9.芸妓の意味と価値
ものすごく究極的な話をしてしまうと、芸妓というのは別にこの世に必要ない仕事かもしれない。
現に、日本から芸妓は消えて行っている。
街中で芸妓を見ることは、ほぼなくなった。
祇園で舞妓を見たと思ったら、おぼこくないコスプレさんばかり。
本物に会うとしたら、高いお金を払い、更に知り合いでなければ会えない。
そんな人にわざわざ会いたいと思う人の方が稀だろう。
けれど、芸妓がこれからも存在しなければならない理由があるとしたら、ひとつだけ。
それは地域の文化伝承である。
例えば皆さん、「地元の踊り」「地元の唄」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか?
東京の人なら、東京音頭?
よさこいに、ソーラン節。八木節に阿波踊り。
これぐらいのもんではないだろうか。
さて、鏑木市に残る「踊り」は、何種類あると思います?
答えは10種類。
さてみなさま、市に伝わる踊りを10挙げてみて下さい。
多分、そんなには出てこないはず。
芸舞妓は、それを練習場で習う。
そして地元の祭りや商工会で披露する。
見た人は「きれいやな」って思う。
「また呼ぼうか」となる。
たったそれだけなんだけど、地元に伝わるものが残る。
しかもそれは残す努力をしなければ、残せないものなのである。
よく、伝統文化を「そんなものなくてもどうにでもなる」と切り捨ててしまう人がいる。
確かにそうだろう。
けれど、捨ててしまったらもうそれは取り戻せないのである。
取り戻せないものを残すことに、その地域、ひいては国の「価値」がある。
なぜ京都があそこまで日本文化の代表として扱われるのか。
日本文化を世界が認知しているのか。
天皇制が持続されているのか。
案外小さなところと大局は繋がっている。
現在のコンテンポラリーダンスに日本の舞踊や舞踏が多大な影響を与え、世界を席巻していること。
日本人がフィギュアスケートやシンクロナイズドスイミングでメダル圏内にあることは、全部繋がっているのだ。
踊りの下地。
意外にも、それを支えているのは芸舞妓、地元の盆踊りかもしれないのである。
下の4行を言うと笑う人がいますけど、マジで繋がってますからね。
重心を低く保つ踊りは日本の舞踊の特徴。
実は、世界のダンスシーンに多大な影響を与えています。
以上、大学で履修したダンス概論からの受け売りでした!