絶望の淵で
処女作なのでお手柔らかに。
ある日、それは突然訪れた。コンビニ帰り、薄暗くなってゆく道を歩き家に帰るとこだった。
猛烈な眩暈と吐き気に襲われ、まだ熱をもったアスファルトに倒れこんだ。
暗闇の中、ふと昔のことを思い出した。中学の頃、あれは14才くらいだろうか。
俺は中学には行っていなかった。いわゆる不登校だった。まるで走馬燈のように次々と景色が広がっていく。
いや、これは走馬燈なのだろう。視界を流れていく情景がどんどん緩やかになっていく。
そして俺の嫌な思い出が流れ出す。丁度、俺が学校に行かなくなった前あたりから。
最初は上手くやっていた。友達も僅かながらいた。ただ、何が切っ掛けだったか俺の根も葉もない噂が飛び交うようになった。俺はどうでもいいと知らん顔をしていた。それがいけなかった。
俺を害したい気に喰わないと思う輩が、周りを煽り先導し俺を悪役にするのを止められなくなったのだから。
それからは、クラスのガス抜き対象になった。根も葉もない噂が、彼らに正当性を与えた。
教師はガス抜きと分かっていて何もしない。弁明したところで俺の話をまともに聞く奴も生憎そんなにいない。
それに、人はいつだって自分の信じたいものを信じるものだ。
俺が何を言ったところで、俺の言葉を嘘と受け取るやつがいればそいつからすれば何を言おうと俺の言葉は嘘になる。
でもまだ学校には行っていた。数少ない友達に裏切られるまでは。
彼らは、俺を切り捨てなければ俺の番かもしれないと。今だから言えるが、仕方いと思う。
何故なら、自分を犠牲にしてまで助ける義理なんてない関係しか築いていない。
自分も彼らの立場ならそうしただろう。
何よりそいつにとって俺が、自分を犠牲にしてまで助けたいと思える人間になれなかった。なる努力もしなかった。これは俺の落ち度だ。こうなることは予測しようとすればできたはずだ。なのに俺は、しなかった。いつも他人任せにしてきた。俺の甘さが招いたことだ。傷つけられるのが嫌なら、そうならないように日々努力すべきだった。
分かっていたのにこうなった。これは俺のせいだ。自分の怠慢によって引き起こされた。だから、俺は誰かを責めたりしない。傷つける側が圧倒的なまでに一方的に悪いなんてことはほとんどない。被害者側にも責任はある。俺はそれを認められないほど落ちぶれちゃいない。
だが、世界は俺にはことごとく優しくなかった。唯一の見方だったはずの両親は激怒した。
それはそうだ、親からすれば裏切り以外の何物でもないのだから。
でも、俺は行きたくなかった。今まで親の言うことはきちんと聞いてきた。でも、これだけは嫌だった。
誰だってみじめで辛いのは嫌だろう。?でも、親の言うことをきちんと聞いてきたがために反抗の代償は大きかった。
口で言ってダメならと暴力を振るい始めた。それはどんどんひどくなっていき、俺はこの世界で完全に居場所を失った。
毎日が地獄だった。寝ていれば水をかけられ首を絞められる。そんな時は下手に抵抗せずにただ終わるのを待つ。夜も下手に眠れない。それが俺が人で有れるための物を的確に削っていった。
昼間は迂闊にリビングには行けない。機嫌が悪いと刃物を突き付けられる。飯なんて出てこない。
だから隙を見て抜け出し隠していたお金でコンビニに行き飯を食う。
家を出たくても、子供にこの世界は今の親より優しくない。自殺だって何回しようとしたか。
もう親に殺されるのを望んでさえいた。でも死ねなかった。たった一つの思いが俺を繋ぎとめていた。
俺は、自分の命の意味も知らず死ぬなんて嫌だった。それは、誰も教えてくれなくて自分で見つけるしかないもので、俺はそれをもう見つけていた。
俺を繋ぎとめていたのは、例え自分を犠牲にしても自分の信じた者のために死ぬことだった。
それが俺の生きる意味だった。これを叶えるまで、俺は死んでも死にきれない。
辛いのはいやだ。でも何もできずに死ぬのはもっと嫌だ。だから、俺の命の意味を得て死ぬ。
ただ、自分が納得して死ねる口実を探しているだけかもしれない。でも、もうこれで結局何もできずに終わる。納得はしていない。きっとこれは走馬燈で間違いないだろう。コンビニ飯ばかりなのがあだになったかな。俺は、もしやり直せるならやり直したいなんてこの後に及んで考える。何もかも手遅れなのに。
出来るなら、異世界とか良さそうだ。だってもう此処には俺の居場所は当に無いから。
そんなことを暗闇の中で考えてたら、声がした。酷く寒々としていて背筋の凍るような。この声を聴いたものに根強く恐怖を植え付けるような声音だ。
「ならば、俺のもとへこい。」
聞き終わるや否や、俺は睡魔に飲まれた。
シリアス多め、これからも続きます。でも、主人公には幸せになって貰う予定です。
とにかく、読んでくださりありがとうございます。