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25回目 第一次大戦講和内容

 初の世界大戦(というか、ヨーロッパ大戦)は集結した。

 その講和会議は、今回の戦いで中立を保ったアメリカで行われた。

 どの勢力にも協力しないというモンロー主義にのっとった結果である。

 アメリカの基本的な国是である。

 それが結果として中立という立場を得る事につながった。



 こうしてアメリカにて行われた各国代表による会議だが。

 当然ながら荒れた。

 何せ、日本が突きつけた条件が異様なほど厳しいのだ。

 それこそ、履行不可能なほどに。

 これには、肩を並べたイギリス・オーストリア・トルコ・オランダ・イタリアなども驚いた。

 あまりの事に、日本に真意を問いかけるくらいである。



「何を言いますか」

 日本代表は、平然としてそんな者達を見返す。

「日頃、国際会議では無理難題をふっかけてくる皆さんではないですか。

 それが今回は遮るとはいったいどんな思惑があるので?」

 そう言い返されては何も言い返せない。



 実際、各国代表による国際会議では、まず無理で無茶な条件を突きつけ合う。

 そういう交渉術だ。

 そこからお互いに妥協しあっていき、最後は妥当なところに落ち着く。

 日本の、最初から妥当な線を提示するという交渉のやり方とは違う。



 それにしても日本の提案はすさまじいものであった。

 ここからどんな妥協をするのだと誰もが思った。

 そこが他国の限界である。

 日本は最初から妥当な提案をする。

 言い方をかえれば、これ以上妥協できないギリギリを提示している。

 もう後が無いのだ。

 そんな日本が、わざわざ妥協点なぞ作ってくるわけがない。



「何をいってるのか」

 居並ぶ各国代表に日本代表は首をかしげる。

「我々が提示してるのは、最低限の条件のみ。

 これ以上妥協できない線しか提示してません」

 議場が静まりかえった。

 誰もが何も言えなくなった。

 自分の耳を疑い、頭を疑い、最後には日本代表の正気を疑った。

 しかし、言ってることが紛れも無い事実だと理解して、戦慄した。



「まあ、皆さんには皆さんの考えがあるのでしょう」

 そんな各国代表に、日本は静かに言い放つ。

「ですが、我々は何一つ妥協しない。

 これが我らの提示する講和条件だ」

 その意思に揺らぎは無い。

 それを察した各国代表は差し挟む言葉を失った。



「そもそも、停戦・講和を申し出てきたときに、既に条件は提示していた。

 それを蹴ったのは交戦国の皆さんだ」

 それはその通りである。

 しかし、出された条件があまりにもあまりだった。

 到底受け入れられないような。

 しかし、今提示された内容は、それを更に上回る。

「当然だ」

 日本代表は引き下がらない。

「最初の条件を蹴ったのだ。

 だったら、より厳しい条件が課せられても文句を言うな」



 冷淡な声だった。

 相手の事など考えてもいない。

 それを見て聞いて、各国はなんとなく分かってきた。

 日本の交渉に妥協や妥結はない。

 議論などというものはない。

 そんなものを日本は求めてはいない。

 最初から妥当な条件を出す。

 それが認められなければ、それは交渉の決裂なのだと。

 そして、決裂した交渉を再度取り持つ事は無いと。

 最初に示した妥当な提案。

 お互いが納得できる条件を提示する。

 それを覆したら、もう取り返しがつかないのだと。



 ある意味誠意のあらわれだ。

 お互いに、つまりは交渉相手の状況も考えてるのだから。

 だから、お互いが納得できる妥当な条件をそろえる。

 それを退けるのは、相手のことを考えた誠意を払いのける事になる。

 そんな者と交渉など出来るわけがない。

 ……そう考えるから、諸外国が考える議論は日本とは成立しない。



 ただ、最初から条件が厳しいのは確かだ。

 さすがにこれは少しは緩和出来ないものか。

 誰もがそう考えた。

 しかし、これを拒否するならば、

「なら、日本は単独で戦争を継続する」

と言ってくる。



 ロシア・ドイツ・フランス・スペインは戦慄した。

 そんな事されたら、確実に滅亡する。

 しかし、条件を受け入れたら、いずれ滅亡する。

 どっちにしても悲惨な未来しか無い。

 だが、今死ぬよりは、少しでも生き延びた方が良い。

 そう判断して、各国とも日本の条件を受け入れた。



 こうしてアメリカにおける講和会議は終了した。

 その内容は次のようになっている。



(1)賠償金の支払い

(2)産業の制限

(3)軍備の制限

(4)毎年、国家予算の50%を戦勝国に支払う

(5)敗戦国植民地の割譲



 あまりにもあんまりな内容だ。

 しかし、日本にたてつける国があるわけもなく。

 この条件で締結する事になった。



 このとき、各国代表は口をそろえて語る。

「最初に停戦を申し入れた時の条件をのめば良かった。

 そうすれば、ここまで悲惨な事にはならなかった」

 もう遅いとしか言いようがない。



 それでも戦争は終わった。

 これで各国は一応は平和を手に入れた。

 戦争がないというだけの状態を。

 それが果たして平和と言えるものなのかは分からない。

 だが、戦いで死ぬ可能性や破壊が行われる事はなくなった。



 しかし。

 敗戦国は、平穏の中ですりつぶされていく日々が始まった。



 それでも戦勝国にはまだ利益があり。

 そういった国は得られる利益による繁栄を享受する事になった。

 彼らはこの大戦の後も引き続き安息と豊かさを続けていけた。



 日本は割譲された植民地のうち、日本近くのものだけを確保。

 遼東半島やベトナム。

 そして、太平洋上の島々を手に入れた。

 むろんこれらも、当初は保護領として勢力下に組み込みはする。

 しかし、いずれ独立させていくつもりだった。

 また、遼東半島は面倒なので、中華民国に提供。

 わざわざ維持する必要もないと判断しての事だ。



 トルコはオスマン帝国としての領地に当たる部分を確保。

 イギリス・オーストリア・イタリアは、アフリカなどの植民地をどう分配するかで悩む事になる。

 だが、何とか妥協をして分配は終わった。

 また、賠償金と今後毎年支払われる敗戦国の年間予算の50%は、各国の頭割りという事で落ち着いた。



 なお、事の発端となった小国だが。

 戦争の中ですりつぶされていき。

 戦火の中で国土は荒廃。

 王家もほとんどがちりぢりになった。

 残ったのは、傍流にあたる末端の幼児のみ。

 それでもそれ一人しかいないからと、幼児は国王に即位。

 形式上だけでも国は保たれた。

 だが、彼らもロシア側という事で、重圧の中ですりつぶされていく。



 結局、自主独立を求めて動いた前王の弟である新国王。

 彼の決断と判断は国を衰退と滅亡に導いただけであった。

 そんな彼の事は、後の歴史に愚か者として記される事になる。

 また、何とか残った国民達からも、歴代最低の愚王と呼ばれる事になった。

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