22回目 第一次世界大戦 3
少しばかり時間を遡る。
第一次世界大戦が開始され。
ヨーロッパ派遣軍が遼東半島やベトナムを攻略し、スエズ運河に向かってる頃。
ユーラシア東部には続々と日本軍本隊が集まっていた。
これらは西にそのまま向かい、ロシアを背後から襲う事になっている。
また、清朝満洲をはじめ、参加してくる他国の軍もやってくる。
これらは可能であれば参戦を、という要請をした結果だ。
もちろん、無理をしない程度にである。
とはいえ、戦闘力は心許ない。
武装も訓練もまだまだ足りてないのだ。
そんな者達に主戦場を任せるのも難しい。
よって、ここは彼らに輸送路の確保。
そして、跳梁跋扈してる馬賊などの制圧を頼んでいく。
実際、この時期にはまだまだ危険な連中がはびこっている。
それらを根絶やしにする良い機会として捉える事にした。
結果的に、輸送路の安全確保にもつながる。
ただ、一部の部隊は日本軍に同行もさせた。
実地訓練の為である。
生き残って帰れば、彼らは貴重な戦訓をもたらすだろう。
そうして集まった日本軍を中心とする連合軍。
そのほとんどはまだ独立もしてない地域の者達だが。
それらを従えて日本軍は前進を開始した。
集まった日本軍は、一路モスクワを目指していく。
遮るロシア軍は全て突破していく。
もとより兵器の性能差もあり相手にならない。
最初に激突する戦闘機達。
この空戦においても、ロシア軍側はことごとく撃墜される。
性能差はここでもはっきりとした結果を出していった。
また、これにより上空からの偵察も可能となる。
日本は敵の所在地を把握する事に成功する。
展開して前線をつくる地上部隊も同じだ。
戦車により簡単に突破されていく。
そして戦車を中心とした機動力のある部隊は、そのまま敵を突破。
敵の司令部などの後方を制圧していく。
最低でも輸送路などを遮断し、前線部隊の疲弊を促していく。
史実よりも一足早い電撃戦だ。
これによりロシア軍の前線は壊滅していく。
それを補填しようにも、ロシアはオーストリア・トルコ方面でも戦っている。
余剰兵力を捻出するのも難しい。
幸いなのは、この時点ではオーストリアとイタリアはドイツ・フランスとも戦っていた。
なので、そちらにも対処する必要があったので、ロシアに専念は出来なかった。
加えて、トルコは国力を立て直していない。
ロシアに攻め込むには、いささか力不足だった。
だとしても、ロシアは様々な面を敵に向けていた。
西は共同歩調をとるドイツがいるからまだ良い。
北はそもそも敵が侵攻してくる事の無い北極。
しかし、南と東に敵を迎えるのはやはり不利ではあった。
それでも、日本がオーストリア・トルコくらいであれば。
そうであるならば、まだ持ちこたえたかもしれない。
しかし、このゲームにおいて強化された日本は、時代を超えている。
世界がまだ1920年の初頭。
第一次世界大戦の段階であるにも関わらず。
日本は1930年代後半にさしかかってる。
一部は更にその先を行っている。
そんな相手に対して、ロシアが有効な戦い方が出来るわけもなかった。
日本海軍が地中海の安全と、敵の掃除をしていた頃。
そして、ジブラルタル攻略に向かおうとする頃。
その先鋒はモスクワに迫ろうとしていた。
これに応じてロシアは戦線を縮小。
広範囲に展開していた部隊を後退させていく。
一見、撤退に見えるこの動きであるが、決して負けて逃げてるわけではない。
広い範囲を守るために、部分的に見れば薄くなってる部隊。
それを、縮小させる事で、部隊としての厚みを作る。
その分、守れる範囲は狭くなるが、敵に対抗できるだけの力を得られる。
この、攻撃的な防御を成し遂げるために、ロシアはあえて撤退を行った。
それは情けない逃走でも、無様な敗走でもない。
粛然とした戦法であり、戦う意思のあらわれに他ならない。
ただ、撤退は侵攻よりも難しいという。
それを成し遂げるために、多少の犠牲は避けられなかった。
それでも撤退の多くは成功。
オーストリア・トルコ方面の戦線は大幅に後退した。
逆に、オーストリア・トルコは大きく戦線を前進させる機会を得た。
しかし、これはこれで問題がある。
そして、ロシア側の戦法でもあった。
敵を押し出すのは良いことだ。
敵地に侵攻できるのは良いことだ。
基本としてこれは間違ってない。
だが、それを実行できるかどうかが悩ましい。
大人数の人間を動かすのは難しい。
何万人という人間を移動させるのにどれほどの手間と時間がかかるか。
歩きならば、人は一日に20~40キロ程度の移動が限界だ。
それも、荷物も特になく、障害となるもののない道を進む場合だ。
だいたい、この距離が移動できる上限の目安となる。
また、大勢の人間が一気に移動するのだ。
何万という人間が移動できるだけの道幅がないとどうしようもない。
まだ道がふさがってるなら、後ろから追いかける者は待つ事になる。
自動車などによるピストン輸送も、それだけの車両がないと難しい。
バスやトラックで、一度に20人ほどを運ぶとしても、大量の車が必要になる。
何万という人間を一度に移動させようとしたら、それこそ何百という数が求められるだろう。
しかも、これらを動かす燃料も必要だ。
故障に備えて整備も必要になる。
そういった物資も同時に運び込まねばならない。
こういった理由により、前進は前進で難しい。
下手に進めば、補給が間に合わない。
食料・弾薬・燃料。
衣料品に工具に医薬品。
必要なものは様々だ。
これを一気に運ぶ手段はなかなか存在しない。
こういった問題にオーストリアもトルコも陥った。
追撃して前線を押し上げようにも、その為の力がない。
もっともこれは彼らが無能というわけでは無い。
それだけの用意が出来てる国などそう多くは無い。
それに、トルコはともかく、オーストリアはドイツとも接している。
そちらの対応にも力を入れねばならないのだ。
余力などひねり出せるものではない。
そんなわけでロシアは戦線を縮小。
最終防衛戦を構築してオーストリア・トルコを待ち構えた。
そして、そうしてひねり出した兵力で、東からくる日本軍に備えた。
最終的にはモスクワでの戦闘も考えながら。
そんなモスクワに日本は攻撃を仕掛けていく。
補給線はとてつもなく長く、部隊を維持するだけでも難しい。
それをなんとか保ちながら増強していく。
影響下にある各国・各地域が補給線を保ってくれなければ破綻していただろう。
ロシアもやるもので、補給路への攻撃を常に仕掛けていたのだ。
護衛として各国・各地域の軍が担当してくれてなければ危なかった。
そうして突入準備をととのえ、モスクワまで向かっていく。
その輸送のために、拡大したシベリア鉄道も最大限に用いていく。
兵員に物資に追加の戦車などなど。
それらがモスクワに一気に投入されていった。
新開発されたブルドーザーなどで作られた飛行場。
そこから戦闘機も飛び立つ。
可能な限り集められたこれらにより、空からの爆撃が行われる。
基本的には敵前線に。
そしてその後方の補給物資集積地なども。
そうして出来た穴に戦車が突入していく。
機動力を重視したこれらの部隊は、敵を突破して一気に目標へと進んでいく。
それだけでは、突破したあとを敵がふさぎ、補給が困難になる。
だが、そこは後続部隊が道を確保。
更に敵前線部隊を撃破していく。
ロシア軍東部戦線は、こうして崩壊していった。
日本軍からの砲撃。
接近した戦車による直接砲撃。
そこに殺到する連射可能な銃器を装備する日本兵。
携帯可能な擲弾筒────手で持って撃てる迫撃砲も大きな威力を発揮した。
塹壕陣地も、上からの砲撃を受ければひとたまりも無い。
その場その場で常になされる砲撃を受け、機銃座も潰れていく。
更に後方・補給物資と遮断された部隊は、時間とともに消耗していく。
断続的に攻撃を仕掛け、防御のために応戦させる。
その度に弾薬が失われていく。
そうしていけば、戦闘能力を大きく損なう。
物資がこないから、食料も消える。
保存していたものがあるうちは良いが。
それもなくなれば、あとは飢えていくだけだ。
そうして釘付けにしていくうちに、いくつかの部隊が自然消滅する。
ロシア軍は戦わずして負けるものが出てきていた。
そしてモスクワに突入した日本軍。
彼らは市街地で抵抗を続ける敵との戦いを強いられていく。
その為、戦車を盾にし、戦車砲で建物を吹き飛ばし。
モスクワを更地にする勢いで戦いを進めていった。
「ついでだ」
途中、ススムはとある指示を追加していく。
モスクワ内にある共産党の拠点。
それもついでに壊滅させるようにさせた。
これで少しは動きが鈍くなるからだ。
とはいえ、完全に壊滅させるのは難しい。
それでも、これで少しはおとなしくなれば、それだけでありがたい。
「市内掃討のついでにやってくれ」
そう思いながら、指示を追加していく。
事前に皇帝はモスクワを脱出していた。
なので、これで終戦とはならない。
しかし、首都陥落というのは大きな影響を与える。
これにより、ロシアの士気が大きく落ちる。
物資や戦力とは別の面で、戦闘を続ける意欲が落ちる。
これにより、ロシア皇帝から、停戦の呼びかけが起こる。
条件付きで受諾したススムは、即座に指示を出す。
「生き残ってるロシア軍で、ドイツに向かって攻撃開始」
なかなか鬼畜な指示だ。
しかし、ロシアはそれに従い動き出していった。
今日はここまで
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