16回目 共産主義対策と勢力圏内の統治方針とこの先の面倒対策
「毎度毎度、よく出てくるよ」
そう思いながら、諜報結果に目を向けていく。
世界各地に投入してる調査員。
彼らから上がってくる報告で、世界情勢が分かる。
その中で目を引くのが、ロシアにおける共産党の動きだ。
これがもたらした影響は史実でも明らか。
それはゲームでも表現されている。
放っておけば、国家破壊に陥る。
実際、情報の漏洩や暴動・騒乱。
あげていけばきりがないほど問題を起こしてくる。
特に民衆が不満を持ってる状態だと、賛同者が増える。
これは、国内で起こる暴動や事件の増大や、生産効率の低下として表現される。
不満が高い者ほど、現状を破壊したくなる。
そういった者を取り込んで、共産党は増大していく。
なので、国民の不満が高いのはかなりまずい状態になる。
幸い、ススムの操作のおかげで、日本国民の不満はかなり低い。
1%もないくらいだ。
おかげで、生産力などへの影響もほとんどない。
それでも対策は怠れない。
放っておくと不満が拡大し、少しずつ生産力が下がっていく。
また、革命を起こすための暴力事件。
そして、仕事の放棄による生産力の低下。
これらが常に発生するようになってしまう。
なので、対策は必要不可欠になる。
このために一部の規制強化なども施さねばならない。
また、外国からの流入を防ぐための、入国制限なども。
これらによるマイナスの補正は痛いが、騒乱が国内に広まるよりは良い。
そうなった場合の面倒さを、ススムはよく知っている。
自分が他国に使っている手段だからだ。
国内にある不満をあおる。
比較的簡単な扇動方法だ。
これを使って、ススムはフィリピンや清、ロシアを事前に切り崩していた。
それぞれ、国内に様々な問題を抱えていたから、かなりやりやすい。
フィリピンはスペインの支配に不満を抱えていた。
清やロシアも同じようなものだ。
だから、工作はかなりやりやすい。
しかし、自分がやられるとこれほど面倒は事は無い。
対策を施して被害を最低限におさえはするが。
「早く根拠地を潰さないと」
根城を潰さないと、いつまでも発生する。
なので出来るだけ早く片付けたかった。
ただ、利点が全くないわけではない。
政治体制として共産主義を選択すると、それはそれで利点もある。
何せ、その瞬間に国内全てを自分の意のままに操れるのだから。
共産主義を選択すると、生産力から発生する収入の全てが使えるようになる。
ただし、民生は消える。
その分も全てプレイヤーが操作する事になる。
ある程度の指示を出して、AIに任せる事も出来るが。
それでも、基本的にプレイヤーの思い通りにする事が出来る。
独裁・統制国家らしいといえる。
ただ、そのしわ寄せも大きい。
国民の不満は常に高い状態になる。
それを押さえ込む為に治安機関などを増大せねばならない。
また、人口増加も基本的にマイナス状態になる。
民生が全くないのだから当然だ。
その為、民生にあたる部分をプレイヤー自ら操作する必要がある。
このため、人口維持の為に結構な労力を支払う必要がある。
そんな手間がかかるのは確かだが、全てをプレイヤーの思い通りに出来る利点は捨てがたい。
ある意味、最も戦略シミュレーションゲームらしい状態と言える。
だからこそ、あえて共産主義体制を選択するプレイヤーもいる。
国力の基本になる人口維持は大変だが。
それさえ無視すれば、本当に好きな事が出来る。
その利点が大きいのだ。
ただ、ススムはこれが苦手だった。
何でも出来る事が多いのは良い。
しかし、何でも出来るだけにやることが増えすぎる。
とても一人で全部をやりきれない。
ゲーム進行を止めてじっくりやる事は出来るのだが。
そんな事をやってるのが面倒でしょうがない。
それよりは、税率を下げて民生を活発化させた方がマシだった。
手間はそれほどかからない。
やる事は少なくなるが、その分手間も減る。
何より、手を出さなくても勝手に必要な施設などを作っていく。
ゲームではこれを、「町を作る」と言っている。
色々と手を加える事が出来て楽しい要素だ。
しかし、それだけに時間を費やしてるわけにもいかない。
何も作って欲しくない所に、「ここは建設禁止」と指示を出す。
そうやって消極的に、間接的に町の建設を操作するだけで良かった。
何でもかんでも自分でやるのは無理がかかりすぎる。
そんな風に考えるので、共産主義体制にするつもりはなかった。
そうなると、これが国内に蔓延する問題の方が目につく。
「荒らされちゃかなわん」
そんなものが広まる前にさっさと潰す。
その為の体制をととのえていく。
併せて、影響下にある各国・各地域にも働きかけていく。
不満の高い地域ほど問題が発生しやすい。
そうなる前に、取り締まりを強化していく。
とはいえ、体制がまだまだ貧弱な国や地域ばかりだ。
効果がしっかりと出るまでは時間がかかる。
「まあ、他の所より、自分の足下だ」
この先の心配や不安はある。
しかし、出来ない事で悩んでもしょうがない。
今は手をつけられる所に手をつけていく。
確実に生産力をあげていく。
そして収入を確保する。
でないと、他の事に手がまわらなくなる。
あれもこれも、とはいかない。
やるべき事は絞り込む必要がある。
それは、他の多くを切り捨てるという事だ。
その為にも、資金源である国内をまず整備しなくてはならない。
手つかずだった東北を改善する。
そして、ロシア対策の国外駐屯地。
そこまでの移動手段、道路や鉄道の設置。
これらをやらねばならない。
勢力下にある他国の支援もしたいが。
それは最小限に済ませていく。
今までもそうしてきた。
在外居留地などで、人の教育などを引き受けたり。
交易という形で収入を与えたり。
外国への介入はその程度におさえている。
でないと、日本への不満が高まってしまう。
下手にあれこれ口出しされれば誰だって嫌になる。
それが親切心だとしてもだ。
大きなお世話、ありがた迷惑というものだ。
国だってそれは同じだ。
たとえ、それが必要な措置であっても、勝手にやられれば良い気分はしない。
ゲームでもそれをやると、国への不満が高まる。
なので、口出しは可能な限り減らしておくに限る。
向こうから依頼されない限りは。
提案くらいはするが。
その為、フィリピンでは日本居留地付近に住む者の教育。
民生への依頼という形での町の建設。
大規模な施設建設の援助依頼。
こういったものにだけ協力している。
その為、発展はさほど進んでいない。
しかし、不満をため込まずに済んでいる。
それに、ゆっくりとではあるが発展はしている。
フィリピンは大分伸びてきている。
経済的にはまだまだだが、町もそれなりに出来上がってきている。
それに伴い、交易も拡大している。
もともと、資源を日本が買い取っていたので、そういった交易はあった。
それに加えて最近は、日本からの輸出も増えている。
直接手を加えて台湾も順調に育ってる。
こちらは不満が結構高いが。
それでも他の国よりは低い。
また、生活に必要な社会基盤も整備していっている。
ダムや用水路も建設が進み、いずれ穀倉地帯が出来あがる予定だ。
満洲および東ユーラシアはさすがにそうはいかない。
道路すらまともにない地域もある。
そもそも、革命から逃れてきた皇帝の政府すら完全では無い。
全てがないないづくしだ。
そのせいもあってか、あれこれと依頼がやってくる。
その全てに応える事は出来ないが、可能な限り対処していっている。
持ち出しは多いが、それも満洲発展のため。
ゆくゆくは石油をはじめとした資源を得るためだ。
それらをこなすためにも、土台となる日本を育てていかねばならない。
元手が無ければ何も出来ない。
当たり前の事だ。
その資金を手に入れねばならない。
同時に、まだまだ研究開発も進めねばならない。
選択肢を増やすための思想も増やしていく。
手つかずの事はまだある。
それを確実にこなしていく。
外交もこなしていく。
やがて来るだろう出来事に備えて。
起こるかどうかは分からないが、起こる事を前提にしていく。
そして、被害を可能な限り最小限にする事を考える。
それでもある程度の対策はしていく。
事の発端となったサラエボ。
そこでの事件を発生させないために。
そうすれば、大きな問題は発生しなくなる可能性が出てくる。
加えて、事件の犯人とその周辺。
それらの調査を進めるよう伝えてもいく。
そうでなくても不穏分子というのはどこにだっている。
それらの掃除は進めておくにこしたことはない。
「潰れてもらうわけにはいかんしね」
今のところ、いてもらわないと困る国だ。
史実の通りに崩壊したら、ロシアへの圧力が減る。
その為にも、事件は事前に潰しておきたい。
何かが起こっても、被害が最小限になるようにも。
「まだもう少しだけ頑張ってよ、オーストリア」
その願いが届いたのか。
サラエボ事件は回避された。
だが、火種はそこかしこでくすぶっている。
それが凄惨な戦争への道を示してどこまでも続いていた。
それを覚悟しているススムは、いずれ発生するだろう大戦争に備えていく。
同時に、そんな世の中だから、少しでも潤いをと思いもする。
その為に、とある思想の研究を進めていく。
「『娯楽の発展』、行ってみよう」
この研究が完了すると、芝居や舞台、映画に音楽、絵画にお笑い芸などが発展していく。
更にすすめると、やがて漫画にゲームにアニメなどにたどり着く。
これにより、国民の不満などが低下していく。
「共産主義なんかに負けないぞ」
それらへの対抗手段にもなりえる。
なので、これを可能な限り発展させていく。
また、同時に治安も良くなっていく効果がある。
その為、これを可能な限り蔓延させねばならない。
多くの人々を沼に引きずり込む必要がある。
「これに反対する連中は取り締まり対象に設定…………と」
そう思って選択していく。
これが発展して、いずれ漫画の神様とかになるのかな、などと想像する。
ゲームなのでそこまでは再現されないが。
しかし、ゲーム内の世界ではそういう事が起こってるのかもしれない。
そう想像すると少し楽しくなる。
「ま、それがなくても、不満解消と、治安向上だ」
その邪魔になる者は徹底的に取り締まる。
国を不安定にさせるのだから当然だ。
それにだ。
こうして発展した娯楽は、輸出産業にもなりえる。
資源の無い日本なので、これは貴重なものになる。
資源なしでも生み出す事が出来るのだから。
外貨獲得の為の大切な手段でもあるこれを捨てる事は出来ない。
邪魔する者を徹底的に排除して、娯楽の発展に尽力していく。
そんな日本は、概ね平和であった。
ゲームの数値としてあらわれる部分は。