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8 人形は冒険者になりたい ①

~~~~前回の話~~~~

ぶっとばした





「私の毛で良ければ、あなたにあげてもいいわ」


 ガイアとかいうB級冒険者をボッコボコにしこたま殴り倒したあと、そいつから服を剥ぎ取って、俺は脱変態を果たした。

 そのあとでB級を街道のど真ん中で裸で逆さ吊りにし、ぶら下げておく。

 念のために『僕の名前はガイア! B級なんだけど実質S級の実力者なんだ!』と書いた横断幕もかけておいてあげた。

 ちなみに彼の息子はE級だった。まだまだだな。


「降ろしてくれええ許してくれええごめええんごめえええん」


 100KO位したあとの剣闘士並に顔を悲惨に腫らしたB級の泣き言を綺麗さっぱり無視して、俺たちはダマさん探しに出かけた。


 そしてその道すがら、メルセデスはそれを言ったのだ。



「毛、欲しいんでしょ? 私のあげる」

「え、でも、いいのか?」

「いいわ。だって、助けてもらったし。お礼よ」

「やったぜー!! ありがとな!!」


 素直に歓喜する俺。それを微笑ましげに彼女は頷いた。


「でも、毛なんてもらってどうするの?」


 彼女はそう訊きながら俺の顔をチラリと見る。

 言葉にはしないが、確かに一本も生えてないな、と思っているのは伝わってきた。


「うー……んと」


 しばらく考えたが、やがて俺は決断する。


「実は、俺――」


 正直にこれまでのあらましを話すことにしたのだ。洗いざらい。最初から最後まで全部だ。

 今回のことで俺はどうも多少常識に欠けているらしいことを自覚した。だからこの調子だと、冒険者になるのも一筋縄ではいかなそうだ。

 だから、多少誰かからの助力が欲しいと思った。


 あと、先ほど何も知らない俺に真実を伝えてくれたことを俺は心から感謝をしていて、だからそんな彼女に嘘をつくのが嫌だったっていうのもある。


 まあ、話してみて、それを信じてもらえるかどうかは、わからないけれど。

 実際、客観的にみて、かなりアンビリーバブルなあらましだとは思うから。




「……”人形士”? そんなクラス聞いたことがないわ。それに桔梗院皇国の第十二王子なんて者も知らない。たしか十二番目の継承権保持者は女だったはず」

「ふうん」


 やっぱり俺って、世間から存在を抹消されているみたいだ。

 あと、妹がいたことも初めて知った。


「そう……王子で、監禁、それに人形士……」


 全てを聞き終えると、彼女はしばらく俺の目を真っ直ぐ見つめる。

 やがて項垂れ、ため息を吐くと、


「どうやら、本当の事みたいね。とても信じられない話だけれど、信じるわ。あなたのこと」


 そう言った。


「え、……ありがとう」


 まさかこうも容易く信じてくれるなんて。


「私、自慢じゃ無いけど、人を見る目だけは確かなつもりよ。あなたのことは、絶対に信じたいって、私の心がそう言っているの」


 そう言って笑う彼女はめちゃくちゃ可愛い。


「じゃあ本当にその身体はあなたが造った人形なの? 大きな巨人の腕を材料にしたのね?」

「まあね」

「ふうん……大きな腕……。たしか、桔梗院家の持つ”ゾディアック”の身体パーツは……」

「え?」

「ううん、なんでもないわ。それで、私の毛はどうしたらいい? 切って渡す?」


 そう言うが早いか、彼女は俺の答えも待たず、腰まで届きそうだった長く美しいロングヘアを肩の上のあたりでザックリと切り、その束を俺に手渡した。


「随分と思い切りが良いな……」


 髪は女の命だとアリスがたしか言っていたが。


「髪を命というのなら、命の恩人にそれを分け与えることに、迷いなんてあるはずないでしょ?」


 そう言って彼女は凜々しく胸を張った。男前すぎ。

 その心意気を酌んで、ありがたく受け取っておく。


「【ドールマタ】」


 それからすぐに自身に頭髪、眉毛、睫毛を生やす。


「すごーい」


 彼女は感嘆の声を上げていた。

 俺は気持ちよくなって、この際だから思い切って造形をあれこれ変えてみることにする。


 生成の際にはまさか自分の身体になるとは思っていなかったので、理論値最強みたいな造形にしちゃっていたんだけど、せっかくなので今回は元の俺本来の姿にしてみようと思う。


「【ドールマタ】」


 髪を黒くし、顔の造形を俺の顔に変える。


「あ……――!」


 造形が終わり、生まれ変わった俺は彼女と目を合わせる。

 すると彼女は息を呑むようにして、途端に顔を真っ赤に変えた。


「どうした?」

「う、ううん! なんでもない!」


 彼女は短くなった自身の髪をせわしなく撫でまわし、やがて落ち着くと、


「とっても良くなったと、……思う。すっかり素敵な……その、男の子になった」


 そう言ってくれる。優しい。


 なぎ倒された木々たちの終着地点に、ボロボロになったダマが見つかる。

 手加減しただけに、ギリギリ死んでいない。絶妙な力加減だったな。


「……ね、ねえ、タツヤ」


 ダマを背負う俺に、先ほど教えた俺の名を彼女が呼ぶ。

 どこかおずおずとしていて、彼女らしくない。


「私はメルセデス=四季・リーシャよ。あらためてよろしく。もし良ければ、……その、……あなたが冒険者になるの、私に手伝わせてもらえない?」


 そう言って、彼女は目をギュッと瞑り、バッと思い切るように手を差し出してきた。

 それは願ってもない申し出で、俺としても断る理由はない。


「助かるよ!」


 笑顔で握手をする。


「リーシャ、よろしくな!」

「…………っ! あっ、うん! ……タツヤ、よろしくね!」


 リーシャは少し面食らったように目を見開いたが、やがて嬉しそうに、まるで初めての経験でもしているかのように笑い、そしてもう一度強く俺の手を握った。

今日はあと一話だけ更新します

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