26回目 汚い戦後処理
「さーて、次に行こう」
戦争が終わり、講和条件が設定された。
これでとりあえず戦争は終わりだ。
だが、次の戦争が無くなるわけではない。
むしろ、ここからが本番になる。
「今回はどこが爆発するかな」
戦争が終わり、講和条件が決定した。
その内容は、史実よりも遙かに厳しい。
これでは史実のドイツ以上に不満がたまり、爆発するだろう。
だが、これはある程度織り込み済みだ。
ゲームとしてそう設定されてるというのもあるのだが。
第一次世界大戦が終われば、それから時間をおいて第二次大戦になる。
この流れはほぼ確定している。
回避する事も出来るが、なかなかそうもならない。
これは、第一次世界大戦の結果が尾を引くからだ。
勝者であっても消耗は大きい。
それが第一次世界大戦である。
何せ、自国も何らかの形で被害を受けてる場合がほとんどだからだ。
その復興のために資金が必要になる。
その費用を敗戦国にもたせる。
どうしてもそういう流れになる。
たとえ被害が少なくても、武器弾薬などの消耗はある。
また、兵士が死ねば、その遺族への支払金なども必要になる。
ゲームとしても、そういったものがあったりする。
これがあるから、プレイヤーは可能な限り損害を抑えようとする。
ゲームだからと、兵士が何人も死ねば、その分のツケを支払う事になる。
それを拒めば、国内の不満が高まる。
最悪、政府転覆のための一斉蜂起が起こりかねない。
それを抑えるためにも、それなりの費用が必要になる。
その資金を敗戦国からもぎ取ろうとする。
だから第一次世界大戦後は、とにかく賠償金が大きくなりやすい。
参加国が多いのも原因になる。
通常なら、敵味方で参加国は二国程度。
同盟があってもそこまで多くはならない。
だが、世界大戦ともなれば、参加国は莫大な数になる。
そうなれば、請求者も多くなる。
累積された賠償金額は莫大なものになる。
その賠償金をどうにかして抑えられるかどうかだ。
それが第二次世界大戦発生の阻止条件になる。
でないと、史実のドイツのように、講和条約破棄による開戦になりかねない。
これをするのがとにかく難しい。
はっきり言って不可能と言える。
やり方としては、自分だけが唯一の勝者になって、一切賠償を請求しない。
あるいは、同盟を結んでる他の国にはほとんど活躍させない。
そうして、自分だけで戦争を終わらせる。
これが出来れば、賠償金額をかなり抑える事も出来る。
スーパープレイとして、これを実現する猛者もいるにはいる。
この場合、相手国を完全に吸収してしまう方法は使えない。
その場合だと、併合したり植民地化したりした国で不満が高まり、反乱が発生する。
そのまま独立運動がはじまり、やはり大戦が発生する。
というわけで、第二次世界大戦勃発を防ぐのは難しい。
しかし、だからこそ裏技とも言うべき手段が出てくる。
防ぐのが難しい。
ならば発生させてしまえば良い。
ただし、それまでに相手から絞れるだけ絞る。
あまりにも悪逆非道な考えである。
だが、これが戦勝国になった場合の対処法の一つになっている。
どうせ世界大戦がまた起こるなら、それまで自分が有利な状況にしておく。
賠償金をふんだくり、なおかつ毎年大量の資金を手に入れる。
資源でもいい。
得られるものを何でも手に入れる。
そうして潤沢な資金に資源を抱えて、第二世界大戦に突入する。
復活した敵対国も、搾り取られてるので、軍備はたかがしれている。
たとえ、軍備が十分なものであっても、資金不足による戦争継続が難しい。
そういう状況に追い込んでおけば、戦っても勝てる可能性が高くなる。
怖いのは戦勝国が敗戦国と組む事だ。
そうなった場合、多少手強くなる。
しかし、それでも問題はさほど大きくはない。
様々なものが不足してる敗戦国を抱えるのだ。
その分動きが鈍くなる。
なので、最初の段階で大きな勝利を得ればどうにかなる。
その時は戦勝国すらもおさえて、自分が超大国になる事も出来る。
競争相手を潰す手段として、それほど悪くは無い。
人間としては最低最悪な考え方だろう。
だが、被害を抑え、確実に勝利するためには必要な手段になる。
どうせ起こるのだ。
だったら有利な条件をととのえておく。
負けて全てを失うことの無いように。
必ず勝てるように。
だいたい、一回の戦争で相手国を潰すことなど不可能だ。
二度三度と相手を叩きのめし、圧倒的な差をつける。
でなければどこかの段階で自分が潰える。
とまあ、ゲームをやりながらススムはそんな事が分かってきた。
そして思うのだ。
「……現実のベルサイユ条約もこんなつもりでやってたのかな」
ドイツが一度くらいで潰れるわけがない。
だから、段階を踏んで潰そうとしたのではないか。
そんな事も考えてしまう。
さすがに考えすぎだとは思うが。
だが、史実がどうであれ、ゲームとしての手段でこういうやり方もある。
それをススムは遠慮無く取り入れていく。
どうせなら、最後の最後まで勝利で終わりたい。
その為に手段を選んではいられない。
美しい負け方なんか存在しない。
敗者をおとしめる必要は無いにしてもだ。
美しいのは勝利だ。
それがどれほど汚くても卑劣であっても。
勝てば様々なものが手に入る。
名誉や名声なんてものよりよっぽど価値があるものが。
食うに困るほどの困窮に名誉や名声があっても、そんなものに何の意味も価値もない。
豊かに、明日を憂うことが無い日々こそが価値がある。
どうしても貧窮や困窮が素晴らしいというなら。
今すぐ持ってる全てをすてて浮浪者になればいい。
だが、多くの人はそれを望みはしないだろう。
豊かに生きていける事を望むはずだ。
出来れば、それを卑劣で卑怯なやり方で手に入れるのではなく。
誰をも踏みにじらずに手に入れたいものだ。
しかし、周りがそうでないならば、手段を選んではいられない。
卑怯卑劣を平然と使ってくる連中が相手ならば。
同じように卑怯卑劣な手段で叩きのめしてやればいい。
それが正々堂々というものだ。
そしてこのゲームにおける世界。
それは実に卑怯卑劣で汚い手段を使ってくる。
そんな中で、自分だけ清廉潔白という縛りプレイをする必要は無い。
やりたいなら、やりたい者だけがやっていれば良い。
ススムはそういう事をやる気は全くなかった。
この話がまさかこんなに支持を集めるとは




