藤宮のスキルは?
――佐伯 修
Lv.9
状態:疲労(小)
能力値:体力: 5 筋力: 6
思考: 2 敏捷: 4
魔力: 1 耐久: 5
器用: 2 幸運: 1
スキル
【鑑定】
【狂戦士《ベルセルク》】
魔法
pt.0
――
あの後、落ち込む藤宮を立ち直らせてなんとか帰宅するとレベルアップによるステータス強化をしていないのに気がついた。
三レベル分、六ポイントを振り分け、構成はザ・前衛といった感じか。魔力なんて今の俺には使い道がないものだから未だに一つもポイントを振っていない。それは幸運もそうなのだが、こっちはポイントを振り分けたとしてどんな効果があるのか不確かであるというのが大きい。
俺は今回筋力重視でステータスを上げたが、藤宮はやはりというべきか敏捷重視な構成でステータスをアップさせたのだとか。
「そういやさ……結局藤宮のスキルってなんなの?」
疲れた体をソファに預けてリラックスしながら隣でくつろぐ藤宮に問いかける。何気なくふと投げかけた疑問に彼女はピクリと反応した。
「んー……ヒミツ?」
「なぜに疑問系?」
俺の問いに藤宮は曖昧に濁すだけ。口元に人差し指を立てて目を細めるその姿はどこかいたずらっ子のような雰囲気を想起させる。
「まあでも、すぐに分かると思うよ」
意味深なことだけを言い残して瞼を閉じる。まだ昼前だが、蓄積した疲労からくる睡魔には逆らえなかったようで気付けば藤宮の意識は夢の中へと飛ばされていた。
◆
あれから三日が経った。昨日までに四つのダンジョンを解放し、レベルは五つ上昇したが、いまだに藤宮のスキルはお披露目されていない。
二人とも戦い慣れてきたというのもあって俺も【狂戦士】のスキルは一度も使っていないのを考えればそれも当然なのかもしれないが、今日はもしかしたら藤宮のスキルを見ることが出来るかもしれない。というのも、今俺たちが訪れているホームセンターのダンジョン。このランクはDと俺たちにとって踏み込んだことのない領域になるからだ。
要求レベルは前に見たデパートと同様に20。今の俺たちのレベルが14で、スキルの性能も加味すればちょうどいいくらいだろう。
因みにだが、昨日あのデパートに行ってみたが、もう既に解放された後だった。恐らくはあの赤髪のやつが攻略したのだろう。あれだけのレベルとスキルならそれもおかしくない話だと納得できる。
話はそれたが、ランクDのダンジョンともなれば流石に俺もスキルを使わざるを得ない状況に陥ることだろう。そしてそれでもどうとも出来ない危機が訪れたなら、これだけ勿体ぶって使わない藤宮のスキルも使わないわけにはいかないはずだ。
「何してんの?」
思考に耽る俺に藤宮の視線が向く。訝しげに見つめる彼女に俺は「なんでもない」とだけ答えてボロボロの短剣をベルトから引き抜く。
「この短剣も、もう変えないとな」
元はゴブリンの使っていた短剣は刃こぼれが酷く、乱暴に扱う場面も多かったためもうガタガタだ。さらになんの道具も知識もないので手入れの一つもしてやれていなかった。
別にこの短剣に対して思い入れがあるわけではないが現状使える武器はこれだけであるという事実は変わらないわけで、もし戦闘中に壊れでもしたらどうしようか、なんてことも考えてしまう。
もし壊れたとなると、モンスターから強奪するか、それともどっかの店から頂戴するか……かな。
数日も前にそんなことしようものなら窃盗罪とかなんとかでしょっ引かられる案件だろうが、今では有効な手段として数えられるとは、なんとも異常だな。でも、俺はそれ自体に忌避感はない。
異常であるとは分かっているのに特に何も感じていない俺はおかしいのだろうか。普段から交流がないとはいえ、親の生死すらも気にならなかった俺はおかしいのだろうか。……いや、おかしいのだろうな、本当は。
藤宮だって表には出さないが、内心ではちゃんと父親のことを心配しているのが分かる。
藤宮とは真反対のこんな親不孝な息子をもった両親はどう思っているのだろうか。やはり後悔しているのだろうな……こんなバカ息子を産んだことを。
ダンジョン攻略前だというのにくだらないことで頭を悩ませていることに自己嫌悪しつつ、グミを口に放る。
クチャクチャと顎に力を込めてストレスをグミにぶつける。噛みしめるたびに甘さが口一杯に広がり、しだいにイライラは沈静化していく。
これだからグミはやめらんねぇ。脳に染み渡るような甘みがいい。特に柑橘系のグミは至高。二つ目のグミを頬張りながら俺はいつのまにか、もう一つ、グミの袋を開封していた。
まだ一つ目のグミを開けたばかりだというのに二袋目……だとッ! なんという強欲なッ!! って感じです。
……オレンジのグミ(果○グミ)なんかは必ず一箱分ストックを用意しておくのは常識だよな?




