ。

 そうしてから、印刷機などは破壊された。

 原稿なども回収されていく。



 これに加えて、国家予算50%の収奪である。

 いったいどうしろというのか。



 とはいえ、別に驚くほどの事では無い。

 既にこれらは行われた実績がある。

 産業の制限と書籍などの回収は戦後日本に施された政策だ。

 更に言えば、ヨーロッパの植民地がなされてきた事だ。

 それをヨーロッパで行ってるだけである。



 そうして吸い上げた利益が戦勝国に吸い上げられてるだけである。

 何もおかしな事は無い。



 とはいえ、納得できるものでもなく。

 各地で反乱も起こっている。

 それの制圧のために、現地政府の警察や軍が出動する。

 それらは国民を守るものではなく、国民を制圧するものになっていった。

 かくて敗戦国は内部分裂を起こしていく。



 そんな状況がどれだけ続くのかと、敗戦国の誰もが思った。

 だからこそ、つけいる隙も出てくる。

 ロシア・ドイツ・フランス・スペインといった敗戦国。

 彼らには秘密裏にとある国が接触。

 今後についての策を提案していく。

 それにのった彼らは、静かに力を蓄え始めていった。



「なるほどね」

 諜報部からの報告でそういった動きが上がってきた。

 それを画面に表示されたメッセージで受け取り、ススムはこれからを考える。

「まあ、そうなるわな」

 これも珍しい事では無い。

 敗戦国が現状打開を目指して暗躍を始める。

 これまで何度も繰り返されてきた事だ。

 大事なのは、誰がそれに参加してるのかだ。

 今回はとある国が裏で糸を引いてるのが判明している。



「らしいと言えばらしいけど」

 苦笑い気味に呟く。

 諜報部からの情報では、戦勝国の一つが動いているとの事。

 まあ、珍しいものではない。

 ともに戦った勝利者達は、今度は次の勝利者を決める為の敵になる。

 対立などせず手を取り合っていれば良いとは思うのだが。

 そうもいかないのが国というものなのだろう。

 自分の国益だけを考えれば、それもやむなし。



 だが、分かった以上は相応の対処はしていく

 でないと問題が多発する。

 その暗躍で敗戦国が力をつけ、行動を開始したら面倒だ。

 だがススムはそれにはあえて手をつけず、情報収集だけを命じた。

「そのまま踊ってくれ」



 敵が暗躍して敵対してくれるならそれでいい。

 敵として潰すだけだ。

 それだけの戦力はそろってる。

 下手に仲間面して一緒にいるほうが面倒である。

 敵よりやっかいなのは、味方の裏切りだ。

 それが早い段階で判明したのは、僥倖と言って良いだろう。



 少しずつその国との関係を閉ざしていく。

 情報の共有を無くし、間をあけていく。

 ついでに、他の戦勝国達の様子も見ていく。

 彼らにも接触はあるはず。

 それにどう反応していくのか。

 それを見て考えていかねばならない。



 とりあえず敗戦国は好きにさせておく。

 黒幕の国の手引きでアメリカと接触。

 そのままアメリカで兵器の開発を行っていく。

 第一次大戦後のドイツがロシアで行ったように。

 アメリカも敗戦国の技術供与を受けて、一気に国力を増大させていく。

 知識や産業のほとんどを奪ったはずだが、それでもいくらか敗戦国には残っていたのだろう。

 伊達に列強をやっていたわけではない。



 そんな動きを眺めつつ、ススムは国内の引き締めを行っていく。

 どうせ内部に諜報員が送り込まれてる。

 それらを一斉に摘発し、動きを解明していく。

 また、国内の不穏分子を扇動されないように手を打っていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ